第4話テストの神様

7月のはじめに、期末考査が行われた。悠は毎晩1時まで机の前に座り、紙切れ1枚に身を託す。

この先、何度テストが待っているのだろうか?

努力したものだけが、結果を残す。天才的な生徒なんて、この高校にはいない。

悠は瞬間記憶能力の持ち主になりたがったが、残念ながら凡人。努力するしか仕方ないのだ。

高校は普通科のみだから、進学を目指す生徒の集まり。

周りは全員敵である。1学年5クラスある生徒の中で、悠の順位は30位ほど。

まだまだ、努力しなければならなかった。

古典のテストが終わると、次は化学のテスト。

1日に3教科ずつテストが行われ、テスト期間は部活は中止。

午前中に帰り、翌日のテストに備えるのだ。

悠がバス停のベンチに座り、英単語帳を開いて、ブツブツ念仏の様に単語を使った英文を読んでいると、手元にカフェオレを差し出す者がいた。

ひなただった。ひなたは学年の順位は10位以内に入る実力者。

「あ、ありがとう」

「頑張ってるね」

「うん。今回の期末考査の順位を上げたいからね」

「私、古典は自信ない。佐々木君は国語は強いよね。いいなぁ〜」

悠はカフェオレのパックにストローを刺して、飲みかけようとしたが、

「僕より、全然、成績いいじゃん」

「帰宅部だから、長く勉強出来るから」

「毎日、何時間勉強するの?」

「……9時間くらい」

ひなたはいちごミルクを飲んでいた。

「9時間で、あんな成績取るのか〜」

「佐々木君は部活があるしね」 

「いや、それでも6時間はあるから、勉強してるんだけど、妹の部屋がうるさくて集中出来ない日もあるんだ」

ようやく、カフェオレを飲み始めた。梅雨の終わりはまだ、2週間後だがやけに暑くて、冷たい飲み物はありがたかった。


あっと言う間に、期末考査は終了した。

3日目のテスト終わり、部活をサボった悠とひなたは、マクドナルドに立ち寄る。

食べ盛りの高校生だから、悠はビッグマックセットを注文して、ひなたはダブルチーズセットを注文した。

これから、晩ごはんが食べられるのか心配なボリュームだが、2人は色んな話をしながらまたたく間に食べてしまった。

「ねぇ、ひなた」

「何?」

「この前話していた、彼氏候補って誰?」

と、悠は野暮な質問をした。

ひなたは、伏し目勝ちに、

「……それは」

「それは?」

「まだ、言えない」

「ま、ひなたの事だからイケメンしか釣り合わないとか思ってる?」

「……酷い、偏見だね」

「ごめんなさい」

「今日中に教えてあげる」

「分かった分かった、質問した僕が馬鹿だった」

悠は腕時計を見た。6時を周っていた。

夏の6時はまだ、明るい。明るい内にひなたを帰さなきゃ心配だ。

テストも終わったし、腹いっぱいだし、悠とひなたは並んで、バス停に向かった。

その時だ!

悠の左側を歩いているひなたが、彼の左手を握った。

悠はドキリとしたが、ひなたはにこやかに、

「私の彼氏候補は、佐々木君」 

と、言った。

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