第2章 異世界?③
話し合いの結果、私と太陽が丘の上へ、海斗兄と里穂姉が建物に残り今後のことについて考えるということになった。
私達を不安にさせないようにするためなんだと思う。状況はお世辞にも良いとは言えないし……
丘の上に向かって歩きながら、太陽の顔をチラリと見る。表情はいつもと一緒。でも、いつもの太陽じゃない。
「太陽……私たち、どうなっちゃうんだろうね。」
太陽の服の裾をキュッと掴む。
すると、いつもの笑顔で言葉を返してくれる。
「大丈夫だよ、里穂姉も海斗兄もいるし。ほら、2人ともスーパーマンだから。きっと今回も……」
うん、やっぱり違う。
だってね、太陽はこういう時、自分がなんとかするって言ってくれる人だから。
「ねえ、太陽。私達に申し訳ないって思ってるでしょ。」
私の指摘に、太陽の足がピタリと止まる。
きっと自分がきっかけになってしまったから。責任……感じてるんだよね。
「やっぱり……申し訳ないってずっと思ってたんだね。
だってさ、太陽、いつもの元気……ないもん。」
昔からそう。人一倍行動的で、自分をしっかりもっていて、みんなを引っ張るリーダーシップもあって。
だからこそ、責任感も人一倍強い。
「でも…こんな状況だし。」
確かに状況もあるかもだけど、だからこそ…
「こんな状況だからこそ……だよ。だっていつもの太陽なら、もっともっと、どんどん意見も言うし、行動もするもん。」
何も言わない太陽の頭を、私は無意識に優しくなでていた。
大きくなったなぁ。小学校4年生くらいまでは、私と同じくらいだったのに。
でも、年は一緒。どんなに大きくなったって、太陽は太陽なんだ。
「こんなことになって、怖くて、不安でいっぱいだけど……私、みんなと一緒で良かったって思ってる。」
私1人だったらきっと建物の外には出れてない。きっと1人で、隅っこで泣いていた。
「うん。」
顔を上げずに呟く。
そんな太陽に、言葉を続ける。
「さっき太陽は海斗兄と里穂姉がスーパーマンって言ったけど……私にとっては太陽だってスーパーマンだよ。
だってさ、いつも一緒にいて、いつも支えてくれるのは太陽だもん。一番分かってくれる太陽がいるから、私は私らしくいられるんだよ。」
いつもだったらこんなこと恥ずかしくて絶対言えない。でも、こんな状況だからこそ、伝えなきゃって思ったんだ。
「だから、太陽も太陽らしくいて。私は……ううん、私達は、太陽のせいだなんて思ってないよ。」
「うん……」
いつもありがとう、太陽。
「一緒に家に帰ろっ!」
「そうだな。若葉、ありがとう。」
「うん!ほら、丘の上まで早く行こっ!」
私は笑顔で駆け出す。
本当は怖くて怖くて仕方ない。早くいつもの生活に戻りたい。
だからこそ、私らしく笑顔で頑張るんだ。
そして……みんなで一緒に帰るんだ。
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