一歩前進

 エルは泣いていた。


 ”おい、エル! お前は子供か?”

(う……違う……だけど、分からない。なんで、こんなに涙が出てくるのか)

 ”うむ、今まで溜まっていた分だろうな”


 そう言われエルは、今までのことを思い返してみる。


(自分では気づかなかったけど。結構、泣きたいのを我慢してたのか)

 ”そのようだな。それで、どうするんだ?”

(眷属のことか?)


 そう言いエルは、半目でログスとララファを見据えた。


 ”それ以外、何がある?”

(そうだな。眷属か……恐らく二人は、駄目だって言っても眷属になりたいって言うだろう)

 ”ああ、そうだろうな。それで、エルはどうする?”


 そう問われエルは、微かに笑みを浮かべる。


(断る理由なんてない。二人がいいなら……眷属にする!!)

 ”前よりも決断できるようになったようだな”

(そうだな……泣いたら、なんかスッキリした)


 それを聞きグリモエステルスは、口に出さなかったが喜んでいた。


 ”じゃあ、儀式の準備をしろ”

(うん、その前に能力を使う)

 ”まだ必要か?”


 そう聞かれエルは考える。


(どうだろう……もう大丈夫だと思うけど、眷属の儀式の前に能力を解放した俺をみせたいんだ)

 ”なるほど、そういう事か……反応がみたいってことだな”

(ああ、そうだな……まだ不安はある)


 そう言いエルは、半目で地面の一点をみつめた。


 ”まあいいだろう……その方がやり易いのであればな”


 そう言われエルは頷きログスとララファをみる。そして涙を拭った。


「……ごめん。こんなところをみせて」

「エル……驚いたけど、それは今まで我慢してた分だよね」


 シルフィアはそう言い優しく微笑む。


「俺も驚いた……でも、なんか逆に安心したかな。エルは強いけど、俺たちとそんなに違わないんだって」

「うん、そうだね。今までは、もっと上の存在に思えたけど……距離が近づけた気がする」


 そう言いログスとララファは、ニコッと笑った。


「ありがとう……。そうだな、それで……再確認する。ログスにララファ、本当に俺の眷属になってくれるんだな?」


 それを聞き二人は、真剣な表情になり頷く。


「勿論、なりたいです」

「はい、アタシも眷属になりたい」

「そうか……じゃあ、儀式をする。その前に、俺は能力を解放してからだ……二人にみせておいた方がいいしな」


 それを聞きシルフィアは首を傾げる。


「エル、能力を使わなくても儀式はできるわよね?」

「そうだけど、今も言った通り二人にもみせた方がいいと思った」

「それだけ? それとも、まだ不安なのかな」


 そう問われエルは一瞬言葉に詰まった。


「…………そうだな。それもある……」

「そっか。そうだね……エルがそうしたいなら、それでいいと思うよ」

「シルフィア。それなら、なんで聞いたんだ?」


 エルは不思議に思い首を傾げる。


「んー……ただ、確認したかっただけよ」


 そう言うとシルフィアは、ニコッと笑った。


「そうか……」


 エルは口角を上げ微かに笑みを浮かべる。

 その後エルは、ログスとララファに儀式の方法を教えた。

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