第17話 眷属化の強化。

落ち込むクリブルに、「忘れたか?今は私が取捨選択をしているが、お前には死霊が見えるだろう?段階を引き上げてやる」と言ったエナメノーレのキスの後で、「見たい死霊を意識しろ」と言われたクリブルが、「リリ…」と言うと、目の前には悲しげな顔のリリアントが見えた。


「ここに来た時から目の前に居たよ。場所を変えよう。話しかけてやれ」


路地裏に行ったクリブルが「リリアント」と呼びかけると、「え?お兄様?」と聞こえてくる。


「そうだよ。僕だ。なんでそんな真似をしたんだい?僕はリリアントを、大切な妹を足でまといなんて思わないよ?君こそ僕がクリーレの呪いで弱体化をしていても、兄として扱ってくれたじゃないか」


リリアントはその言葉に「汚れてしまったから、薬物中毒だから」と泣いた後で、「お父様やお母様の所に行きます」と言うと、クリブルは笑いかけて「そっちに父上達は居ないよ」と言う。


「え?」

「僕の話をしなかったね。僕は16歳の時、クリーレの謀略で転移させられたのはワイプ山、そこで僕を助けてくれて行動を共にしてくれたのは、このエナメノーレさ。

ワイプ山とエナメノーレ、リリアントにはわかるよね?」


リリアントは驚いた顔でエナメノーレを見て、「ワイプ山の死を司る悪魔」と呟くと、エナメノーレはやれやれと「悪魔ではない」と返し、クリブルは「リリアント、エナメノーレはね、死を司る悪魔ではなくて、生と死を司る女神さ。もうわかるよね?エナメノーレの力で父上達は生き返ってギアに居るよ。だから僕はリリアントを探しに来たんだ」と言って微笑む。


「え?」

「さあ、生き返って。ギアに帰ろう。皆が待ってるよ」


手をかざすクリブルを止めたのはエナメノーレで、「次の段階に引き上げたんだ。通常の蘇生では意味がない」と言うと、リリアントを見て「クリブルの為に戦ってくれないか?クリブルの右腕として戦って欲しい」と言った。


クリブルは「エナメノーレ?」と聞き返し、リリアントは「私は剣はからきしで、魔法はまだロズミィに教わりましたけど…」と返事をすると、エナメノーレは「眷属化を強化した。今はまだ1人だがお前の力と同等になる」と説明をした。


クリブルは眉をひそめて「クリーレと同じ?」と聞くと、「あんな品のない呪いと混同するな。女神の加護で死と生を重ねて得た力だ。リスクなんてない」と返される。


「今はまだ1人ね…。一応聞くけど人数が増える条件は?」

「セックス特訓だ!」


エナメノーレは真剣な顔でリリアントを見て、「私の力は生と死に起因している。死は魔物でも人でも殺してくれれば構わないが、生の部分だけは契約者…クリブルとのセックスが不可欠なのだ。覚えておいてくれ」と言うと、「戦ってくれるな?手始めにこの街を滅ぼそう。お前を犯した男どもの顔と声、お前を侮蔑した女どもの顔と声、許せるか?」と続けた。


リリアントは穏やかな姫の顔から怨嗟の顔になると、血の涙を流しながら「許せない。殺したい」と言う。


「そうだろう?しかも今までとは違う。お前に力を授ける事が出来、お前がその手で復讐できるんだ。どうだ?」


エナメノーレの言葉に、リリアントは「やります。私をお兄様の眷属にしてください」と言った。


「よし来た。クリブル。蘇らせる時に眷属化と能力付与をしろ」

クリブルが手を翳す時、「リリアント、お前には肉体があるから、生き返ると肉体から蘇る。安心しろ、身体は作り替えてやる。その為にクリブルには昨日殺戮をさせておいた。起き上がったら復讐を始めろ。だが一つ、原型を残して殺せ、斬殺も欠損もさせるな。すぐに行く」とエナメノーレは指示を出す。


「クリブル、昨日のリリアントではない。最後にギアて会った時の、3年前のリリアントを意識して蘇生だ。段階が上がったお前になら聞くだけでわかるな?」


クリブルは頷くと「甦れリリアント!眷属化、能力付与」と言うと、目の前の死霊は消えて、すぐにブレイン・フラワーガーデンからは絶叫と悲鳴がこだました。


「行こう。あくまで欠損や損壊がないように殺せ」

「任せてくれ」

クリブルがブレイン・フラワーガーデンに駆け込むと、血の海の中で肌着のリリアントが「死んで!」「ねぇ!」「死んで!」と言いながら娼婦を殴り殺していた。


「リリ!」

「お兄様!!ありがとうございます!身体が震えません!力が漲ります!」


血溜まりの理由を聞くと、昨晩の男が死んだリリアントに向かい、死姦を行おうとした所に丁度蘇り身体が幼くなる。


悲鳴を上げる男のイチモツを見たリリアントは、何があったかを即座に理解してクリブルのくれた力を使い、全力で男の股間を蹴り上げる。


男は様々なものを飛び散らせながら絶命すると、他の男や女どもが何事かとリリアントの死体があった部屋に入ってきて、蘇ったリリアントを見て逃げ出す。


リリアントは誰一人逃す事なく、「エナメノーレ様の言う通りに殺さなきゃ」、「3年間辛かった」、「よくも虐めてくれたよね」、「許さない」と言いながら、屈強な男の頭を持って壁に埋め込み殺すと、次々に皆殺しにしていて、今は最後に残しておいたイジワルなお局を、コレでもかと殴打して殺していた。

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