第10話 クリーレの本性。

3年前のあの日。

いつまで経っても帰ってこないクリブルとブールゥに城は騒然とした。

ロズミィの責任問題まで出てくる中、捜索隊を結成しようと言うクリーエとリリアントに、クリーレが「兄さんも思うところがあるのだと思います。逆に兄さんがブールゥにワガママを言っている可能性もある。ロズミィに責任を負わせるのは早計では?」と言うと、アイボワイトまでこの国にはクリーレも居るから平気だ。少しくらいクリブルの好きにさせるべきだと言った。


それでも納得のできないストンブは、自分の隊員とともに捜索に出たいとクリーエに進言し、クリブル捜索に出る。


これが第一の失敗だった。

第二の失敗は、通常の授業を行う中で、普段なら際限なく成長しているクリーレに、成長どころか衰えが窺えていて、瞳の色が紫色から赤みがかった紫に見えていた事。それにより大昔の呪術に似たものがあった気がしたロズミィが資料を漁り、成長強奪と、苦難転嫁の呪いを見つけたが、既にクリブルも居ない、ストンブも出払っていていなかった事。


追求しようにも、その日からクリーレは体調不良を理由に部屋から出てこない事、母アイボワイトにロズミィが怪しんでいるから、父クリーエや妹リリアントに近付けないようにして貰いたいと言い、今更ロズミィにブールゥと共にクリブルを謀殺しようとしたのではないかと容疑をかけて拘束した。


母アイボワイトは、使用人のクエリアースから「瞳の色が赤みがかったのは、恐らくクリブルがブールゥに殺されて、まじないが解けてしまった事。まだ定着しきっていないから赤みが出てしまいました。陛下の説得はゆっくりと行う方が良いでしょう」と言われ、クリーレからは「母上、私は予言の子なのでしょうか?ギアを滅ぼすのでしょうか?そんな気はありません!母上ならわかってくださいますよね?私は殺されるのでしょうか?こわいです」と泣きつかれて、生まれてから育てた事を思い出したアイボワイトは、クリーエに相談をしなかった。


これらによって最悪は起きた。


ストンブが城に戻ると、ロズミィは幽閉されていて、アイボワイトに詰め寄ったが話にならずに、ストンブも意味のわからない冤罪で幽閉される。


そしてクリーレが話があると言ってクリーエに時間を貰う。

それは母アイボワイトすら知らなかった事だった。


「母上、僕は1人でキチンと父上を説得してみます」


その言葉にアイボワイトは騙された。

クリーレは約束の日に、「紹介したい人がいます」と言い、黒衣の騎士を連れてくる。


それはクレスのセミラック王子だった。


セミラックは「クリーレ、お前の立場を保証すれば、ギアを渡すのだな?」とクリーエの前で聞くと、クリーレは「はい。よろしくお願いします」と返し、アイボワイトを見て「今日までありがとうございました母上」と言って目を見開くと、クリーレの瞳は真っ赤になっていた。


「クリーレ!?それは!?」

「ああ、最初の赤紫は本当ですが、後はクエリアースの幻術です」


クリーレの言葉にクエリアースが横に立つと、「お役に立てましたでしょうか?」と聞く。


「勿論だ。君の呪いのおかげで、兄さんの能力も貰えたし、兄さんが苦難を引き受けてくれたから、今日まで伸び伸びと暮らせたよ」


凍りつくような笑顔を見せたクリーレは、必死に状況を理解しようとするクリーエに、「父上は私に騙されませんでしたね?何でですか?まあいいですよ。私は生まれつき赤い瞳の双子。青い瞳の兄さんを使って、クエリアースが呪いを使ってくれたから、今日まで隠し通せましたよ。ああ、兄さんはワイプ山の方まで飛べるように、クエリアースが転移札をすり替えてくれたんです。私の目が赤いと言うことは呪いの受け皿が消えたから、まあ死んだ訳です」と言って笑った。


自身が抱いた違和感が間違いでなかったことに、激高したクリーエが、「クリーレ!貴様!」と言ったが、クリーレは笑いながら「父上、話を聞いていました?制作の難しい転移札をクエリアースは作れました。言いませんでしたが、枚数は50枚です。それをセミラック王子にお渡ししたから、王子は先程城を出立されて、ここに居るんです」と言った瞬間、城中に40人の兵士が飛び込んできて奇襲を仕掛けて来た。


突然の事に対処出来なかった兵や使用人達は次々に殺されていく。


そしてクリーエも奇襲に驚いた時、クリーレによって首に剣を突きつけられていた。


「兄さんから貰って定着した能力はもう私のものです。これくらいは動けます」と言うと、セミラックが「クリーレ、私はギアの血やギアの捕虜は不要だ」と声をかける。


ニコリと笑ったクリーレは即座に父の首を刎ねた。


「こう言う事ですね?」

「まあいい。だがお前の優しさの可能性もあるな」


「では拷問をしろと?」

「わが親衛隊がギアの城と城下町を滅ぼすまで、殺さずに可能な限り母を苦しめてみせろ」


アイボワイトは涙を流して、首を横に振りながら「ク……クリー…レ?」と言うが、クリーレは散々甘えてきた顔で「母上、私のために死なずに苦しんでくださいね」と言うと拷問を加える。


片目を潰し、片腕と片足を時間毎に関節毎に切り落として行き逆の手足は筋を断って破壊していく。


セミラックと近衛兵がギアを滅ぼすと、母の胸に剣を突き立てて、「さよなら母上」と言って拷問を終わらせた。


最後まで戦って、致命傷を負ったがすぐに死ねなかった兵士は、最後に無理矢理連れ攫われるリリアントを見たと言っていた。



クリブルは「クリーレ…、なんで」と言い続け、涙も枯れ果てるくらいに泣いていた。

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