第11話 死者の復活。
嘆き崩れ落ちるクリブルに、皆が「自分たちこそ済まなかった」と言葉を送る中、エナメノーレが「クリブル。更に生まれ変わる覚悟はあるか?」と聞いて来た。
クリブルが「エナメノーレ?」と言いながらエナメノーレの顔を見ようとすると、大きな胸が邪魔をして顔をキチンと見ることが出来ずに居た。
エナメノーレがそれを察して、前かがみでクリブルの顔を見ると、「私の権能は生と死を司る事。死を司る能力、死者との対話は私と契約を交わし、セックス特訓を経て身につけた。これで終わりの訳がない。今度は生を司る能力を使わせてやる」と言った。
クリブルはエナメノーレが何を言っているか理解に困ったが、必死に理解しようとした。
その必死な顔を見て、「お前は優秀だ。次の段階、死霊に触れる事も可能とした。無意識だが死霊であるブールゥの手を持った。コレならば親しい者までなら蘇らせる事が可能だ。まあ対価は要るがな」と言うと、クリブルは目の色を変えてエナメノーレを見て、「エナメノーレ!本当だね!?君の力があればギアの民を、皆を、父上達を助けられるのだね!?」と立ち上がって詰め寄る。
「ふふ。いい顔だ。思わずセックスが足りないと言いたくなる」
エナメノーレは発情しかける顔をしたが、「だが嘘はつきたくない。今この場ならブールゥ以外は蘇る」と言う。
「ブールゥは何が?ワイプ山で死んだから?」
「違う。クリブルが心を通わせた存在だからだ。父母の方が心のつながりが弱い。まあ、父は王として壁を作る必要もあったし、母は呪いのせいで弟に傾倒していたから仕方ない」
クリブルは必死に理解をしていく。
「対価とは?」
「セックスと殺戮だ」
クリブルが呆れる事無く「詳しく話して」と言うと、エナメノーレは胸を突きだしながら、「私と肌を重ねて繋がりを深めれば、対価が軽減される。ブールゥを助けるのにはまだ段階が足りない。もっと心を通じ合わせるセックスをして、私を満足させ続けるんだ」と言った。
「それはこの後でする」
「本当だな!?期待しているぞ!」
「殺戮は?クレスの人間を殺せばいい?」
「概ね正解だ。人を蘇らせるなら、今はまだ人の命を対価にする。散々殺した魔物や獣は今の段階では壁や衣服を呼び戻す対価になる。だから私はここに来るまで魔物を狩らせた。人はまあ、城の人間を蘇らせるにはまだまだ足りないが、ひとまずこれまでで千近い人間を殺したのだ。千の人間を蘇らせられるぞ」
エナメノーレの言葉を反芻して、目に輝きが戻ったクリブルは、「エナメノーレ。僕の願いを口にしていいかい?」と聞くと、エナメノーレは嬉しそうに「言ってくれ」と言った。
「クレスの連中の命で、ギアの全てを蘇らせる。付き合ってくれないかな?後は連れ攫われたリリアントを助けて、クリーレを兄…いや、ギアの王子として始末をつけたいんだ」
「契約をしたのだ。どんな死地にもついて行く。ただ一つ、私を抱くことを忘れるな?」
「勿論だよ」
「ふふ。クリブルこそいいのか?人を蘇らせる対価は人を殺す事。その変質に耐えられるか?」
「ギアの民とクレス人。重さが違いすぎて比べられないし、クレス人相手なら僕は変わらないさ」
「ならどうする?今ここで千人を蘇らせるか?」
「それをして、クレスに攻め込まれたら困る。だが僕が志半ばで朽ちた時に、助けられないのも困る」
眉間に皺を寄せて悩むクリブルに、エナメノーレは「よし!セックス特訓だ!」と言った。
「エナメノーレ?それで何を?」
「眷属化の力に目覚めて貰う」
「眷属化?」
「お前が蘇らせた人間達が命を奪う毎に、その死がお前のストックになる。それをすれば1人でやる分の、何倍もの効率になる。私にはまだまだ力はある。セックス修行を怠るなよな」
クリブルはわかったと言うと、エナメノーレの手を取って抱き寄せてキスをしてから、「ありがとう。行こう」と言って部屋に連れ込むと、また10日ほど出てこない。
時折、中からは嬌声の合間に「違う!そうじゃない!それはただ気持ちいいだけだ!」と叱る声も聞こえて来ていたが、10日目には「それ!サイコー!」と聞こえてくるようになっていた。
10日経ってもデザーグから知らせのないクレスは、更に700の兵士を送り込んできたが、クリブルからすれば僥倖の一言で、嬉々として皆殺しにすると、もう一度エナメノーレを抱く。
クリブルはよくわからなかったが、エナメノーレに言わせると無事に心が通じたセックスも可能になったので、ブールゥも蘇らせられる事が出来るようになっていた。
「よし、自分の中に眠る死を意識しろ。それは殺したクレス人だ。そして生き返らせる者の名を呼べ。手始めに剣士から呼び戻してみろ」
クリブルの「蘇ってくれ!ストンブ!」の声と共に、クリブルの目の前が光りストンブは蘇る。
だが全裸だった。
クリブルが「裸!?」と言うと、ストンブは自分の身体を見て「うぉっ!?」と驚き股間を手で隠す。
「素チンめ」と悪態をついたエナメノーレが笑いながら、「まあそうなる。だから男からにした。蘇りの際に魔物や獣の死を意識して、服を甦らせてやるんだ」と教えると、クリブルは剣と鎧まで蘇らせて渡して、「助けられて良かったよストンブ」と言うと、ストンブは「王子!申し訳ございません!」と土下座で礼を言う。
「いや、クリーレの暴虐を止められなかったのがいけなかったんだ。ギアを取り戻す日まで僕と戦ってくれるかな?」
「勿論です!2度と遅れはとりません!」
その後はあっという間に1500人を助ける。
約200に関しては、予備で残しておくようにエナメノーレに言われていた。
名も知らない使用人達は、「名前を言って」と聞いてから蘇生をさせる。それはまるで神話の一幕のようだった。
最後に「ブールゥ。何となくだけど最後にしたかったんだ。1000人を超える皆を助けたから、きっとブールゥも大丈夫だからね」と言い、ブールゥを呼び戻すと、あの日共にいたブールゥが目の前に蘇り、「クリブル、ありがとう」と言って泣きついていた。
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