第15話 クリブルの怒り、リリアントの涙。

クリブルは怒り狂い、吐き気を催して何度も吐いた。

脳内は呪いのせいで落ちこぼれていた自分にも、優しく声をかけてくれた妹の顔と、この世の地獄を見てきたあの絶望の顔。そして薬物を投与されて必死に快楽と戦う牝の顔が、脳内をグルグルと渦巻いていて、耳を塞いでも妹の嬌声が耳から離れない。


「殺してやる」

「ここの連中を全て殺してやる」

「リリアントを助ける」


怒り狂うクリブルに、エナメノーレは「まずは情報収集だ。殺戮のせいで情報が得られなくては困るだろ?そして妹を人質に取られても困るだろ?それとも後で生き返らせられるから見殺しにするか?」と聞くと、「人手なしではない!」とエナメノーレに怒鳴りつける。


「クリブル、辛いだろうがセックスだ」

妹のあの姿を見た後で、この女は何を言うのか?

クリブルは呆れを通り越して怒り始める。


エナメノーレの腕を乱暴に掴んで引き寄せると、「何を言う!?ああいいさ!ここでやるか?」と言って睨みつけると、「是非もない。だが今の段階では妹を完璧には救えない。私はその為に申し出た。まあ妹を救ってからでも遅くない」と言ってキスをすると、路地裏なのに始める。


必死に声を我慢するエナメノーレに、クリブルが「何となくご先祖様の気持ちがわかる。我慢するのを見ると責め立てたくなる」と言って、ペースアップをしてエナメノーレに声を我慢させ続けた。


エナメノーレとの行為もあって落ち着いたクリブルが、エナメノーレに「情報収集はどうする?」と聞くと、エナメノーレは「まあ路銀も必要だから、金貨を得てホクホクのカップルが居ただろう?」と言った。


エナメノーレの提案にクリブルは成程と言うと、女の方がすぐに見つかった。

結婚資金が手に入ったと喜び、周りの妬みすら受け付けないテンション。


それはリリアントが苦しんだ事で、手に入った金だと怒るクリブルは、女が油断したタイミングで路地裏に連れ込んで、「とりあえず逃げられないように、片足でも切り落とすか…」と事もなく言うと、女は真っ青になって失禁をしながら命乞いをする。

クリブルは殺気を込めて、「簡単に今日の事を話せば今は許してやる」と言った。


「き…今日の?何でしょうか?」

「広場での事だ」


「あれはビリジーア様が考えた催しです」

「それは知っている。あの女の事だ」


「ギアの姫ですか?アレはクレスの王子に靡かなかったから、要らないとギアの新王が、ビリジーア様に飼うように命じたんです」

「それで?詳しく」

女は質問の内容がリリアントの事で驚きながら、「え?あの女はビリジーア様が経営する娼館に連れて行かれて、反抗的な態度をとる度に、女連中に痛めつけられて客を取らされて、それでも反抗的な態度が直らないからと、ああして広場で躾をされています」と説明をする。


「娼館の名は?何処にある?」

「娼館は【ブレイン・フラワーガーデン】と言う名前で、大通りのビリジーア様の館の方にあります」


女は必死になって説明する。

なんとかこの場を切り抜けようとする目。

身体を渡せば5体満足で命が助かるならと思っているが、クリブルの目的が別ならそれに沿って助かろうとしている。


「あの注射器は?」

「あれはビリジーア様がクレスから買い付けた、ロエスロエと言う薬物です。飲むものもあるそうですが、この街には注射するものしかありません。中毒性が物凄くて、このウォルテは無事でしたけど、クレス寄りのパレトは女連中がロエスロエで壊されて、そこをクレスに攻め込まれたそうです」


クレスの事が聞けた事、他の被害者もいる事を知れたクリブルは、殺気を消して「詳しいな」と言ってしまう。

肌で殺気が無くなった事を感じた女は、クリブルの機嫌を取る為にも必死になって、「有名ですよ。あの中毒性の強い薬を、アレだけ打たれたあの女は再起不能です!!」と言ってしまった。


その瞬間、怒りに支配されたクリブルは氷の魔法、アイスランスで女を貫き殺していた。


その足でフィアンセの元に向かい殺すと、結婚資金の金貨10枚を貰って娼館を目指した。



ブレイン・フラワーガーデンは大通りで煌びやかに男を待っていた。


エナメノーレは「宿屋を手配する。私とは繋がっているから離れても平気だな?」と言うと、「私の分は残しておいてくれよな」と続けながら歩いて行ってしまった。


入口の男はクリブルを値踏みする。

ギアの王子として、最低限の装備と立ち振る舞いのクリブルは、客として合格を出されて「どんな娘が良いですか?」と手揉みをしながら聞いてくる。


「広場に居たギアの姫」

「へ?ありゃあ今日は使いもんになりませんよ?明日なら金貨3枚ですが…。金貨3枚出すなら、負けず劣らずの子を用意しますよ…」


クリブルは「疲れ切ったギアの姫もいいな。手間賃も払う」と言って、金貨を6枚掴ませると目の色を変えた男はクリブルを部屋に連れて行く。


暫くすると、遠くから「ガタガタ抜かすな!お前に高値が付いたんだから、稼いで来い!」と怒鳴り声が聞こえて来て、「辛いんです。本当に辛いんです。死んでしまいます」と啜り泣く声が聞こえて来た。

