第7話 鈍感なアイツ

「何で、私達まで…」

 先ほどから、アキがぶつぶつと文句を言っている。

「言うんじゃあなかったなぁ」

カガリを相手に、愚痴を言い続ける。

「でも…いつかは、行かなきゃダメだったし…」

励ますように、カガリがアキを慰める。


 なぜかこの二人…正反対の性格なのに、とても馬が合って、仲がいいのだ。

クラスの女子の中には、アキが目立つために、カガリを引き立て役にしている、

と陰口を言う者がいるけれど。

「そんなことが、あるわけないじゃない」

いの一番に怒ったのも、アキだ。

カガリは引っ込み思案だし、怖がりだ。

出来れば目立ちたくない、と出来るだけ息をひそめ、隅っこに隠れるように

している。

そんなカガリのことを、見つけたのもアキだった。

「カガリちゃんだって、おしゃれをすれば、可愛くなるのになぁ」

アキはいつも、そう言ってくれる。

(それはムリだよぉ)

カガリにとっては、アキはまぶしい存在なのだ。

 当然アキの周りには、いつも人が集まってくる。

ユウジもショータも、きっと…

アキのことが、好きなんだ…と思っている。

だけどケイタは、珍しく女子には興味がないようだ。

「アイツが興味があるのは、食べ物とサッカーだけよ」

アキはよく、カガリを相手に、そうこぼしている。


 そんなケイタが、アキの言ったことに反応をした。

だから…本来ならば、アキはケイタに文句は言えないはずだ。

「まさかまた…ここに来るとはなぁ」

ショータもボヤいている。


 あの爆発騒ぎ以来、ここには足を伸ばしてはいない。

親に反対されているからだ。

(まぁ、ここにいるメンバーは、親の言うことなんて、まともに聞かない

 メンツばかりだけど)

カガリはそうにらんでいる。

 お化け屋敷は、森の中にある。

一時は肝試しに、子供たちが殺到したけれども。

「あれは、ホンモノのお化け屋敷だ」

という噂が広がって、今は絶えて人がいないのだ。

 行くなら、今だ…の意味は、ここにあるのだ、とカガリはにらんでいる。

今ならば、誰にも見つからない…そう考えたからだ。

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