第8話 ブールゥの真実。

クリブルの息遣いが荒くなり、エナメノーレが「そろそろか?そろそろだな?共に!共にだぞクリブル!」と喜んでいるところに、クレス軍が到着をした。


将軍デザーグが「悪魔よ!出て来い!」と声を張ったが反応はない。


「もう知るか!最後までする!果てるぞ!共に果てるぞクリブル!虐殺はセックスの後でだ!そして昂った気持ちをまた私にぶつけるんだ!」


荒い息でそう言うエナメノーレと共に、止まる事なく腰を振るクリブルは、キスと共に果てると、余韻に浸りながら服を身に纏う。


待ちきれない兵士がクリブルとエナメノーレの部屋の前まで来ると、ドアの内側で「来たな」、「クレスの連中は全部殺す」と言うエナメノーレとクリブル。

エナメノーレの「その意気だ。行けクリブル!」の声に合わせて剣を抜くと、兵士が扉を開けた瞬間に、剣を突き立てて部屋を飛び出す。


デザーグは有能な指揮官なのだろう。必ず3人1組にして、部屋の前、角ごと、階段に設置をしてデザーグの前までリレー形式にしていた。


「現れました!男と女です!」

「総員戻れ!ギアの悪魔を全員で討ち取るぞ!」


だがクリブルはそれに合わせる気はない。

次々にデザーグの元に戻る兵士達の背中を切りつけていく。


悲鳴がどんどん近付く中、デザーグは「前に出るぞ!」と言ってクリブル達に向かってきた。



愚かの一言。

広い玄関ホールで待ち構えれば良いものを、部下を見捨てられないからと前に出てきたデザーグは、数の優位性を捨てていた。

だがただそれだけではなく、廊下で背後からも強襲する事で、クリブルとエナメノーレを挟撃する事にしていた。


「ふむ、挟まれたな」

「そうだね。あまり意味はないかな。ワイプ山の中にも、もっと過酷な階層があったよね」


余裕を見せるクリブルとエナメノーレを見て、怖気付く兵士たちの前にデザーグが出てくると、クリブルを見て「…同じ顔…。青い瞳。生きていたのか、生贄の王子」と言う。


生贄の王子と言う言葉も気になったが、生きていたと言う言葉も気になった。


「何を言ってます?」

「アイツはお前が死んだ事で行動を開始した。それだけだ。とりあえず今日まで死んだ部下達の恨み、晴らさせてもらう」


「それを言うなら、ギアの民をよくも殺しましたね。恨みを晴らします」

「来い。私は2対1でも構わないぞ?」


「僕1人です。大軍を用意して2対1なんてよく言えましたね」


クリブルは「エナメノーレ、後ろは焼くよ。避けてね」と言いながら前に出る。

エナメノーレは「人の攻撃は当たらない。見て昂りたくて来ただけだ」と返して余裕の表情を浮かべる。


クリブルはエナメノーレが余裕を見せた通り、何の苦労もなかった。剣を受けて鍔迫り合いからの蹴りを放ち、一斉攻撃に出ようとしていたデザーグは剣ごと真っ二つに切り裂かれてしまい、後方の兵士達はクリブルのファイヤーボールから逃げきれずに焼き殺されて行く。

あっという間に、将軍と沢山の仲間を失ったクレス兵は敗走を始めるが、クリブルはその全てに追い付くと、一人一人きちんと殺して行く。


「散って逃げるのを追いかけて殺すのって大変だ。狭いフロアに所狭しと居た人喰い鬼達は、逃げずに向かって来たのに…」

「確かにそうだな。まあ何にせよ今日だけで500は殺したのだ。良かったな。ではセックス特訓再開だ!」


上気した顔で部屋に向けて小走りになるエナメノーレだったが、クリブルが「エナメノーレ?まだ父上達のお顔を拝見する事は出来ない?」と聞くと、エナメノーレは「…う」と言った。


エナメノーレは次の段階に進むと、巣篭もりができない事を察していて、その点には触れずに「もっとだ」と言ってクリブルを求め続けていた。


「その顔、出来るんだね?」

「…仕方ない。先を読んでの事で、別に私のためだけではなかったのだぞ」


エナメノーレはそう言った後「でもなぁ。もう少ししたいなぁ。今も昂ってるんだよなぁ」と言ってモジモジとする。


「わかった。じゃあ先にするよ」

「本当か!!?」


エナメノーレは嬉しそうにクリブルの手を引いて部屋に戻ると、また3日ほど出てこなかった。



「仕方なく少しで我慢してやったんだから、段階が上がった後もだからな」

「わかったよ」


「それでは、どこまで段階が上がったかは、実際に試さねばわからないから…」と言ってエナメノーレがキスをすると、クリブルの目には剣の師匠ストンブ、魔法の師匠ロズミィ、そして父で国王のクリーエと母アイボワイトの姿が見えた。

皆嘆きの顔で血の涙を流している。


「父上!母上!ストンブ!ロズミィ!」

一気に声をかけると、「クリブルの声が聞こえた」、「私も聞こえました」、「王子、やはりお強い。私の剣が王子の中で生きたのですね」、「王子、全ては呪いでした。気づいた時には」と声が聞こえてくる。


「聞こえる……。聞こえますよ!何があったんですか?父上!母上!リリアントは?クリーレは!?」


そして今更だが、ようやく「あれ?親しい者なのにブールゥが居ない?」とブールゥを思い出したクリブルが、「ロズミィ!ブールゥは?ブールゥは生きているの?」とロズミィに声をかけた時、「クリブル、私を見ろ」とエナメノーレが呼ぶ。


「何、エナメノーレ?今はブールゥの事をロズミィに聞かな……え?」


エナメノーレの横には、穏やかではないが皆と違う表情のブールゥが居た。

だが人ではない。

皆と同じ死霊の姿をしていた。


クリブルが「ブールゥ?」と語りかけると、ブールゥは「クリブル。やっと会えたね。私はずっと一緒に居たんだよ」と返事をした。


混乱気味のクリブルに、エナメノーレは「ふむ。理解が追いつかないだろうな。まずはブールゥの話をしてやる。死霊達よ、滅んだ話はその後だ」と言うと、あの日何があったかを話し始めた。

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