その後聞こえてきた、「今ここで殺されるのと、仕事して死ぬのは変わらないだろうが!死んで来い!」という怒鳴り声は部屋の側で消える。


弱々しいノックの音の後で、弱々しく「お買い上げありがとうございます」と言って入って来たのは、見間違えるはずもない妹のリリアントだった。

げっそりとやつれた顔には疲労が見て取れる。

それを安物の厚化粧で誤魔化しているリリアントを見ると、クリブルは涙が出てしまいそうになり、慌てて誤魔化すようにベッドを指さして「座れ」と言う。


絶望の顔でベッドに座るリリアントを見て、入り口にいた男は「どうぞごゆっくり〜」と見送って居なくなる。


足音が遠ざかるとクリブルは横のリリアントを見た。

リリアントは今も辛そうに肩で息をしている。


見ていられないと涙を溢れさせたクリブルは、「リリ!ごめんよ!遅くなってごめんよ!」と言って抱きしめる。


顔は適当に作られた偽装状態で、リリアントが混乱してしまうとクリブルは「あ…?顔は偽装していたのか。解除するから待ってて」と泣きながら言って顔を元に戻すと、リリアントは「ひっ!?」と言って必死に逃げようとする。


すぐにリリアントがクリーレと間違っている事に気付いて、「リリアント!リリ!僕の目を見て!僕だ!クリーレではない!」と言ってリリアントの頬を持って見つめ合うと「青…、赤じゃない」とリリアントが気付く。


「そうだよ。僕だよ。遅くなったね。助けに来たよ」

もう一度クリブルがリリアントを抱きしめると、リリアントは「お兄様?本当の?」と聞きながらクリブルの返事を待たずにワンワンと泣き始める。


「辛かったです!」

「私が最後のギアとして、死ねないと思い耐えて来ました!」

「痛かった!」

「辛かった!」

「怖かった!」


そう言ってワンワンと泣くリリアントに、「今は寝るんだ。僕が君を助けるからね?僕も全部を知って来た。僕が弱かったのは、クリーレに能力を取られていたかららしい、…でも今は呪いはない。僕はもうクレスの兵士を何千人も殺しているんだよ」と言うと、リリアントは安心し切って眠りにつく。


「お兄様、起きた時に居てくださいね」

「勿論だよ」


そう言ったが穏やかな時はなかなか訪れない。2度ほどあの男が見に来た。


「泣き声が煩くて、お客様にご迷惑かと…」

「油断させて泣かせたんだから邪魔をするな。これから油断し切ったところを痛めつけるんだ」


クリブルの声に「怖いお方だ」と言って男は引き下がったが、リリアントの苦しむ姿でも見たいのか、こっそりと来たので仕方なくエナメノーレを呼び出す。


「頼みがあるんだ」

「言ってくれ」


「エナメノーレをリリアントに見立てて犯すから、リリアントのつもりで受けて欲しい」

「喜んでしよう!新たな行為だな!きっと次の段階まで行けるぞ!」


クリブルは設定を伝えると、エナメノーレはそれだけで上気した顔で、「クリブルこそしくじるな?手加減は無用だ」と言ってくる。


クリブルは風魔法を応用して、リリアントには声が聞こえないようにすると「いい加減起きろ!」と怒鳴る。


エナメノーレは声真似でもできるのか、リリアントに近い声で「え?さっきまではあなたもギアの人で優しく…」と言うと、クリブルが「そんなものはお前を油断させる言葉だ!脱げ!」と怒鳴りつける。


「無理です。ボロボロなんです。辛いんです。死んでしまいます!」

「休ませてやったろうが!」


その後はクリブルもエナメノーレと共に役にハマり、「可哀想な娘を言葉責めしながら欲望をぶつける悪魔のような旅人」を演じると、エナメノーレも「心身ともにボロボロで、限界なのに身体は反応してしまい、嬌声をあげる亡国の姫」を演じ切る。


エナメノーレは行為後に腰が抜けて「こ…これ、サイコーかも知れない。また頼む」と言って身体を震わせていたが、クリブルは「なんか僕の中の悪魔が出て来そうで嫌だよ」と言っていた。

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