第23話 林間学校⑪

 いつの間にか、俺たちは話しているうちに目的の場所についていた。話と言っても、一方的に菊池が厨二らしきことを言って、俺たちが頭を抱えただけだったが。


「魔法と環境における因果関係だっけ? 春人もマイナーなところをつくよな」


 菊池が先ほどとは打って変わっては話し始めた。


「ああ、俺の体質に関して個人的に調べたんだけど、やっぱり世界中に俺みたいな人は一定数いるんだ。でも調べてわかったことにある地域において俺みたいな体質を持つ人が多いんだ」


「その地域って?」


 俺のもったいぶる言い方に山口が反応した。


「アフリカだよ。でもそれ以上にわかったことはないからここで聞けないかと思って」


 俺はそういうと目的地である環境調整室のドアの前に立ち、ノックすると中から反応があったので入ることにした。


「何かわかるといいね」


「わからなくても、参考になることは聞けるんじゃね?」


「そのためにも、中に入ろう!」


 そう言って俺たちは、ドアに入った。







 部屋の中はラジオ番組で使われるスタジオみたいだった。俺たちがいる部屋はラジオで言うところのスタッフがいるところで、奥の部屋はこちらかガラス越しに見える。奥の部屋はラジオで言うところの芸人が喋るブースみたいなところだが、大きさがまるで違った。奥の部屋は、直線で50メートル走ができそうなくらい広くそれでいて真っ白な部屋だから感覚が狂いそうだった。


 俺たちが周りをキョロキョロしていると、さっきの声の人が話しかけてきた。その人は白衣を着ていて、研究者にして小綺麗だった。


「で、君たち何の用?」


 無愛想に俺たち……いや若干俺の方を向きながら近づいてきた。


「こんにちは、今日ここで魔法と環境の因果関係についての話を聞きにきました。第3中学校の水方春人です」


「同じく、山口太郎です」


「菊池悠真です」


 俺が率先して自己紹介を言い、その後二人も自己紹介を終えた。


 しかし、自己紹介が終わったのにも関わらず何も喋らなかった。その時間に俺は白衣から小お人の名前を知ることができた。名前はとても珍しい苗字で、白撫しろなでさんと言うらしい。そして白衣から何も情報が得られなく始めた頃にその白撫さんは口を開いた。


「うん、覚えた。ごめんね〜僕って人の顔を覚えるのが苦手でさ。時間がかかちゃった。で、君たちは僕の研究に関して興味があるんだっけ?」


「はい、そうです」


「そうか、じゃあそこの席に座っていいよ。でも機械には触らないでね」


 そう言われて俺と山口は座ろうとするが、菊池がそれを止めて俺たちに小声で話しかけた。


「何?」


「なんかここ、やばい感じがする。ここから出たほうがいい!」


 急に何言ってるんだ(?)と思ったが、菊池は少し体が震えていて呼吸が荒くなっていた。


「やばいって何さ? それとも寒いのか? 具合が悪いようならいますぐ先生の所に戻ってみてもらったほうがいい。そのために保険の先生もきているし」


「ごめん、俺、この部屋に入ってからちょっと具合悪くなったかもしれない」


 そう言われたので、俺は急いで先生の所に戻ろうと考えるが、山口が待ったをかけた。


「すみませんが、白撫さん勝手なんですが、お暇させてもらいます」


「いや、春人だけでも話を聞いてもらったら? 菊池の付き添いなら僕がするから、菊池もそれでいいかな?」


「ああ、別に一人でも構わないけどいてくれたほうが、楽かも。でもまだ時間あるから、話聞いてこいよ」


「そこまで言ってくれるなら、俺はここに残ろうかな。いいですか、白撫さん」


「もちろんいいですよ」


 白撫さんが微笑みながらそう言ってくれたので、俺は一人で話を聞くことにした。







「さっきは俺の友達が変なこと言ってすみません。ちょっとあいつ厨二入ってるんです」


そう言って俺は白撫さんに謝ったが、白撫さんは特に気にした様子もなく機械をいじり始めていた。


「何してるんですか?」


「いや、さっき君が時計を見ていたから、あまり時間がないと思ってね。急いでこれが使えるようにしてるんだ」


「これって、もしかして環境を人工的に作るやつですか?」


「そうだよ、せっかくなら体験していきなよ。質問の応答は片手間になっちゃうけど」


「なら体験させてもらいます。早速ですが、僕は特殊な魔法体質で体外魔法を自力で使うことができません。 なので僕は僕なりに調べた結果、アフリカには俺と同じような体質の人が多いとわかりました。それについて何か教えていただけたらと」


 そう言うと俺は白撫さんに案内されて、奥の真っ白な部屋に連れてこられた。


「うん、大体分かったよ。君が知りたいのは君の体質と環境の関係性のことだね」


「はい、そうです」


 俺がそう答えると、白撫さんは真っ白な部屋から出て、何やら機械をいじっていた。


「質問で質問を返すようだけど、なぜ君はそれを知りたいのかな?」


「え?」


 白撫さんも時間がないことなんて分かっていると思うのに、なぜか俺に質問をぶつけてきた。俺は思ってもいないかったから少し反応が遅れたが、素直に答えることにした。


「それは、僕が魔法を使えるようなるためです。それに俺が魔法が使えることがわかれば、同じ悩みを持つ人たちにも希望が持てると思うからです。少し大袈裟ですけど……」


「もしそれができれば君は、英雄となれるね」


「え、英雄って……」


 唐突な褒め言葉に俺は少し嬉しくなった。でもその後に白撫さんから出た言葉は、褒め言葉とは真逆のことだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る