第31話 どうなっているんだ?

(あの家が生きているって、どういうこと?)

 まさか…人を食べるような、怪物でも巣くっているのか?

だが…無駄に、戦うことはしたくない。

ここはおとなしく、引き下がろうと決めた。


 大きな窓から、ヒョイと身を乗り出すと、ノワールは森の方向へ

通り抜ける。

「あれ?玄関から行かないんだ」

思わずカガリが、ボソリとつぶやく。

「そうだよ」

ノワールは足を止め、律儀に答える。

「だって…ドアが見つからないからね」

クルリとカガリの方を振り向く。

「えっ、ドアがないの?」

 気が付くと…さっき入って来たドアさえ、姿を消していた。

そこにはただ、真っ黒に塗り固められた、壁があるだけだ。

「あれ?」

「どうなっているの?」

驚くアキたちを尻目に、ノワールは再び背を向けた。


「どこへ行くの?」

 カガリの質問にも、答えてくれそうな雰囲気ではない。

「じゃあ、どっちの方へ?」

言葉を変えて、さらに聞くと、

ノワールは「あ~あ」とため息をつき、

「少しは、自分の頭で考えなさいよ」

逆に、ポンとそう言い捨てると、背中を向ける。

 ここでヘソを曲げられると、かえって厄介だ…

アキはそう判断して、

「じゃあ、どんな所?」

質問を変えてみる。

 すると、チラリとノワールが、アキの方を見ると

「それはね、とってもいい所!」

ニヤリと笑う。

「一緒に行こうよ」

じぃっと緑色の目で、アキを見あげた。


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