第22話 交渉の決裂。

水源に住み着いた野盗は、愚かにも毒を持っていて、クリブルに毒を流されたくなければ金を置いて帰れと迫る。


「やれよ」

「なに?」


「やるといい。そんな事をしても俺はお前達を皆殺しにする」

クリブルは鼻で笑うと、容赦なく近い順に剣を突き立てて殺していき、殺す度に腕を切り飛ばして証拠品にする。


あっという間に4人が蹴散らされて10人が慌てて「散れ!散りながら一斉に襲いかかるぞ!」と言う言葉に従って距離を取る。

恐らく今言った奴が頭目だろう。


クリブルはニヤリと笑うと、殺したばかりの野盗を半魔半人に仕上げると、半魔半人達は腕が生えて元仲間に襲いかかる。


野盗達は、「どうした!?」、「正気に戻れ!」、なんて言っているが仲間なのは外側だけで、中身は魔物が入っている。

クリブルは「そこのお前、本性を現してやれ」と指示を出すと、半魔半人は魔物の姿になって元仲間の首を絞め殺す。


慌てる野盗に「腕が生えた時におかしいと思うべきだ。仲間?身内?信用すると裏切られる」と言いながら剣を突き立て殺すと、あっという間に「立ち上がれ、半魔半人」と言って戦列に参加させる。

14対1はあっという間に1対14になった。


頭目はそこそこ強かった所に、半魔半人の素体が弱く、入れた魔物もゴブリンだった為に一度倒されてしまったが、「おお、強い。お前は人喰い鬼にしてやろう」と言いながら斬り殺されたばかりの半魔半人を蘇生させて襲わせると、頭目は力尽きて元仲間達に一斉に剣を突き立てられて殺されていた。


クリブルは水源に死を放ち、半魔半人達には魔物化と人間化を適宜使い分けて。ニードまで行くように指示を出すと、切り飛ばした14人分の腕を回収する。

そして川を塞ぐ大岩を粉々に砕くと、当初の予定通りエナメノーレを水源で抱いた。

今回のエナメノーレは、水源の水に触れながら「この水を皆が飲むと思うと興奮する」と言ってそれだけで震えていた。

依頼が終わった事を告げに行き、村長に腕を見せて「死体は魔物が食べるだろう」と伝える。


村長は感謝を伝えたが、愚かにも1人の村人がクリブルを疑った。

「そもそも腕は本当に野盗の物なのか?」

「実は前から持っていたのではないか?」

そう言った村人の真意は、とても強そうに見えないクリブルが、多対一で勝てるわけがないという事だった。


「どうする?疑うか?」

クリブルは村長に聞くと、村長は中立を貫くとしてクリブルを丁重にもてなすし、報酬金は上乗せするから、確認する間は村に滞在してくれと言い出した。


交渉は決裂。

水源は血溜まりだが半魔半人達はいない。


「ふむ。それも構わない」

そう言ったクリブルは「新たに使えるようになった能力でも試すかな」と呟くと、「リリ、出番だよ」と言う。


クリブルは転移札に死を載せる事で高威力化に成功をして、さらに上位の眷属に指定したリリアントなら、知らない場所でも自分を目印に呼ぶ事が可能になっていた。


クリブルが豪華なもてなしを受けるタイミングで村に入ってきたリリアントは、エナメノーレから状況を聞いていたので、「お兄様を疑うなんて!許せない!」と言いながら、老若男女を関係なく容赦なく斬り殺して血の雨の中笑っている。


「リリ、ありがとう。キチンと来られたね」

「お兄様の御力あってです。特訓を頑張られたのですね?お兄様の向上心を私も見習いますね!」


特訓もなにもエナメノーレに押し倒されるだけだし、向上心もなにも、ただただやっているだけで褒められても嬉しくない。


「お兄様。ここの所ギアに帰ってこられても、すぐにクレスに行かれてましたよね。さみしかったです」


シナを作って甘えるように抱きつくリリアントは、「エナメノーレ様のお許しは貰えました。訓練には私も参加しますね」と言っている。


「まあリリはキチンと皆殺しにしてくれたからね」

「やりました!では早速!」


矢継ぎ早に鎧を脱ぎ捨てようとするリリアントを見て、クリブルは想像と違う妹の今に少し困りながら、「まだ調査に出た生き残りもいるし、半魔半人化が済んだらね。リリアントは魔物を狩って死を稼いでおいてくれないかな?」と指示を出す。


リリアントが出かけている間に、クリブルは村民全てを半魔半人化させていた。

しばらく待つとクリブルを疑った男は走って戻ってきて、「村長!アイツはやっぱり詐欺師だ!」と騒いでいる。


「そうか…」と言って前に出る村長に、「詐欺師はどこだ!?」と聞く男。


村長は「そんな事はもうどうでもいい」と言うと、「え?」と聞き返す男の脳天に老人とは思えない力で拳を振るった。


「ぎゃっ!?」と声を上げてうずくまる男の前にやってきたのは男の父で、男は言いつけるように「親父、村長はどうしちまったんだよ?」と言った時には、父親の持つ斧が振り下ろされていた。


男は状況を理解する事は出来なかった。


なにが起きたのか?

なにがいけなかったのか?


そんな事を思いながら男は脳天に斧を受けて死んでいた。


なにがいけなかったのか?

クリブルを疑った事がいけなかったのか…。

否、クリブルが来た時に遅かれ早かれこうなる事は決まっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る