第30話 ギアの勝利。
会敵と同時に、クレス兵を優先して殺していたリリアントの元に飛んできたのは、ビキニアーマーに身を包んだクエリアースで、「見つけた子猫ちゃん!」と言いながらリリアントを足止めに出た。
眷属化して能力付与までされたリリアントは、正直兵士たちでは手に負えない。
クエリアースの必要性が出てくるので、こうなる事はリリアントもわかっていた。
エナメノーレに言われていたリリアントは、クエリアースを見ても逆上せずにクエリアースの相手をする。
この戦いのキーマンはリリアントで、リリアントはエナメノーレから「やり遂げたら勝利のセックス特訓はリリアント好みの奴をやってやる。やれるな?」と言われていて「本当ですか!?我慢します!」と発情した顔で言っていた。
リリアントは愛らしい顔つきのせいで、どうしても受けに思われるが性格は責めで、確かにエナメノーレやクリブルと言った、上下関係が伴えば喜んで受けに回るが、本質は責めなので責められる立場となると喜ぶ。
リリアントのお気に入りは自身の使用人をしていたサモンや、ブールゥに甘え倒しながら責め焦らす事で、懇願されるとそれだけで果てそうになるし、歪んでいるので「ほら、お兄様にキチンとお願いをして。私も頼んであげるわ」と言って言葉で責め立てる。
これをご褒美にして貰えるのなら、クエリアースに対して我慢なんて安いものだった。
そもそもクエリアースがリリアントを「子猫ちゃん」と言うのにもここら辺が起因していて、セミラックに返品されたリリアントに生き地獄を味わせる為に、クエリアースとクリーレで滅茶苦茶にした。
プライドを壊す為にクエリアースが100近くリリアントを果てさせて、ロエスロエを使い壊してからクリーレに純潔を奪い取らせていた。
その時に「お姫様」と呼ばれるより、「子猫ちゃん」と呼ばれる方のがリリアントが嫌がったので、クエリアースは子猫ちゃんでリリアントを呼ぶ。
「子猫ちゃんで遊んであげる!」
そう言いながら短剣を振るうクエリアースに死で作った剣をぶつけると、一撃目は耐えたがすぐに剣はヒビだらけのボロボロに変わる。
「あらあら、少し強化したの?でもまだまだよ」
次の一撃は防げずに剣は破壊されて、断末魔の声が剣から聞こえてくる。
「ほらね?」
いやらしく笑うクエリアースに、リリアントは「くっ」と口惜しそうな声を上げながら、二振り目の剣を生み出してクエリアースに斬りかかる。
「あら、二振り目。数で誤魔化して、速さで破壊される前に私を殺す気かしら?」
ヒラリと舞うように回避したクエリアースは、逆にリリアントの剣に向かい二度短剣を振るってリリアントが攻撃に出る前に二振り目の剣を破壊して、「残念ね」と笑った。
リリアントは「まだ剣はあります!」と言いながら次の剣を出すと、短剣を避けてクエリアースを狙うが、クエリアースからすれば剣を狙えば済むだけなので簡単な話になっている。次々と剣が破壊される中、戦場に響く断末魔の声にクリーレが、クリブルに「勝負あったんじゃないかな?諦めなよ!」と言いながら右腕から攻撃を放つ。
クリブルは「クリーレこそ逃げ帰るなら今だ!機会を逃せば死が待っているぞ!」と言い返して剣を振るう。
今までなら弾かれて鍔迫り合いにも持ち込めなかったクリブルは、クリーレと鍔迫り合いに入ると「もう限界かい?」と言ってから、「アイスランス!」と唱えて豪雨のようなアイスランスをクリーレに向ける。
多少当たったが、クリーレは慌てて回避をすると右腕を見て、「なんで!?」と言う。
クリブルはクリーレの問いには答えずに前に出ると、「リリ!よくやった!本気を出して!」と言う。
眷属化しているリリアントには遠く離れていても声が伝わる。
リリアントは「うふふふふふ。はい!お兄様!」と言うと、最後に折られた死の剣を捨てて新しい剣を用意する。
赤みがかったピンク色は変わらないが、更に禍々しさが増した漆黒の刀身は、クエリアースの短剣を喰らってもびくともしない。
