第26話 ウォルテの邂逅。

ギアでは宴が開かれた。

それはクリブルとリリアントがセミラックに傷を負わせて退けたからだった。


すっかり体型が筋肉質になった父クリーエは、「次は完封かな?頼もしい限りだ」とクリブルを褒め称え、母アイボワイトはリリアントに「リリアント、貴女が戦えたのはクリブルあっての事、間違っても驕ってはいけませんよ?」と言葉を送る。


「父上、完封は難しいので、なんとか勝てるように作戦を立てて剣技を磨きたいと思います」


クリブルの頼もしさに剣を教えたストンブ達も、「我々もお役に立てる事をします!」と言ってくれるし、ロズミィも「新たな魔法を覚えてみませんか?王子でしたら古の大魔法すら発動可能だと思われます」と提案をする。


クリブルは「皆ありがとう。多分セミラックが攻め込んでくることも考えて、僕はニードに暫く滞在するよ。流石にもう単身で転移札を使用して攻め込んでくるとは思えないんだ」と言いながら、「ストンブ、半魔半人達を使う大軍指揮や攻め込み方を一緒に考えて。ロズミィは大魔法の他に半魔半人達でも効率的に使える魔法を考えて、これからは多分数の対決になる」と指示を出す。


リリアントは母に「はい!勿論です。私の強さはお兄様とエナメノーレ様の特訓あってこそです。本当にお兄様とエナメノーレ様には頭が上がりません!」と言うと、エナメノーレはリリアントにウンウンと頷きながら、「言え!言うんだ!」と小声で何かを促す。


「リリ?エナメノーレ?」


クリブルが嫌な予感に襲われながら確認すると、リリアントは父クリーエに「お父様!お兄様がセミラックに勝つ為に、更に特訓を引き上げる必要があるとエナメノーレ様が申しております!お兄様の為にエナメノーレ様が選ぶ目ぼしい者を、是非特訓に参加させてください!」と進言する。


もうその顔は親の前でも発情気味になっている。


「勿論だ!皆の者には、クリブルの成長が頭打ちになった時にはギアの為に、クリブルの為にその身を差し出すように言ってある。無理強いはしていない。皆喜んでその日を待っていたぞ」


クリーエが「来るのだ!」と声をかけると使用人から兵士から、様々な者達が前に出てきて一列に並ぶと、クリーエが「さあ!皆が待ち望んでいた!クリブルよ!選べ!エナメノーレ様!よろしくお願いします!」と続ける。


「父上ぇ?」

「うむ!見事だ!クリブル!誰がいい!選べ!お前は能力が頭打ちになったらと言っていた!今がその時、さあ選べ!」


クリブルは拒絶をしたが最終的には諦めて、リリアントとエナメノーレの選出もあり、リリアントの世話をしていた使用人を選び特訓に連れて行く。


そこにはブールゥも居て、クリブルは4人相手に特訓をする。

リリアントの事は相変わらず抱かないが、3人それぞれを抱いたクリブルは、エナメノーレに言わせれば「また深みが出た!それだ!」と喜ぶ結果に終わった。



ウォルテの街に来るものは居なくなった。

セミラックが怪我をして戻り、倒れる前、クリーレの部屋に向かう間に何があったかを事細かに話すと、クレスの城に記録があり、それはギアの悪魔の仕業だと判明する。

その話はすぐにクレスとトーボに知れ渡り、ウォルテでは魔物が人のフリをしていて襲いかかってくると知ると、初めこそは消息不明の人間を探す為にウォルテに向かい殺されて半魔半人が増えたが、すぐに誰も近寄らなくなった。



そんなウォルテに一組の冒険者が入ってきたとクリブルに連絡が来た。


クリブルは特訓の成果が出ていて、眷属にした半魔半人に意識を向けると、視野の共有も可能になっていた。


「ビリジーア、冒険者の姿を確認するんだ」

その指示でビリジーアが街に出て、酒場の方に向かうと冒険者は旅の疲れを癒す目的か、食事を注文していたところだった。


隻腕の冒険者と、それに付き従う女冒険者の顔をビリジーアが見た瞬間、セミラックが来たと聞いた時以上にクリブルは血肉が沸き立っていた。


「殺してやる。エナメノーレ!リリアント!クリーレだ!クリーレがウォルテに現れた!行くぞ!」


この言葉でギアの城は騒然とする。


そんな中、クリブルはブールゥから転移札を貰いつつ、「呼ぶ場合がある。備えてくれ」と言ってウォルテに飛んだ。



ヘラヘラと「この酒場は客に何も出さないのか?」と言うクリーレと、「殺気ならでてます」と答える従者。


そこに飛び込んでくるクリブルとリリアントとエナメノーレ。


「おお、本当に兄さんだ。久しぶりだね兄さん。リリアントは若いね」

ニコニコと語りかけるクリーレを見ていると、クリブルはかつてのギアの日々を思い出していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る