ダバイの町の【ミライゼル冒険者ギルド商会】……4

 ログスは理由を話し始めた。


「……以前オレの兄貴が、あの迷宮の依頼を受けたあと帰ってこなくなった。いや、兄貴だけじゃなくララファの兄貴もらしい」

「なるほどな。二人は同じ目的ってこと、か」

「うん、お願い……兄を探したいの」


 そう言いララファは、エルをみつめ目を潤ませながら訴えかける。


「悪い、な……やっぱり、お前たちとは組めない」


 そう言いエルは二人から目線を逸らしカウンターの方へ向けた。


「待ってくれ、なんで駄目なんだ?」

「なぜ駄目か、か。そんなのは簡単だ。俺はお前たちのことをしらない。それに、なんで見ず知らずのヤツの兄弟を一緒に探してやる必要がある? でも、これが依頼なら別だけどな」

「依頼、ならか。でも……」


 ログスは返す言葉がみつからず俯く。


「でも、自分たちで探したい……そうだろうな。俺も、同じ立場だったらそうする。だけど、自分が強くなってからだ。そうじゃないと、仲間の足を引っ張ることになる」

「確かに、そうかもしれない。だけど早く探さないと……」


 そう言いながらログスは涙ぐむ。話を聞いていたララファも目を潤ませる。


「それなら、依頼した方がいい。そうだなぁ……」


 エルは受付嬢の方に視線を向けた。


「例えばですが。二人の護衛の依頼を受けるとして、それもパーティーじゃないと駄目なんですか?」

「いいえ、それなら大丈夫だと思いますよ」

「そういう事らしい。どうする? 依頼としてなら引き受けてもいい」


 それを聞きログスとララファは悩み始める。


「依頼か……払える金がなぁ」

「そうだね。どうしよう……でも、兄を探したい」

「依頼料なら、いくらでもいい。依頼人のお前たちに任せる。まぁ、ゼロなら受けないけどな」


 そう言われ二人は見合い頷いた。


「護衛の依頼をする。だから、頼む一緒に探すのを手伝ってくれ」


 ログスは深々と頭を下げる。


「アタシからもお願いします」


 そう言いララファも頭を下げた。


 ――ゴンッ!!――


 ……勢いよく頭を下げたため、ララファはカウンターに額をぶつける。


「ツウ……イタタタタ……。またやらかしちゃった……テヘッ」


 それをみたエルの顔が緩む。


「ワハハハハ……って、ごめん。でも……駄目だおかしくて……耐えられない。それに、こんなに笑ったの何ヶ月ぶりだろう」

「ちょ、そんなに笑わないでください。アタシ、痛いんですけど」


 そう言いながら額をさすった。

 そう言われエルは再び謝る。その後、エルは考えたあと口を開いた。


「そうなると……依頼を受けるにしても、受付を通してからだな」

「そうですね。正式の依頼は、それからになります」

「……という訳だけど、どうするんだ?」


 そう言いエルは、ログスとララファの方をみる。


「どうするもこうするも。勿論、依頼します!」

「アタシも、ログスと一緒に依頼しようと思います」

「って、言ってますけど」


 再びエルは受付嬢の方をみた。


「は、はい。それでは、依頼申請の方をさせて頂きます。只今、必要な書類を持ってきますのでお待ちくださいませ」


 そう言うと受付嬢はカウンターの奥へ向かう。

 それを視認したエルは、二人の方を向く。

 その後エルは、受付嬢が戻ってくるまでの間、ログスとララファと話していたのだった。

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