第27話 第3王子①
焚き火のような音に誘われて俺は夜の森の中を歩いていた。普通なら夜が明けるまで待ってから移動したほうが良いが、それでも何かあれば、誰かに会えれば、そんな気持ちに縋るように足を前に出していた。
「はあ、はあ、結構歩いたな。時計が壊れちゃってわからないけど多分1時間以上は歩いているはずだ」
そう言って、俺は近くにあった木にもたれ掛かって地面に座った。そして休憩がてらに俺は少しでも自分の状況を知ろうと木を観察した。
「ふ〜、やっぱりこの木も魔樹か。実際ここまでで普通の木は見てないから、ここは日本でないのは間違いないだろう。てかそもそもこのような規模の魔樹の森なんて、地球にはないってされているはずだけど……」
俺は父さんに魔道具の話をされてから自分でも魔道具を調べていた。現在の魔道具は鉄や木など様々なもので作られているが、その中でも特に希少だったのが魔樹の木だった。魔樹というのはブナ科とか、広葉樹林とかに分類されているわけでなく、突然変異とされている。唯一の共通点は木の年齢、つまり樹齢が300年以上の木であることだけだ。
だからこそ、この森の魔樹はおかしいのだ。木が小さすぎるって点で……
「さて考えるのはここまでだ。とにかく動かないと状況は変わらないし」
そう言って俺は立ち上がり音のする方へ歩き出した。
「音が強くなってきたな。このまま……あれ? 光?」
俺はそれが焚火による光だと思い、無我夢中でその光の下に走った。それにつれて音も大きくなるので、俺はさらにいっそう足を動かしその場所に向かった。
人がいた……俺が目指していた場所に人がいたんだ! 俺は人生でこんなに人に会えたことがうれしいことはなかった。
しかしうれしさと同時に俺はそのひとを疑う心があった。幸い向こうは気づいてない様子なので、魔道具を疑いながらその人に近づいた。
「そこにいるのは分かっているよ。これでも少しは魔法ができるんだ」
俺はとても驚いた。なぜならその人は赤髪をしていて顔は見えないが明らかに日本人に見えなかったのに関わらず日本語をしゃべったこと、それに俺に気づいたことだ。
俺は素人ながらも音を立てないで近づいたのだがその人はこっちを見ないで俺に気づいた。
「なんでそこで止まってるのさ? ここには俺しかいないし、あなたを倒せるほど強くない。だから最後にあなたと少し話してみたいんだ! 噂の魔人って人にね」
そう言ってその人は、いやそいつは俺のほうに顔を向け俺に話しかけてきた。
「以外に若いですね。もしかして魔人の子供とかですか? あとあと、どこから来たんですか? 魔法見せてください。その手に持っているのは何ですか? その服、制服っぽいですね……」
そいつは俺に向けてマシンガンか!って突っ込みたくなるほどに話しかけてすごく困った。でもその様子からは悪いやつにはみえなかった。信じてもいいか迷っていたがあまりにもしつこいので俺は声をあげた。
「髪は黒色ですが、これは魔人の中では普通なんですか? てか……」
「ちょっと待て!」
するとそいつは素直に黙ったが、なにか気づいたようにまた口を開いた。
「そうですね! 先に俺の扱いを決めないとですね! 俺的には100個ぐらいの質問を答えてくれれば、悔いはないですね」
そう言ってそいつは親指を立てて満面の笑みを浮かべていた。
「いや、違う。すこしは俺の話を聞いてくれ! それにお前の話も聞かせてくれ」
「ぜひぜひ、こっちの椅子に座ってください」
そして俺はそいつ……赤髪のイケメンの前に携帯用の木でできた椅子に座った。
「まずは自己紹介をしないか? 俺は
13歳、中学生だ。あ~あと東京に住んでいる」
俺が自己紹介を終わらせるとこのイケメンは何か考えている様子……ってかこいつおれが今まで見た中で一番イケメンだな。俺も守備範囲が広い女子からイケメンと言われると思うがこいつは誰もがイケメンと言えるぐらい顔が整っていた。
そして俺がこいつが菊池と少し似てるなと思っていたいたら、イケメンがやっとしゃべり始めた。さっきまでペチャクチャしてたのに。
「すまない。少し考え事を。改めまして、俺はホンラード王国第3王子のエリック・ホンラードだ」
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