第35話 クリーレの反撃。

クリーレは調子に乗っていた。

それもそうだろう。

一年に渡る隠匿生活で、かつての王族のカケラも感じない日々をクヨコで続けた。


今思い出しても忌々しい。

ニードとウォルテでの戦闘後、ボロボロの格好のままクレスを抜け、クヨコに入ると洗礼と言われても仕方ない勢いでゴロツキ共に絡まれる。


生贄の力で無理をしたクエリアースは反動のせいで肩で息をしていて、息も絶え絶えで休ませる必要がある。

そこに通りかかったのは4人のゴロツキ達。


「オウ、ボロボロの兄ちゃん、どうした?」

「まあ、見た感じ持ってるものは質がいいから貰ってやるよ」

「そっちの綺麗な姉ちゃんも貰ってやるよ」

「まあ、大通りは目立つからこっち来いって」


クリーレは横にいるクエリアースに目配せするとクエリアースは肩で息をしながら頷いてアイコンタクトをしてくる。

大人しくクリーレはゴロツキ達について行って地獄を見せる。


躊躇なくファイヤーボールでゴロツキの1人を焼き殺すと、「ああ、鬱陶しい」と言った後で「ファイヤーボールはやはりいい。即死せずに長時間苦しむ」と言って笑い、2人目の男を殺そうとした時、クエリアースが「2体ください。補充します」と申し出て、クリーレは「そうだねクエリアース、2体でいいのかい?」と聞き返す。


「はい、このまま寒村を見つけて1つ潰させてください。後は王城に秘匿してあるアクリノーレの鎧を見つけ、起動する為の準備をするために王都で隠匿生活をしましょう」

「クヨコにある女神アクリノーレが俺専用、ギアの赤い瞳の双子専用に用意した鎧か、前に言っていたね。それを纏えば…」

「はい、クリーレ様がカラフノーレの覇王でございます」


クリーレはニヤニヤと笑いながら前に出て、2人目のゴロツキを捕まえて、「じっくり凍り付け、楽しめ」と言って氷魔法で血肉を徐々に凍らせていく。

必死に逃げようとするゴロツキは自分の動きのせいで手足が捥げてしまい錯乱してしまう。

クリーレはそれを見て加虐の心で嬉しそうに高笑いをする。


とんでもない奴に絡んでしまった。

残されたゴロツキは必死に逃げようとしたが足が動かない。


「うふふふふ、呪ったわ。あなた達は餌よ」


クエリアースがゆっくりと立ち上がって1人目の男を目指すと首筋に唇を当てて大きく吸い込むと男は一瞬で朽木のように枯れ果ててしまった。


焼き尽くすとも凍り付くとも違う新しい死に、最後の男が「ひぃぃぃぃぃぃぃ!?」と悲鳴を上げる中、クエリアースは「うふふ」と言って「好みじゃないけど、遠いせいで回復が悪いわ」と続けながら動けない男の子間に手を当てて「精気吸収」と呟くと男は絶頂の時のような声を出しながら一瞬で枯れ果ててしまった。


「クエリアースの呪いは怖いね。あの男は気持ちよく死ねたのかい?」

「うふふ。はい、一生分の絶頂を一瞬で味わって死んでいきました。その方が効率よく生を吸収できます」

「こっちの2人は取らなくて良かったのかい?」

「はい、呪いの始動に使わせて貰いました。苦悶の死、大変助かりました」


クエリアースは両腕で身体を押さえ、「ただ…」と漏らすと「聞いていたからわかってるよクエリアース、屋外は好みじゃないがもう少し奥へ行こう、死骸の周辺でやる趣味はないよ」とクリーレがクエリアースの腰を抱いて森の奥へと消えていく。


クエリアースは精気吸収をして生へと変換した後は反動があるとクリーレに説明していた。

発情状態になり、強い精を十分に摂取するまで止まらなくなる。

クリーレはその場でクエリアースが満足するまで抱き上げる。


クエリアースはクリーレが果てると少しの間落ち着く。

休むようにクリーレの胸の中で「クリーレ様、この御力とアクリノーレの鎧の御力でカラフノーレの王になってくださいね」と囁き、クリーレが「ああ、クエリアースが居てくれれば問題ない」と返すと、「すみません…、まだ…、また来ました」と言って身体を震わせるとクエリアースはクリーレを求める。


