第9話 幽霊屋敷?

 まるで時間が巻き戻しされたみたい…

アキは呆然と、そう思う。

「まさか、誰かが直した、とか?」

カガリがつぶやくように言うと、

「そんなこと、出来るわけがないだろ」

すかさずショータが、キッパリと否定する。

「そんなレベルの壊れ方はしてなかった」

 木っ端みじんだぞ!

それぞれが、何とかこの謎を解き明かそうと、やっきになるけれども。

カガリはふと…

「まるで、幽霊みたい」

ポツリとそうつぶやく。

「幽霊?」

何を言っているの、とアキはカガリを振り向く。

「だって…まるで幽霊船が、沈没しても現れるみたいに、なくなったはずの

 家が、今、目の前にあるんだもん!」

「ずいぶん、文学的だな」

茶化すように、ユウジが言うのにかぶせて、

「何を言っているのよ!

 そんなの…あり得ないわよ」

アキがひときわ、大きな声を上げる。

「それなら…実は、壊れていなかったとしたら?」

いきなりショータが、誰も考えてもいなかったことを言い出す。


 それって、本当にあるのか?

何となく、不穏な空気に包まれる。

ケイタは、ポンとキャラメルを口に放り込むと、

「あのさぁ、ごちゃごちゃ言わずに、それなら確かめに行こうぜ」

相変わらずのマイペースで、ノシンシと屋敷の正面玄関に近付いて行く。

(まさか…蜃気楼みたいに、消えたりはしないかなぁ?)

 ビクビクしながら、カガリが後ろをついて行く。

「大丈夫よ!

 そんなことになったら、真っ先にケイタに、やっつけてもらうから!」

アキがカガリの手をグッとつかんだ。


「ふふふ…やっと来たか」

 茂みの中で、目だけ光らせて、こちらを向いている者がいる。

「あの方をやっつけた者がいる…と聞いたけれど、ただの子供じゃあないか」

アキたちが扉の向こうに消えるまで、じっとその場で見届けていた。

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