ダバイの町の【ミライゼル冒険者ギルド商会】……5

 受付嬢が戻ってくるまでの間、エルはログスとララファと話をしていた。


「改めて、自己紹介します。俺は、ログス・ゼルヴィ」

「えっと……アタシは、ララファ・アルシェです」

「ああ、自己紹介か。まあ、問題ないだろう。俺は……エル・ラルギエ」


 一瞬エルは躊躇う。だが、問題ないだろうと思い名乗る。


「お待たせしました。自己紹介ですか……」


 その声を聞きエルはカウンターの方を向いた。


「そうでした。私もしませんと……。改めまして、ラルギエ様の担当をさせて頂きます……カルシャ・シェルムです。よろしくお願いしますね」

「あ、よろしくお願いします。それと、エルでいいです」


 そう言いエルは、照れ顔で軽く頭を下げる。明らかに、二人に対する反応とは違う。

 その様子をみたログスとララファは、ジト目でエルをみた。


「はい、承知しました。それでは依頼書の方を作成させて頂きます。この書類に、必要事項を書き込んでください」


 そう言いながらカルシャは、ログスに書類を渡す。

 ログスはその書類をカウンターの上に置くと、ララファと話し合いながら書き込んでいった。

 エルはそれをみずにカウンターに背を向け寄りかかる。そして、周囲を見渡した。


(これでいい。下手に仲間を作りたくないしな。この先、何があるか分からないし)


 そう思い「ふぅ~」っと、一息吐く。


(種族かぁ。ここにくるまでの間に、色んな種族の人たちに会った。ハイエルフ、獣人、竜人、ハーフエルフ、エルフ、ドワーフ……他にも居たけど。

 一番、猫族には驚いたなぁ。それに、喋る動物かと思ったし。もしかしたらこの世界にはまだ知らない種族がいるかもって……その時、思った。

 そういえば、人間の中にも種族ってあることも知ったしな。それも踏まえ、この町でも何か分かればいいけど)


 そうこうエルは、思考を巡らせる。すると、カルシャに呼ばれた。


「エル様、ログスとララファの依頼は無事に受理されました。あとは、この依頼を受けて頂くだけです」


 そう言いながらカルシャは、依頼書をエルの目の前に置く。


「分かりました」


 エルはそう言い依頼書の内容を確認し始める。


「ねぇ、カルシャさん。今の話、聞こえて来たんだけど。その依頼って、私も受けられるのかな?」


 そう言いながら猫耳の獣人の女性が、エルのそばまできた。


 この女性は、シルフィア・ニャルミャ。年齢不詳だが、見た目だけなら十代だ。

 派手さはないが、シンプルに可愛い。特にオレンジの髪色……ツインテールと猫耳。それらが、より一層……その可愛さを引き立てている。


「それは、構いませんが。ただ、依頼人の二人とエル様に聞いてからになります。それに依頼料の方も高くはありませんよ」

「構いません。今の話を聞いてて、私も手伝えることないかなぁと思ったので」


 そう言いながらシルフィアは、ログスとララファとエルを順にみた。

 エルはシルフィアをみるなり顔を赤らめる。反応が、明らかにカルシャの時と違う。


「お、俺は構わない。ただこの二人が、良いならだけどな」

「シルフィアさん、いいんですか!」

「俺、凄く嬉しいです。シルフィアさん、依頼の方は勿論オッケイですよ」


 それを聞きシルフィアは、ニコリと笑った。


「良かったぁ。よろしくお願いしますね」

「よ、よろしく……な」


 エルはそう言われ、照れながら挨拶をする。


(二人は知ってるみたいだから、大丈夫だな。依頼料は、半分の五千グベルになったけど問題ない。

 それにしても……猫耳、可愛い。触ったら、流石に怒られるだろうなぁ)


 その後、エルは依頼書にサインをする。

 シルフィアも依頼書にサインをした。


「では、これで完了です。あとのことは、依頼人の二人から聞いてくださいませ」


 それを聞きエルとシルフィアは頷く。

 その後エルは、シルフィアとログスとララファと共にギルドをでる。

 そして四人は、別の場所へと向かったのだった。

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