第35話 何しに来たの?

「ね、手紙を見てくれた?」

 アキに向かって、カフが話しかける。

「やっぱり、カフだったの?」

アキはカブ頭に向かって、声を放つ。

(だけど…あのシルエットは、カフじゃないような気がするんだけど?)

おかしいなぁ~

アキはひそかに、そう思う。

「どこへ行くの?」

ショータがカフに向かって、口を尖らせると、カフはピシリと姿勢を正し、

「あなたたちを…素敵な処へ、ご案内します」

大げさなくらいに、深々と頭を下げた。


「でも…ノワールは?」

 あのネコが、案内人じゃあないのか?

ノワールの姿を探す。

「あぁ、あの黒猫ね」

もちろんすべてを知っている…といわんばかりに、カフは思わせぶりな態度で

そう言う。

「ま、ネコは気まぐれだからねぇ。

 気が変わったんじゃあないのかなぁ?」

「ホントか?」

ショータは、パッと後ろを振り返る。

 いつの間にか、枝によじ登っていた、ノワールの姿が消えている。

「あれ?ノワールは?」

確かに、前にいたと思う。

「ほらね!」

得意気に、カフがニヤニヤすると、

「だから、ネコなんて、あてにはならないだろ」

アキたちを、誘惑するように言う。


「ホントに、そうかしら?」

 それって、虫がよすぎやしないか?

アキは何となく…このカブ頭の言うことが、信用出来ない。

「あなただって…私たちのこと、恨んでいるんじゃあないの?」

真っ当に考えても、復讐したいと思っているはずだ。

アキは腕組みをして、

(いいから、ここで白状しなさいよ)

目力を込めて、カフを見ている。

「うわぁ~おっかないなぁ」

大げさに、カフは肩をすくめると、

「ねぇ、どうしちゃったんだよぉ。

 ボクのこと、そんなに信用出来ない?」

上目遣いで、アキのことを見つめた。


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