第22話 林間学校⑩
魔法を撃ちまくって満足した俺は、次の予定にあった魔法と環境との関係を調べるところに行くために佐藤さんに別れの挨拶をしていた。
「佐藤さん、ありがとうございました。ここでの経験は一生忘れないと思います」
「その場の成り行きでこうなりましたが、僕にとってもいい経験になりました。ありがとうございました」
「俺もかっこいい魔道具が使えてよかったです。大人になったら必ず買います」
俺たちはそれぞれ思いを口にして、佐藤さんにお礼を言った。
「こちらこそありがとう。こちらもいい経験になったよ。今度会うときは菊池君にはもっとかっこいい魔道具を、山口君とはもっと話したいよ」
佐藤さんは二人に言葉を送ったあと、俺の手にある魔道具に視線をやり、そして俺の目に視線を動かした。
「そして最後に春人君、君にはそれよりも良い魔道具を。それになぜだか君たちとはまた会うと俺の直感が囁いている。いつになるかはわからないけど成長した君たちを楽しみにしているよ」
「楽しみにしててください。そん時は腰を抜かさないでくださいね」
菊池が最後にそう言って、俺たちは佐藤さんに見送られながら部屋を後にした。
俺たちは次の場所に行くまでに少し雑談をしていた。
「さっきさ、佐藤さんが俺たちにいつか会うって言っていたけど、春人とはその魔道具のデータの報告しないとダメだからさ、すぐに会うことになるよな」
「た、確かにそうだね。あの時は僕たちみんなが別れを惜しむ感じだったから気づかなかったよ」
そう言って菊池は笑っていた。
「話変わるけど春人、さっき体内魔法使っていた?」
山口に指摘されて、俺は今になってやっと気づいた。
「やべ、使ってなかったわ」
「やっぱりそうだよね。いくら自分でやるのは魔素を送るだけって言っても、魔道具が暴発するかもしれない危険があるからちゃんとしないとダメだよ」
「そうだよな、こんなこと魔法使いには当たり前なのに……」
「そう言えば、全然他のやつとは合わないな。俺としては貸切感が味わえていいんだけどさ」
菊池がいきなり俺たちの話をぶった斬って、違う話をし始めた。
「それは多分、ここの専属の魔法使いが直接魔法を教えてくれるのがあるからそれに人が集まっているからだと思うよ。うちのクラスでもほとんどがそれにいってるから……って菊池も春人と同じで体内魔法使ってなかったでしょ!」
山口は菊池の質問に答えながら、さっきのことで怒っていた。しかし菊池から発せられたのは衝撃の一言であった。
「正確には、肉体強化な。俺言ってなかったけど、実はDランク魔法使いなんだ」
「「……」」
俺たちは無言になった。
「なんだよ。もっと驚いてくれよ」
「いや、驚いてるけど想像できなくないっていうか……」
「ぶちゃっけ、お前ならかっこいいでそれぐらいやりそうだなと思っていたからな」
菊池はこんな感じだが、能力的にはあの秋人にも負けていない……ところが真面目にやれば勝っていると思う。こないだの定期テストでもクラス順位は秋人に続き2位で学年で3位だ。
他にも運動神経も抜群でいてさらに顔もイケメンという聞いてるだけには完璧なのだ。
しかし全てを無に帰しているのは、空気が読めないところと極度のおせっかいだと思う。クラスの女子からは黙っていればイケメンと呼ばれおり、中には「なんかあって喉潰れないかな〜」と過激な発言をしていた女子もいた。それぐらい勿体無いが似合う男なのだ。
「実はさ、最近、力を隠していた系の漫画読むようになってさ。それもかっこいいと思い始めたんだよ! 今までみたいに目立つのも悪くないけど、いざとなったら力を出すのが特別感があっていいんだよ」
そう熱弁する菊池だが、俺はそのような現象いや、病状を知っている。
これ、厨二病じゃないか?
まだ初期症状の段階だけど……今ならまだ間に合うか?
でも菊池のこの性格ならいずれ通る道なのかもしれない。
半端に魔法がある世界だからこそ、このようなことは多いと心理カウンセラーの人が言っていた気がする。
てかどうする、どうする?
このように思考にふけていた俺だが、ふと横にいる山口を見ると俺と同じく、悩んでいる様子だった。すると山口も俺の方を見て目が合うとお互いに同じことを考えていると感じ、二人して菊池のことで悩んだ。
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