第33話 謎の傍観者

 ピョンとノワールが、木の枝に飛び移ると、

「失礼ねぇ~」

耳を倒して、うなるようにしてそう言う。

「そんなことを言うのなら、もう案内なんてしないよ」

トン!と地面に飛び降りると、いきなり走り出した。


 ふふふふふ…

 クスクスクスクス…

子供たちのいなくなった屋敷から、二つの笑い声が聞こえる。

「やっと来たようねぇ」

鈴を振ったような、涼やかな女性の声だ。

「はい、今、ノワールが『例の場所』に連れ出しているようです」

「そう…」

窓際に、大きな翼を持つ人物が、外を眺めている。

「今度こそ、ちゃんと役目を果たしてくださいね、カフ」

その謎の人物は、後ろに控える忠実な下僕に、話しかける。

「わかっております。

 今度は…大丈夫です」

ペコリと頭を下げると、細長い手足が、ピタリと折れる。

「この前は…想定外のことが起きたから…油断は禁物よ!」

ピシリとそう言うと、黄金色に輝く瞳を森の方へ向ける。

「それじゃあ、私は…先回りをしてくるわ。

 あとは、頼んだわよ」

そう言うと、カラスのような、真っ黒な羽をバサリと揺らすと、屋敷の

窓から、身を躍らせた。

 

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