プロローグ……3

 ここはサリドデの町とブブガス村を繋ぐ道沿い。

 この道を通る者は、主に村の者ぐらいだ。そのため人通りがないに等しい。


(んー、探求者のことも気になるけど……。それより、どうしても……あの【グリモエステルス】のことが頭から離れない。

 危険かぁ……そう言われると、流石に俺なんかが使いこなせる訳ないよなぁ)


 そうこう考えながら村に向かい歩いている。


(そういえば……カルネアさんは、なんで【探求者】について話してくれたんだ? んー考えても分からない……まぁいいかぁ)


 そう思うも考えが及ばなかった。その後も色々と考えながら村の近くまで来たその時。


「えっ!?」


 目の前で起きている光景をみて驚き立ちどまる。

 そう村から火の手が上がっていたからだ。


(これって……どうみても、普通の火事じゃない)


 エルは村へと駆け出した。


(急がないと……母さん、村のみんな……無事でいてくれ)


 そう思いながら急ぎ向かう。




 村の入口までくるとエルは、呆然とし動けずにいた。

 そう辺りには、数人の男が血を流し倒れている。それだけではない……。


(どうなってるんだ。いったい何が……。火事になっている家は数ヶ所。とりあえず、家に向かいながら……)


 そう思い家がある奥の方へ視線を向けた。


「……!?」


 驚きエルは駆け出す。


(家が……母さん……)


 そうエルの家の方角からも、火の手が上がっていたのだ。

 必死で走り家に向かう。足元に見知った顔の人たちが血を流し倒れている。

 一瞬だけ立ちどまろうとするも「ごめんなさい」と言い、自分の家に向かった。

 エルは涙を拭いながら家の前までくる。そして、火の気がない場所を探し家の中に入った。

 家の中を探し歩く。天井が崩れ火のついた木材が、目の前に落ちる。ギリギリそれを避けた。


「フゥー、危ない危ない。多分、炊事場の方にいると思うんだけど」


 エルは奥の炊事場へと向かう。


「ここも駄目だ。違う所から炊事場に入るしかないか」


 落ちてくる木材などを避けながら、入れそうな所を探し進む。

 だが、中々みつからない。火の勢いが強くなってくる。


(このままじゃ……。母さん、無事でいてくれ)


 そう願いエルは、ひたすら炊事場に入れる場所を探した。


「あっ、あった! だけど、早くしないとここも……」


 そう言いその出入口から炊事場に向かう。無事でいてくれと母親を思い進む。

 炊事場まで来たエルは、母親を探した。


「母さん、どこ?」


 大声でそう問うも返事がない。落ちてくる木材や火を避けながら一歩ずつ進んだ。

 流し場の前に倒れている人影をみつける。エルは駆け出した。

 そこまでくるとエルは、ガクッと肩を落とし膝をつく。

 そうそこには、エルの母親のマルセが血を流し息絶えていたのだ。


「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ――」


 エルは泣き叫んだ。なんで母さんがこんな目に遭わなければいけないのかと。そして村のみんなも、殺されなければいけなかったのかと思う。

 しばらく泣いていたが、涙を拭った。


(いつまでも……ここで泣いていられない。つらいけど……母さんを、このままここに置き去りにする訳には……。

 それにもしかしたら生存者が居るかも。ここでこうしている間にも、その確率が減る)


 その後エルは、マルセをこのままにして置けないと思い抱きかかえる。

 家の外に出るとエルは、村の奥の火の気のない場所まで行きマルセを降ろした。


「母さん、ここで待ってて。誰か生きているかもしれないからみてくる」


 そう言い軽く頭を下げるとこの場を離れる。

 そしてエルは、生存者が居ないかと探し駆けずり回ったのだった。

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