第29話 どこへ?

「行くって、どこへ?」

 この場に及んで、まだそんなことを言うのか?

ケイタはその場で、屈伸運動をすると、ネコに飛び掛かろうとする。

「乱暴は、よくないなぁ」

ノワールは、ピンとシッポを立てると、ケイタたちを見下ろす。

「止めてもいいですよ。ご自由にどうぞ」

ひょいっと、窓枠から飛び降りると、先ほど入った穴の方向へ

去って行った。


「えっ?」

「行っちゃった」

「どうする?」

 呆気に取られて、アキはユウジたちと顔を見合わせる。

「止めるなら、今だぞ。

 今ならまだ、間に合う」

「そうだけど~」

「来たばかりだよ」

みんなが、アキの答えを待っている。

「うーん、でも、まだ何もしていないよねぇ」

その時カガリが、アキに向かって話しかける。

「そうねぇ」

「じゃあ、とりあえず、行くだけ行ってみない?

 危なくなったら、逃げればいいし」

カガリが、アキに確かめるように言う。

「でも…逃げられるかなぁ?」

 そもそもあのネコが、自分たちをどこに連れて行こうとしているのか、

わからない。


「本当に、それでいいのか?」

 いきなりオジサンが、アキたちに向かって話しかけてくる。

「あのネコ…敵か味方か、わからないんだぞ?」

厳しい口調で、アキを諭すように言う。

「ノワールが?ただの猫だよ」

「黒猫は、たいてい魔法使いとセットになっているもんだ」

「はっ?何を言っているの?」

オジサンの言うことに、素直にうなづけない。

オジサンだって、本当は何者か、わからないというのに。

 するとケイタが、

「ホント、臆病だなぁ」

ケラケラと笑う。

「じゃ、どうするのよ」

「そんなの、決まってるだろ!戦うのさ!」

おどけた顔つきで、ファイティングポーズをとってみせた。

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