第18話 復讐の王女。
クリブルはリリアントの戦闘力に驚いていた。
路地裏からブレイン・フラワーガーデンまでは10分だった。
その10分でリリアントは殺戮をしていた。
「リリアントは凄いね」
「はい!お兄様とエナメノーレ様のお陰です」
ニコニコキラキラとした笑顔は、かつてのリリアントを彷彿するが、その顔には返り血が付着していて、血に濡れて手足も真っ赤になっている。
だがそれでもクリブルはうれしい気持ちでリリアントの頭を撫でると、そのまま頬を撫でて「リリは自慢の妹だよ。さあ、俺とこの街の連中を全て殺そう」と言う。
「はい!是非!ビリジーアも殺したいです!」
クリブルが「ごめん、ビリジーアは僕が昨日殺したんだ。それで今朝リリを迎えに来たらこれでさ」と謝ると、「いえ!お兄様が1番で間違いありません!」とリリアントはキラキラと返す。
「ふむ。クリブルよ、ビリジーアは殺してしまったが、奴の死をリリアントにプレゼントしようではないか」
クリブルが聞くと、段階が上がったクリブルなら死を加工して、今までとは違う強い武器防具が作れると言う事で、エナメノーレが蓄積した死を使い、リリアントに剣と鎧をプレゼントすることになる。
「リリアントよ、理想の装備を思い浮かべよ。後は身体と才能に合わせて補正してやる」
「はい!エナメノーレ様!」
クリブルはエナメノーレの指示に従って、リリアントの頭に手を置き、リリアントの望む装備を形取る。
「大盤振る舞いをしても、リリアントが振り回されるだけだ。昨日のビリジーアの屋敷にいた連中のみで作ってやれ」
この言葉に従うと、黒い刀身に赤みの強いピンク色の装飾の剣と、赤みの強いピンク色の鉄鎧が現れてリリアントの身体を覆う。
「わぁ!思った通りですけど、剣は少し短い気がします」
「剣は剣技に依存するからな、不満ならギアに帰ったら鍛えるといい」
リリアントがビリジーアを気にするので、エナメノーレは刀身を光に晒せと言い、その通りにすると、反射する中にうっすらと苦悶の表情を浮かべるビリジーアが見えた。
「クリブルがヤキモチを妬くから刀身は男どもで作って、鎧は女どもで作ってやった。ただの鉄鎧とは違って重さなど殆どない。その上ダメージは鎧に使った死霊達が肩代わりしていく。全滅したら破壊されるから、定期的にクリブルに死を補充して貰うといい」
この説明にリリアントはニコニコと喜ぶと、エナメノーレに飛びついて「ありがとうございます!エナメノーレ様!」と懐く。
エナメノーレは赤い顔で「い…いや。お安いご用だ」と言った。
和気藹々とした空気。
これがこれから殺戮の場に向かう人間の顔ではなかった。
だがクリブル達はその空気のまま外に出ると、「リリアント、二手に分かれようか?」と言うクリブルに、リリアントが「嫌です。もう離れ離れは嫌です」と言ってクリブルに抱き付く。
「そうだね。じゃあ殺そう」と言うと、目の前でブレイン・フラワーガーデンの中を探っていた男と女を問答無用で刺殺した。
躊躇のない動きに、逃げ遅れた連中は次々にクリブルとリリアントに殺されていく。
「死んで!こんな街いらないの!」
「お前達はギアを裏切りクレスに加担したんだ!それだけでも罪だ!死罪だ!」
「貴方!昨日私に乱暴した人!殺さなきゃ!」
「そうだ!更にお前達はリリアントを辱めた!その大罪を許す道理がない!」
リリアントは自身を汚した男と、侮蔑の眼差しで嘲笑った女を重点的に殺していき、クリブルは討ち漏らしと老人や子供を重点的に殺す。
ギアの生き残りがいる可能性も考えたが、今日までこのウォルテで生き延びているギアの生き残りなんてロクでもないし、居るのならリリアント救出に名乗りを上げなかった事で、罪はウォルテの人間以上だと思っていた。
子供は生き延びれば確実にリリアントを汚した大人達と同じになる。
害獣と何も変わらない。
若く幼いいうちに芽を摘むに限る。
ウォルテは広く、逃げ惑う連中を追うのは手間だったが関係無かった。
エナメノーレの加護があれば食事や排泄は不要で、ずっと戦っていられた。
一先ず門を凍り漬けにして誰も外に逃さないようにする。
治水が整っていて下水に逃げようと画策するものも居たが、それは無駄な徒労に終わる。
エナメノーレの指示で、目につく人間達の死体を魔物の死を使って半魔半人に仕立て上げる。
姿形は生前と変わらない。
だが中身は魔物で、クリブルに忠実な存在でしかない。
逃げた連中はそのことに気づかずに、生き残りが居ると喜びアジトに連れて行く。
「お前も無事だったんだな!」
「何だったんだろうな」
「ギアの姫が襲いかかっていた」
そんな言葉の中で、1人の人間が半魔半人を見て、「お前はギアの姫に、刺し殺されたはずだ…」と青くなると、半魔半人は本性を表し襲う。
そしてその死骸はまた新たな半魔半人になって人々を探して殺していく。
扉を閉ざしたウォルテは地獄と化していた。
クリブルもエナメノーレも、まさかウォルテに2000近い人間が居るとは思わずにいたのでこの結果に喜ぶ。
「お兄様?」
「殺した奴らの死を使って、ギアの人達を生き返らせるんだよ。沢山殺して沢山助けようね」
クリブルの提案にリリアントは「わぁ!凄いです!」と喜ぶ。
「だが1人でも生き残りがいて、他の街に行かれると困るからそれまでは門を閉じて置かないと。早くリリを父上達の元に連れて行きたいのに」
普段の顔で話すクリブルに、エナメノーレが「本とかでは何か良い方法は書いてないのか?」と質問をする。
少し考えたクリブルは、半魔半人達に人の営みを偽装させる。
人の知識とクリブルの支配で大人しく言う事を聞く半魔半人達、それを隠れて見ていた人間達は、まるで悪夢を見たのではないかと思い込み、ノコノコと出てきて殺される。
だがまだ油断はできないと言って、クリブルはビリジーアの館にリリアントとエナメノーレと住む事にした。
半魔半人達の働きは見事で、使用人の仕事も問題なくこなす。
リリアントは最初こそ久しぶりの事に驚いていたが、慣れてくると尽くされる事をきちんと受け入れていた。
「ふふふ。これもセックス特訓の賜物だぞ。先日の半魔半人よりも支配が行き渡っているんだ」
胸を張って自慢するエナメノーレは、夜な夜なクリブルを寝室に連れ込んで朝まで何度も肌を重ねる。
そんな中7日目の夜、食後にエナメノーレはリリアントも部屋に呼んだ。
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