眷属の武器、槍と水晶
ここはシルフィアの家の部屋。
あれからエルは、能力を解放した。
それをみた二人は、驚くどころか目を輝かせエルをみている。
「カッコいいー!! エルの目が赤紫に変わってる。それに、瞳に魔法陣が」
「ログスそれだけじゃないよ。なんか雰囲気も変わったように感じる」
それを聞きエルは、二人の反応が思ってもいなかったものだったため戸惑った。
「どうしたの、エル? もしかして、能力を使っても躊躇ってるの?」
「いや、そうじゃない。ただ、二人の反応が意外だったから驚いただけだ」
「そっか……じゃあ、大丈夫だね」
そうシルフィアに問われてエルは頷く。
「ああ、問題ない。じゃあ、さっさと終わらすぞ」
そう言いエルは、ログスとララファをみる。
ログスとララファは、エルの話す雰囲気が変わりカッコよく思えた。
「はい、お願いします」
「うん、よろしくお願いします」
そうログスとララファが言うとエルは儀式の準備を始める。
準備を終えるとエルは、ログスとララファと向かい合い儀式を始めた。
シルフィアは三人の様子をみている。
魔導書が三人の間で閉じたまま浮いていた。
三人は大きくなっている魔導書の上に左手を添える。
《 《 《星の理を知る魔導書 古の習わしにより 眷属の儀式を行う 我が呼びかけに応じよ グリモエステルス!!》 》 》
そう三人が言い放つと魔導書は、黒っぽい赤紫に発光した。
それを確認した三人は、用意していたナイフで左の親指を軽く斬る。その後、親指から流れ出る血を同時に魔導書の中央に垂らした。
すると魔導書は激しく光を放ち、赤紫の魔法陣が展開される。
そこから三個のグラスが浮き上がってきた。そのグラスには、赤い液体が入っている。
それを確認すると三人は、各々のグラスを持った。
躊躇いもなくエルは、そのグラスを口に運び飲んだ。
ログスとララファは、唾を飲み込んだあとグラスの液体を一気に飲みほした。
すると三人の全身が黒っぽい赤紫に発光する。その後、光が消えた。
そしてログスの右胸の下とララファの左側の腰には、エルと同じ赤紫色の本と火の鳥のような紋章が浮かび上がる。
それを確認したように魔導書は、手に収まるぐらいのサイズになった。
「これで終わりなのか?」
「思ってたより、アッサリと終わったね」
そうログスとララファが言うと、二人の目の前に魔法陣が浮かび上がる。
「それだけじゃなさそうだな」
そう言いエルは、ログスとララファをみた。
”儂は、グリモエステルス。エルが所持しオーパーツ。お前たちに、武器を渡しておく”
そうグリモエステルスが言うと、魔導書は大きくなって発光する。それと同時に、エルとログスとララファの両眼が赤紫に光り出した。
すると、三人の脳裏に詠唱の言葉が浮かんでくる。三人の意思とは関係なく、口が勝手に動いた。
《 《 《古より封印されし闇なる魔 その力と知恵 我の眷属〈我〉が欲す それらを解き放ち その一部の武器を具現化せよ グリモエステルス!!》 》 》
三人はそう詠唱すると魔導書から光が放たれる。それと同時に、エルとログスとララファの眼前で魔法陣が展開された。すると三人の両眼が更に赤紫に発光する。
その時、エルとログスとララファの両方の目に魔法陣が浮かび上がった。その二つの小さな魔法陣は回りながら展開される。その後エルとログスとララファは、魔導書に左手を翳した。
すると回転している魔法陣から魔導書の上に現れる。
それは槍と水晶だ。
ログスとララファはそれらを取るのを躊躇う。
”ログスにララファ、それらは君たちに必要な物だ。それとその槍の名は、エステルスの十文字槍。水晶の方は、エステルス魔導水晶だよ”
(本当にいいんですか?)
(これがアタシの武器……)
そう言い二人は、本当にもらってもいいのかと戸惑っている。
”勿論だ。これから君たちには、強くなってもらわないとね”
それを聞きログスとララファは、各々の武器を手にした。
(ありがとうございます。これを使って、俺はエルを守れるぐらいに強くなる!)
(うん、私はこの武器で援護できるぐらいになりたい)
そう思いながら二人は、手にしている武器をみる。
それを聞きエルは、真剣な表情になった。
その時シルフィアはエルの表情が変わったことに気づき心配になる。
そう能力を使っている時のエルは、どちらかといえば性格が乱暴になっているからだ。
「さて、これからどうするんだ?」
「エル、能力解除しないの?」
そうシルフィアに聞かれエルは首を傾げる。
「なんで、解除する必要がある? それに何度も面倒だ」
「あのねぇ……また能力使い過ぎて体力なくなって伸びても知らないわよ」
そう言われるもエルは、なぜか嫌そうだ。
その後もエルとシルフィアは言い合いを続ける。
その様子をログスとララファは、呆れてみていた。
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