第34話 久しぶり!

 まさか自分たちのいない所で、そんな話になっているなどと、

少しも思いも及ばず、アキたちはひたすら、ノワールの後を

追いかけている。

 あの屋敷の側の木立ちに、足を踏み入れると…

思いの外、昼間でもなお薄暗い、森が広がっていた。


「へぇ~何だか、不気味だなぁ」

 そう言う割りには、ケイタは黒猫を見失わないようにと、

一生懸命で、少しも怖がっているようには見えない。

ただ…カガリは何かを感じるのか、アキの腕をギュッとつかみ、

片時も離れようとはしない。

「大丈夫?」

無理だったら、帰ってもいいよ、とカガリに声をかける。

「いい」

カガリは大きく頭を振る。

おそらく、一人にされたくないのだろう。

みんなと一緒の方がいい、という気持ちは、アキにもよく理解が

出来た。

たぶん、心細いのだろう。


 周りは、背の高い木がうっそうと生い茂っている。

それが邪魔して、さらに薄暗く、陰気な空気が漂っている。

せめて、リスとかウサギとか、小さな動物がいるのならば、

少しは怖さもまぎれるのでは…

アキはひそかに、そう思う。

 ガサガサ…

頭上の枝が、大きく揺れる。

キャッ!

こらえきれなくなったのか、カガリがアキにしがみつく。

「やぁ、久し振り!」

大きな枝の間から、カフが姿を現した。


「なんだよぉ~おまえ、生きていたのか?」

 早速ケイタが、カフのいる木によじ登ろうとする。

「当たり前でしょ!

 あんなことぐらいで、死んでいたら…

 命が幾つあっても、足りないよ!」

ニヤッと笑うと、幹の側にいるケイタをすり抜けて、トンと地面に飛び降りた。

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