「な!?」と驚くクエリアースは慌ててリリアントの胴体を狙うが、リリアントの鎧は傷一つ付かない。
なのに周りのトーボ兵は次々に倒れ、クリブルが死を注入して起き上がるとクレス兵に襲いかかっていく。
周りを見て慌てるクエリアースに、リリアントは「うふふふふ。エナメノーレ様のおかげよ」と言いながら斬りかかるが、狙いはクエリアースではなくクエリアースの持つ短剣で、狙いに気付いたクエリアースは忌々しそうに「エナメノーレ!死の強化で呪いを無効化したのか!?」と言いながら必死に回避をしていく。
クリブルもクリーレを追いやって、エナメノーレと共にクエリアースの元に行かせると、エナメノーレが「死の強化?お前如きにするわけが無い」と胸を突き出すような仕草で自慢をした。
「死の強化もしていないのになぜ!?」
「お前は生者に呪いをかけて力に変える。この世界は生者と死者のどちらが多いか考えるんだな。だがいいのか?回避しないと死ぬぞ?」
エナメノーレの言葉に驚くクエリアースは、目の前のリリアントに一瞬反応が遅れると短剣に重い一撃を喰らう事になる。
「クリブル、今だ」
エナメノーレの言葉に合わせて、クリブルがクリーレに剣を向けると、クリーレは鍔迫り合いにもならずに今度は打ち負けて情けなく戦場を転がる事になった。
「トーボ兵は打ち止めのようだな」
エナメノーレはドヤ顔で笑うと、クエリアースは「嘘でしょ!?二千は居たのよ!?」と声を荒げる。
「まあ私とお前の能力の相性の悪さだな。リリアント、やってしまえ」
「はい!」
リリアントが加速をして、クエリアースが本気で回避を行い、苦戦すると「予備に接続!クリーレ様!撤退しましょう!」と言って反転してクリーレを拾うと恐ろしい速度で下がっていく。
「逃すなクリブル。予備すら破壊してやれ」
ニヤリと笑うエナメノーレに合わせて笑ったクリブルは、「半魔半人達!死の剣を使え!」と指示を出すと全兵士がリリアントには劣るが、真っ黒い刀身の剣を取り出すとクエリアースに襲いかかる。
クエリアースは攻撃を防ぎきれずに短剣で死の剣を受け止めると、断末魔の叫びと共に半魔半人達と戦っていたクレス兵が倒れてしまう。
「まだ予備がある。クリブル、奴らも即座に半魔半人にして死の剣を使わせろ」
「了解だよ。起きてクエリアースを狙え」
クレス兵は起き上がるとすぐにクエリアースに向かっていく。
クエリアースは忌々しそうに「こうなれば…。呪いを解放させてその力で一気にクヨコまで…」と言うと、戦場に居た全クレス兵が倒れて絶命する。クエリアースは「ちっ。次はこんなの関係ない力で私の方が上だと思い知らせてやるわ!」と言って去っていった。
腕を組んで胸を突き出したエナメノーレは、「ふん。一昨日きやがれだ」と言って笑う。
「エナメノーレ、終わりかな?」
「ああ、勝利だな。ストンブ達にもキリの良い所で手を止めさせろ」
クリブルが眷属化したストンブ達に「こっちは勝ったよ。そっちはキリのいい所で止めて帰ってきて」と告げている間、リリアントはエナメノーレに飛びついて頬にキスをしてから、「勝てました!ありがとうございます!」と喜ぶと、エナメノーレは姉の顔で「お前の力あってこその勝利だ。誇ってくれ」と言ってリリアントの頭を撫でた。
「エナメノーレ、帰ろうか?」
「いや、進軍だ」
「え?別に僕はギアを取り戻せればいいから、今日の死で皆を助けたいよ」
「その為の進軍だ。半魔半人達はニードとウォルテに待機させておけ。ブールゥには転移札を更に用意させろ」
「エナメノーレ様?」
「リリアント、クレスに行く。嫌でなければ着いてくるといい」
リリアントはクレスと聞いて青い顔をしたが、すぐに表情を戻すと「行きます」と言った。
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