第8話
一陣の風が廊下を吹き抜けていく。莉亜の温かさに私は目を瞑り、葉が揺れて擦れる音に耳を澄ませる。
「……私、菜緒に出会えて、友達になれてよかったなぁ」
私を抱きしめる腕に、より力が入る。たった今、「約束」は果たされた。私は、誰かにとってのいい出会いになれた。でも、これが終わりじゃない。これからも私はこの言葉と共に生きていく。今はその道の途中に過ぎない。道標を糧に私はどこまで行けるのだろうか。
「私もだよ」
ふと眩しさを感じ、見上げると、薄墨色をした雲の切れ間から傾き始めた日差しが差し込む。同時に、空が再び輝き出す。視線を地面に移すと、影で塗りつぶされていた草花、アスファルト、土や砂の全てが、キラキラと照らされている。莉亜の腕の中から顔を出している私も、その暖かな光を浴びた。
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