ジョーカーはどこだ?~よみがえる幻の城と魔界の使者

daisysacky

第1話 はじまりはひそやかに…

「アキ!

 いつまでもゲームしてないで、早く寝なさい!」

 階段の下から、母さんの声が響いてくる。

「明日は、卒業式なんでしょ」

アキはベッドに寝っ転がって、母さんに買ってもらったばかりの携帯を、

いじっている。

すると早速、母さんからの檄(げき)が飛ぶ。

「はぁ~い、わかったぁ」

携帯を取り上げられたら、かなわない。

ここは言う通りにした方が、賢いぞ…と、しぶしぶシャットダウンすると、

携帯を充電器につなぐ。

もちろん、みんなも買ってもらったらしく、

「これで、簡単に連絡が取れるな!」

ケイタが喜んでいた。


 あのお化け屋敷から帰って来てから、すっかり母さんの信用を失った。

いわく

「子供だけで、あんな所に行くなんて!

 何かあったら、どうするの?

 女の子なんでしょ」

「もしも、事件に巻き込まれてしまったら、どうするつもりなんだ」

あの時の爆発は、この小さな町にも聞こえていたらしい。

(派手に、やらかしたもんなぁ)

先生や両親にも、五人はこっぴどく𠮟られた。

さらには、校長室にまで、呼び出された時には、さすがのショータも、

顔を引きつらせていた。

カガリなんて、しばらくメソメソする始末で!

だけど…

「大丈夫、平気さ!

 だってボクたちは、何にも悪いことなんて、していないのだから!」

究極のポジティブなケイタは、アメをなめながら言っていたけれども。

(よく言うわ!あんたが一番、暴れていたくせに!)

アキは心の中で、そう悪態をつく。


 だけど、これは絶対に、秘密にしよう、とみんなで話を決めた。

まさか、警察沙汰になったら、どうしよう…

一番心配していたのは、カガリだったけれど。

「大丈夫、ボクが責任を持つから」

ユウジがキッパリと、言い切ってくれた。

(あの時は…ケイタのことをあきらめて、ユウジにしようか、と本気で

 思ったなぁ)

そう感じていたのは、みんなには内緒だ、もちろん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る