第2話 不思議な鏡

「もしも、なにか困ったことがあったら、いつでもこの鏡で合図して」

 そう言って、別れる前に、ユー子さんが全員に、鏡を渡してくれた。

こんな鏡…どうやって、使うの?

そう思うけれど

「それは、秘密!」

なぜか笑って、教えてくれなかった。

「こんな鏡がねぇ」

見た感じは、普通の手鏡だ。

握りの部分と裏面に、不思議な材質で彫刻が施されている。


 竜?

 なんだろう?

アキはベッドに寝っ転がったまま、鏡を高く掲げて、のぞいてみる…

すると、ピカリと白い光が反射して、

「あら、アキちゃん!何かあった?」

モクモクと鏡の表面に、白い煙が出た後、みるみる人の顔が浮かび

上がってきた。

「え~っ!」

 鏡が、しゃべった!

アキは驚いて、鏡を落っことしそうになる。

「ちょっとぉ~驚き過ぎよぉ!」

そこには、見覚えのある女の人の姿が、ボワンと映っていた。

「え~っ、ユー子さん!

 こんなところで、何をしているんですかぁ」

 この人は、ほんの数か月前、お化け屋敷に行った時に、助けてくれた

人なのだ。

(他にも、いるけどねぇ)

「あら、ずいぶんなご挨拶ねぇ」

張りのある声が、響いてくる。

(それにしても…何で、鏡で会話が出来るの?)

 一体、どういう仕組みになっているのだろう?

アキが、クルクルと鏡をひっくり返したりしていると…

「ちょっと!目が回るでしょ!

 リモートで、会話するのと同じ原理なんだってば!」

さっきまで、機嫌よく話をしていたユー子さんだが、アキに向かって

キッパリとそう言ってのけた。

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