第32話 王子の提案③

「お、お前、何言ってんだよ! お前が秘密にしたほうがいいって言ってたじゃん!」


 エリックが早くも俺のことをばらし始めたので、俺は取り乱していた。そしてチラッとチャーデオさんの方を見ると何かオーラ?的なものが幻視出来てしまった。

 

 いや絶対やばいよね? いかにもって人に俺、睨まれるし〜


 俺はいきなり生命の危機を感じてパニックになっていた。


「本当にこいつがゲートから出て来たのか?」


 慌てる俺と対照的に静かながらも何か醸し出しているチャーデオさんはエリックに確認をとった。


「実際にで出てくるところは見てはいませんが、彼の話を聞くに僕たちが感知したゲートから来たと考えていいと思います」


 エリックもチャーデオさんに気圧されたのか、少し緊張しているようだった。


「お前、名前は?」


「水方春人と申します」


 俺はチャーデオさんに少しビビりながらも背を伸ばしてはっきりとした声で言った。


「で、お前は本当にゲートから来たのか?」


「ゲートというものは、よ、よく知りませんがエリック様の話を聞くには俺はゲートでこの世界に来たと思います」


 咄嗟の敬語だったので、あってるかは分からなかったができる限り正確に丁寧に答えるように努めた。


「お前の目的は?」


 そう聞かれたが、エリックにも言ったことだが俺は嵌められてここに来てしまっていて、今知ってることに方が少ないのに〜とか思っているが、そんなことを言う雰囲気じゃないので俺はこの世界に来るまでの経緯を話した。







 二回目ってこともあり、だいぶ上手く簡潔に説明ができたと自己満足に至っていたがチャーデオさんの表情が変わることはなかった。


「で、エリック。こいつの話を信じるのか?」


「はい。少なくても僕たちに悪意を持つどころか。僕に感謝の念を感じますので」


「なら、俺からも特別言うことはないがこれは俺が扱うにしては大きすぎるな。ドミニク様案件だぞ! 全くここ最近はヤンチャしまくって」


 そう言って、チャーデオさんは嬉しそうに笑っていた。チャーデオさんもエリックの能力のことは知っているようで、俺に対する目つきも柔らかくなった。


「すまんな。威嚇しちまって」


「いえ、エリックの身分も考えれば仕方ないと思うので」


「とは言っても、お前はまだ分からないことがあるから警戒はさせてもらう。まあ、取り越し苦労になりそうだが」


 そう言ってチャーデオさんは俺の肩を叩いてきた。ムキムキの腕の見た目からして、とても痛かった。


「とりあえずは、風呂でも入るか。お前たちもスッキリしたいところだろ?」







 チャーデオさんに促され、俺たちは風呂に入ることにした。風呂と言ってもちょっとした大浴場で俺とエリック、そしてなぜかチャーデオさんまで入ることになった。


「ふぅ〜」


 正直、風呂に入れてもらえてすごく嬉しかった。昨日は森で一晩過ごして、今日の午前中は歩き回っていたせいか、汗がベタついてすごく気持ち悪かった。

 ここの風呂は旅館みたいな感じで、何気なく使っていたがシャワーがあったのが遅れて驚いた。でもシャンプーやリンスはなく石鹸一つで髪や体を洗うことになったが、多少髪がガビガビになった感じはあるが、石鹸自体いい匂いがして特に不満はなかった。


「どうだ? うちの風呂は」


 そう言ってチャーデオさんは俺の近くにやって来た。エリックはまだ体を洗ってるみたいで浴槽には俺とチャーデオさんしかいない。


「昨日は、風呂に入れなかったのですごくさっぱりしました。とても気持ちいいです」


「そうか。最近では髪を洗うためのものが出来たらしいが、まだ取り寄せてなくてな。なんだって俺にかみがないからな!」


「あ、いやどうなんでしょうね……」


 チャーデオさんが少しボケてくれたのだが、俺は上手く反応することが出来なくて不自然な笑顔になっていた。


「ふ〜、緊張するなって言っても無理だろう。急に生活が変われば、誰しも戸惑う。それも他人によって勝手にならなおさらだ」


 チャーデオさんはお湯を何度か顔にかけながら言った。


「確かにそうかもしれません。でも、この世界に来てエリックと会って、エリックに親切にされたことは変わりません。それこそ最初は不安や恐怖でいっぱいでしたけど、エリックと出会ってから、結構楽になりましたよ」


 俺はチャーデオさんにエリックに感謝していることを伝えた。実際に感謝しえるし、エリックがいなければ俺は死んでいたかもしれないのでこの気持ちは嘘じゃない、そう念じてチャーデオさんを見た。


「カラリヤに来て、屋台に釘付けだったもんね」


 そう言って体を洗い終わったエリックがやって来た。


「エリック、お前と最後会った時は7年前、つまり7歳の時か。その時のお前は他人を怖がって心配だった。でも3年前からヤンチャするようになって、今回は異世界人と来た。なかなか面白いことしてるな」


 チャーデオさんは懐かしむようにエリックのことを語り出し、最後は笑っていた。


「だからこそ、ハルト。お前にはエリックと友達でいてほしい。こいつには誰か抑えるやつが必要だしな」


 そう言い残すとチャーデオさんは浴槽から上がり、脱衣所に向かって歩いて行った。


「もっとゆっくりしていけばいいじゃないですか?」


「ばかやろう。お前のせいでゲートの調査が終わっちまったんだ。仕事が増える」


 そう言ってチャーデオさんは脱衣所に入って行った。


「仕事を減らしたつもりだと思ったんだけどね〜」


「いや、王子がやったことに問題があるんじゃ? そして増えた仕事は俺のことだと思うけど?」


「概ねそうだと思う」


 チャーデオさんがいなくなったので少し俺は緊張がほぐれ、少しのぼせたので足湯することにした。


「やっぱり緊張した?」


「そりゃ、するわ。誰もがお前みたいに楽観的じゃないんだ。むしろ大人の方が敏感にもなるだろうし」


「でも最終的には、少しは認めてくれていたよね」


「それはお前のことを信用してるからじゃない?」


「そう、俺のおかげだ」


「顔をクシャってしやがって」


「で、なんであの人に言ったの?」


 俺がは今一度エリックが何を考えているかを聞き出すことにした。


「そりゃあ、このミルコ州で一番偉い人だからだよ」


 質問には答えてるが、確信的なことは言ってない。俺の質問も悪いかもしれないが


「この地の領主的な感じか? そしてお前はどこまでの人に俺の事を言うつもりなんだ?」


 そしてエリックは顔をクシャっとして計画を話し始めた。

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