6時間にも及ぶセックスですっかり夜になってしまったが、ようやく落ち着いたクエリアースがクリーレを連れて近くの寒村に赴くと寒村を3日かけて制圧し滅ぼした。


クエリアースはこの先の隠匿生活を我慢させるためにも、クリーレの加虐の心を満たさせるために3日かけて寒村を滅ぼす。

最初に入った家の人間を使って呪いを発動して村人には何も変わらない普段の村を見せる。

だが実際には襲撃した家にいた中年夫婦を惨殺する。


それから先はクエリアースが子供と老人から生を搾り取って殺し、クリーレが若い人間を惨殺する。

そして若い娘をクリーレとクエリアースがかつてリリアントに行ったように2人がかりで凌辱をしていく。


「やめて」、「許して」、「助けて」と言っている村娘が窓から助けを呼ぶが、呪われた村人たちは何もない日常を過ごしていて村娘の声は聞こえない。


「ははは、安心しろ、お前が死んだら今窓の外にいた男を殺してやろう」と言ったクリーレとクエリアースは「大丈夫、人生最大最後の快楽をプレゼントしてあげる」と言うと村娘に呪いをかける。


「発情と快感倍加よ。さっき殺したあなたのお母さんの命で使う呪い」


クエリアースの言葉の直後に身体を震わせる村娘。

「ふふ、何もしなくても気持ちいいでしょ?子猫ちゃん」と言って村娘を撫でまわすクエリアース。

未知の快感に震える村娘だったが、直後に胸に激痛が走り蹲ると、クエリアースが「ああ、そうそう。あなたに呪いをかけたの、果てる度に命を燃やしてしまって、その命が私の力になるの」と耳打ちする。


激痛の中でも意味が分かった村娘は青い顔で必死に逃げようとするが腰砕けで逃げられない。


「いいじゃない、一生分の快楽をプレゼントしてあげる。それとも痛く苦しんで老人たちみたいに死んでいく?」と聞きながら村娘を撫でまわすクエリアース、その後は嬌声と絶叫。快楽と激痛に顔をしかめる村娘を見て昂ったクリーレがクエリアースと共に襲い殺すと、また生しか取れない人間を殺し、村娘を見かけるとクエリアースとクリーレで破壊して楽しんだ。


3日で村は滅びた。

クヨコの城までこれを続けて隠匿資金とクエリアースの力を取り戻し、クヨコに潜入したクリーレだったが、隠匿生活は想像以上にキツいものだった。


クリブルがギアの王子としてクレスとトーボをまとめ上げた存在として名乗り上げると同じ顔のクリーレは目立つわけにもいかずにクエリアースの呪いを使って偽装した顔で街を歩くと気品も何もないせいで、苦難転嫁の呪いを受けたクリブルの追体験を行うようにぞんざいな扱いを受けた。


本来なら城下町を破壊してやりたい衝動に駆られたが、クエリアースから「アクリノーレノ鎧の起動には時間がかかります。起動を簡略化するためにも、襲撃をして強奪を行うまでに、クリーレ様とアクリノーレの鎧をある程度繋げてしまう処置をさせてください。ただ、どうしてもエナメノーレよりも上位のアクリノーレが相手ですので、あまり離れる事が出来ず、クヨコの城下町で過ごしてもらう必要があります」と言われてしまえば我慢するしかない。


だが、住んだ家は周りが見向きもしない、泥棒に入ろうという気にもならないボロ家で、ギア城なら馬小屋の方がもっと立派だったし、身に纏う服はギア城やクレス城なら囚人服までは言いすぎだが、奴隷が着させられる服のようだった。

食べる物はクエリアースが調達してきてくれるが、玉石混交で外れの日はゴミのようなものだった。


加虐の心が限界に来ると、タイミングよくクエリアースが「クリーレ様、始動に使う生贄が足りません、この女を凌辱しながら殺したいので手伝っていただけますか?」と言って女を連れてくる。

聞くと、街を徘徊し、孤独な男を見つけると、誘惑して男の家で精を搾り取って金と食料を持ち帰っていた。


そして足のつかない女を見つけると、クリーレの元に連れてきて寒村の村娘に行うように呪いをかけて破壊する。


何とかクリーレは耐える。

耐えがたい隠匿生活の中、クリーレはクエリアースが金を稼いできて逆転の準備をしてくれていたからこそ我慢を続ける。

全てはクリブルを倒してエナメノーレを手に入れて、世界征服をする為にひたすら我慢をした。



クエリアースは男の精を摂取して力に変えた後は反動で発情するとクリーレと肌を重ねる。その度に、「覇道を歩みください。クリーレ様こそカラフノーレの王です」と囁いてその気にさせていた。


