ダバイの町の【ミライゼル冒険者ギルド商会】……3

 エルはカウンターに寄りかかりながら、色々と考えていた。すると緑髪の男性と紅梅色の髪の女性が、エルのそばに歩み寄ってくる。


「おい、お前……一人なのか?」


 その男性はエルにそう話しかけた。


「はい、そうですけど」

「よかったぁ。ねぇ、アタシ達のパーティーに入らない?」

「勧誘ですか。それなら、お断りします」


 それを聞き女性の方は、ガッカリする。

 だが男性の方は諦めきれない。


「一人より、人数いた方が良いと思わないか?」

「別に思いません。それに、あなた達と組んで……俺になんのメリットがあるんですか?」

「メリットか、それならあるだろう。パーティー限定の依頼が受けられる」


 そう言われエルは溜息をついた。


「ハァー、そんなことですか。それならば返事は変わらず、ノーです」

「待ってくれ!? 頼む! パーティーに最低でも、あと一人いないと依頼が受けられないんだ。それに俺は、槍と簡単な魔法しか使えない」

「アタシは、回復と補助系の魔法しかできないし。あはは……」


 それを聞きエルは不思議に思い二人を順にみる。


「二人がやろうとしてる依頼って、そんなに難しいのか?」

「ああ、三人以上のパーティー。それに、一人でもブルーストーンランクの者がいないと受けられない」

「なるほど……だけど、なんでその依頼を受けたいんだ?」


 そうエルが聞くと二人は悲しい表情になった。


「ログスとララファが受けたい依頼は、ダグル迷宮の地下第二階層の探索です」


 カウンターの後ろで声がしエルは振り返る。


 そう受付嬢は戻って来ていた。そして、エル達の話が終わるのを待っていたのである。


「ただの探索ですか?」

「いいえ普通の探索とは異なり、まだ未知とされている場所の調査になります」

「なるほど……そこは、かなり危険なんですか?」


 そう問いかけると受付嬢は難しい表情をした。


「危険と言えばそうなのですが。未知すぎて、当たりハズレがあるのです」

「そういう事か。ハズレを引けば、危険を伴う。それだと、並の冒険者では依頼を熟せない」

「ええ、以前になりますが……行方不明者が多数でました」


 そう言い受付嬢は、今にも泣き出しそうだ。


「それで……まだ地図にない場所は、上位クラスのパーティーで探索するって訳ですね」

「そうなります。それに、どんな仕掛けや魔物が居るのか分かりません。そういう訳で、パーティーにブルーストーン以上の者が一人も居ないとこの類の依頼は無理なのです」

「だろうな。だけど……どうしてこの二人は、そんな危険を冒してまでこの依頼を受けたいんだ?」


 そうエルが問うと、ログスとララファの二人は俯いた。


「それは……」


 そう言いログスは、重い口を開き理由を話し始める……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る