第36話 アクリノーレの鎧との戦い。
クリーレの纏ったアクリノーレの鎧は、今や城の4階部分に届くくらい巨大化していた。
それを見たクリブルが「エナメノーレ、終わらせよう」と言うと、エナメノーレも「そうだな。あの状況の奴は自壊まで数年を要する。攻め込まないところを見ると、クエリアースがアクリノーレの死生を有効化して、私の生死を減衰させる呪いでも設置したのだろう。まあ所詮は素人の浅知恵だがな」と言った後で、クリブルに指示を出してとんでもない手に出る事にする。
「手数が欲しいから、リリアントはセミラックと共に来い。ブールゥ達も魔法師団を作れ、中にペルオレとパルブルも加えろ」
ここでストンブ達が自身はどうするかを聞くと、「クレスの東に行け、奥地にはまだ巨大人喰い鬼の群生地が手付かずだ。あのデカブツよりこっちの対処をしてくれ、死が欲しい。それに眷属がやられると厄介だ。兵士なら現地調達する」とエナメノーレが答える。
その言葉のまま進軍をして、クヨコの地に入ると退屈そうにクリーレがクリブルを待っていた。
城のバルコニーにいるクリーレを、クリブルが見上げるような構図。
クリーレが嬉しそうに「やあ兄さん」と声をかけると、クリブルは「終わらせようクリーレ。僕は君の兄として責任をとって、ギアだけではなくクヨコやターミャを復興させる事にしたよ」と言った。
一瞬顔を歪ませたクリーレ。
それはかつての成長強奪と苦難転嫁の呪いが付与された役立たずのクリブルが、無能の分際で訓練を諦めず、情けない笑顔でギアを良くしたいと言い放ち、クリーレを苛立たせていた日々を思い出してしまったからだった。
だが、すぐに笑顔に戻ったクリーレは「あはははは!無理無理!だって兄さんはここで死ぬんだよ!」と言い、嬉しそうに拳をクリブルに向けて振り下ろす。
だがクリブルは回避するそぶりもなく、「ブールゥ、ペルオレ、パルブル、撃って」と指示を出すと、離れた場所から土魔法アースボールがクリーレのいるアクリノーレの鎧の胸部分、鳩尾あたりにいるクリーレの顔に向かって放たれた。
クリーレは回避できずにアースボールが顔面に直撃すると、苦痛に顔を歪めて後退りをする。
「くっ!?ブールゥ…?と後は…」と言いながら睨み付けるクリーレに、クリブルが「僕の妻達だ。魔法に優れているから魔法師団にした。クリーレ、君は己の手足が無いから防げない」と指摘する。
「だったらブールゥ達から殺してやるさ!俺への攻撃はクエリアースに防いでもらう」と言ったクリーレは、狙いを変えてブールゥ達に向けてファイヤーボールを放つ。
魔法には魔法、完全に意趣返しの様相になっていたが、それはクリーレの性格からすればわかりやすかった。
クリブルは黙って見ている気はなかった。横のエナメノーレに「エナメノーレ!行くぞ!予約は済んだね?」と聞くと、エナメノーレは「勿論だ。特訓あってこその展開速度だ!セックス漬けの日々を誇れクリブル!」と言った。
「半魔半人として蘇れ!クヨコの民よ!」
クリブルの声で、ファイヤーボールが向かうブールゥ達の前に、数千人の人間が鎧姿で現れると、皆無言で壁になってクリーレのファイヤーボールを受け止める。
蒸発しながら消えていく人間の壁にクリーレが舌打ちをするが、クエリアースが「クリーレ様、平気ですわ。蘇った死がアクリノーレの鎧の力になります」と声をかける。
クリーレは高笑いと共に「兄さん!勝負あったね!」と言い、クエリアースが「うふふ。しかもこの土地の死を支配しているのは私の力とアクリノーレの鎧。呪いを発動させました。エナメノーレにはこれ以上何も出来ません」と続けたが、クリブルは余裕の表情で「次だクヨコの民」と言うと、ワラワラとクリーレの周りに生み出された人間達が、アクリノーレの鎧に攻撃を喰らわせ、別の者がその間にブールゥ達の前に肉壁となる。
死を支配しているのに、クエリアースの想像通りなら、これ以上死者たちが半魔半人兵になる事はないのに、目の前で次々と半魔半人兵になって向かってくる事に、「な!?なんで!?」と言って唖然とするクエリアースに、エナメノーレは胸を突きだして鼻で笑うと「格の違いだ。過分な願いの魔女如きが女神に勝てる道理はない。クエリアースを倒せばアクリノーレの鎧もただの的にしかならん。リリアント!セミラック!クエリアースを無力化しろ!」と言った。
クリーレの…アクリノーレの鎧の肩に居たクエリアースに向けて転移してきたリリアントとセミラックは、問答無用でクエリアースに斬りかかると、クエリアースは慌てて回避行動を取ってクリーレの肩から降りる。
「セミラック、遅れないでください」
「問題ない。姫こそ私が指南した事を忘れないようにしてくれ」
ツンとした態度のリリアントと、ぶっきらぼうなセミラックだが、セミラックの求愛≒訓練が活きていて連携は見事なものだった。
セミラックが見事にリリアントの隙を埋めて、リリアントを活かす動きに出る。
これにはクエリアースも反撃のチャンスを伺うしかなく防戦一方になる。
エナメノーレはその姿に「ふふ。クエリアースの奴、必死になってクリーレの集めた死を使って回避している」と言って笑うと、クリブルは「ダメだよ、あの死は僕のモノだ。エナメノーレ、引っ張る真似はしない。さっさと終わらせるよ」と言い一気に片付けに入った。
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