呪いの力も十分に溜まり、クリーレが女を壊しても我慢が1週間ももたなくなる頃、クエリアースはクヨコの王城、その地下に秘匿されたアクリノーレの鎧の元へ向かう。


クリーレはクエリアースが用意した王族に相応しい服に身を包み、偽装もせずに堂々と城へと向かう。

詰問し、クリーレを止めようとする兵士を我慢せずに惨殺するクリーレは、血路とはまた違う血の道を作りながら歩く。


兵士達は緊急事態に一個師団を投入してくるがクリーレの敵ではない。

それどころかクリーレがクエリアースの用意した腕の力を奮うたびに、前もって仕掛けた呪いにより兵士が死んでいく。

クヨコの王子も王族らしく率先してクリーレの討伐に向かってくるが、クリーレは何もさせずになます切りにしてしまった。


真正面から突入してクリーレと共にアクリノーレの鎧を奪い取ろうとすると、クヨコの王子が瀕死の怪我の中でも追いかけてきて、「それは装着不可能だ!諦めろ!」と言ったが、クエリアースは「うふふふふ、装着…起動に必要なのはギアの王族、それも赤き瞳の双子」と言うと、クリーレに「名乗り上げてあげてください」と言う。


クリーレは歪んだ笑顔で「俺の名はクリーレ・フォーワ・ギア!このアクリノーレの鎧を動かせる唯一の人間だ」と名乗ると鎧の前に立つ。


クヨコに伝わる「アクリノーレの鎧がクヨコやギア、カラフノーレを破壊するという予言」を思い出し、顔を青くしたクヨコの王子がクリーレを止めようとしたが、クエリアースはその前にアクリノーレの鎧を起動してクリーレを取り込ませた。


起動したてのアクリノーレの鎧はとても小さく、雄牛程度の大きさしかない。

だが阻止に来たクヨコの王子を腕の一振りで殺すと鎧がほんの少しだけ肥大化をした。


「うふふふふ。死と生を司るアクリノーレの力で御座いますよ。その力で殺せば全てがクリーレ様の御力になります」


クリーレは歓喜した。腕の一振りで面白いくらいに人は死に、その度に鎧は肥大し巨大になっていく。


放ったファイヤーボールは、ボールと呼ぶのもおこがましいサイズで、着弾点は蒸発していた。

クヨコが滅びるのに半日もかからなかった。


クヨコを滅ぼして高笑いするクリーレに、クエリアースは一つだけ謝った。


「クリーレ様、その鎧は脱ぐとまた起動の準備が必要で、一年間は何も出来なくなります。ですので今はその中でお過ごしください」

アクリノーレの鎧、胸の部分から小さく顔を出したクリーレは、「そんな事かい?気にしないよクエリアース。この鎧ならすぐに世界征服も可能だ。兄さんを殺しに行こう」と返す。


「まだですわ。ターミャに向かってターミャ人も力へと変えてください」

この言葉にクリーレは歓喜して、「それはいい!蹂躙だ!」と言ってターミャを目指した。


途中でクリーレは睡眠や食事を必要としない事に気付くと、肩に座ったクエリアースにそのことを質問する。


「エナメノーレと同等の力です。エナメノーレと共にいる者は、排泄や食事、睡眠なんかが不要になります。まあ睡眠は限界まで疲れれば必要になりますし、食事に関しては疲労状態の時は、治りが早まるので食べる方がいいですね。前回の戦いでクリブルがタフネスだったのはエナメノーレの加護があったからです」


クリーレはその言葉に「兄さんと同等の力を得た俺はもう負けない!」と高笑いをしながらターミャを蹂躙して弄ぶように人を殺した。


その結果、ただの鉄色だったアクリノーレの鎧は、血のような真っ赤な色に染まり、悪魔のようなツノの生えた鎧になっていた。


「クエリアース、クレスを滅ぼそう。そのままギアまで直進だ」

クリーレの言葉にクエリアースは首を横に振ると、「クヨコの地で倒します」と言う。


「何故だい?」

「ここに呪いをかけます。エナメノーレの能力を弱体化させて、クリーレ様の勝利を絶対のものにします」

クリーレはクエリアースに全幅の信頼を寄せているので、賛成してクリブルを待つ事にした。

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