第37話 クリーレの身体。

半魔半人達にはアクリノーレの鎧にしがみつかせて、クリーレを半拘束するとブールゥ達に魔法を放たせる。


「決して殺すな。クエリアースが呪いを施している以上、クリーレの双子の兄で、私と契約をしたクリブル以外が殺せば、あの大きさになったアクリノーレの鎧は暴走をしてしまう。冷静な判断だけを奪うんだ」

戦闘前にエナメノーレはそう言った。


その後で発情した顔で、「これが終わればクリブルがカラフノーレの王だ。沢山して貰おうな」と言うと、同じく発情した顔の妻達に、「パルブルは私達が化け羊の羊毛で体を撫でてやった所を、クリブルに突かせてやる。ブールゥはリリアントも含めた我々で休みなく責め続けてやる。ペルオレ、お前はトロマンモスの毛皮をコレでもかと擦り付けてやろう」と言うと、妻達は皆顔を蕩けさせて「楽しみだ」と言ってエナメノーレの指示に従った。


「ねぇ、あのファイヤーボールを打ち消しましょう?」

「えぇ?クリブル怒るよ?」

「そうよ消しましょう。クリブル様と同じ顔なんて許せないから後悔させたいわ」


妻達はそう言うとファイヤーボールにウォーターボールをぶつけて破壊してしまう。


クリーレは「バカな!?アクリノーレの鎧だぞ!?たかが人間が放つウォーターボールで!?」と言って再度ファイヤーボールを放ったが、ブールゥは「クリーレ、あなたは努力をクリブルに押し付けて、結果だけ掠め取ったから弱いんだね。ファイヤーボールはただ火の玉を飛ばせば良いんじゃないよ」と呆れながら言うと、「ペルオレ、パルブルは見ててね」と続けて、飛んでくる巨大な火球めがけて、弱いファイヤーボールで周囲を囲ってしまうと一緒に消してしまっていた。


空いた口が塞がらないクリーレ。

ブールゥは「ほら、ダメダメ。クリブルのファイヤーボールなら、こうは出来ずに苦労したはずだよ」と言って顔に向けてアースボールを放つ。

アースボールが顔面に直撃して、悶絶しながら顔を血だらけにするクリーレ。


その間にアクリノーレの鎧の足元に向かっていたクリブルが、「大変だねクリーレ。手がないから顔の血も拭えない。でも今も目は見えるんだよね?エナメノーレに聞いたよ。その鎧の兜がクリーレの目をしてくれている」と言った。


それを証明するように、妻達がアクリノーレの鎧の頭部にアースボールを放ち、視野を奪うと慌てて鎧の腕で顔をはたくクリーレ。


ブールゥがクリーレの顔に向かって血と汚れを落とす目的のウォーターボールを当てると、視力の戻ったクリーレが「この戦いが終わってエナメノーレを手に入れて、全てを終わらせた後でこの鎧を脱げば腕は…」と言った時、クリブルは冷たい眼差しで「もう無いんだよクリーレ。やはりエナメノーレの読み通り、クエリアースは言わなかったんだね。もう君の首から下はそのアクリノーレの鎧と一つになっていて溶けてしまっている」と言った。


クリーレは何故かクリブルの言葉に耳を傾けてしまう。

嘘だと一蹴することが何故か出来ない。


「手足の感覚はある?お腹は?」

クリーレは手足に意識を向けても、自分の身体ではなくアグリノーレの鎧の手足や腹部しかわからない。


誤魔化すように「う…ぅぅあう…嘘だ!」と声を荒げるクリーレに「クリーレ、クエリアースの目的はエナメノーレに勝つ事で、お前は…いや、ギアの全てもこのカラフノーレも全部道具に過ぎないんだ」とクリブルは説明をした。


「嘘だ!クエリアースはオレに抱かれる度に、胸の中で何度も王になれと言った!オレを裏切るわけがない!」

「ならクエリアースは鎧の脱ぎ方を教えてくれたかい?どうせ着込むのに準備が要るから、今は脱げないとか言ったんじゃない?信じられないならクエリアースに聞きなよ」


まさにその通りだったクリーレは必死にクエリアースを呼ぶが、クエリアースは「騙されないでください!」、「今は勝つことだけを考えてください!」ばかりで、「手足はあります」、「鎧を脱ぎましょう」とは言わなかった。


クリブルの横に立つエナメノーレが、わざとらしく「言わないな」と言い、クリブルも「うん。アクリノーレはそんなに怒っていたんだね」と返すと、「もうクリーレは助からないんだね」とわざと聞いた。


「ああ、クエリアースの呪いで身体を生み出しても、あそこまで身体を失っていてはな…。それが過分な願いの魔女がもたらす限界だ。恐らくセックスの時に、あの右手を通じてクリーレに呪いを施してある。1年以上も準備をしてから鎧を起動したのは、クリーレの消滅後にクエリアースがアクリノーレの鎧を操縦する為に深く呪う必要があったんだ。あの右手だったモノだけがアクリノーレの鎧の体内に残る。クリーレが腕を失ったのはクエリアースには僥倖だっただろうな」


クエリアースの能力でも手足が戻らない。

クエリアースが呪いを施した。


その言葉が深く突き刺さり、クリーレはどうしようもない所に来て、手遅れになった事を理解した。


錯乱したように叫び出すと、アクリノーレの鎧にまとわりつくクヨコの人間を払い落として、「全部殺してやる。お前達も殺してやる」と叫びながらクヨコの民を踏み潰して、血の華を咲かせていく。


エナメノーレはため息をつくと「クリブル、死が勿体無い」と言う。

クリブルは剣を握りしめて「わかってる。本気の一撃を加える。皆に振り分けた力を僕だけに向けよう」と言って剣を変えると、エナメノーレは呆れ顔で「そんな真似したらカラフノーレが真っ二つだ。今のままで勝てる。しかも余裕だ。剣にはキチンと死を集めろ」と指示を出して半歩後ろにさがった。


クリブルは「わかった」と言うと、リリアントに作ったような剣を剣に纏わせて出して前に飛び出すと、一瞬でアクリノーレの鎧の手足と首を切断した。


なす術なく仰向けに倒れるクリーレは、「バカな…。これがエナメノーレの力?」と言って虚しく青空を見ていた。


「違うよ。エナメノーレの力を使ったのは剣のみだ。ずっと弱かった僕は散々修行をしたから強くなっていただけだ」

クリーレの眼前にアクリノーレの鎧に乗り上げて、剣を向けてくるクリブルが見えた。

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