第17話 林間学校⑤
1時間ほど谷さんに先導されて俺たちは施設内をちょっと早足気味に移動していた。もうちょっとゆっくりでも良いのではないかと思ったが時間のロスは、俺がパスを登録できないことにあったから口にはできなかった。
個人的に面白かったのは、魔法の力を使った発電方法で人間が火魔法を使って火を起こし、その熱で蒸気を発生させるシンプルながらの発電だ。また生み出した電気が魔法を補助するための魔道具に使われていてうまくいけば半永久機関になると開発担当の人が言っていた。
しかし現実はそう甘くなく、電気を送るための電線の電気抵抗や魔道具自体の耐久性など、エネルギーをロスするところがまだまだあるらしい。
谷さん曰くこの発明ができれば良いけど、根本的に魔法のことがいまだによくわかってないから魔法の基礎研究した方がいいと言っていた。だからか、この開発に携わっている人はロマン主義の人たちが多かった。
「ねえ、どこにいく?」
「俺は魔道具の開発のところと魔法の環境における状態の変化……がとりあえずは行きたいかな」
「まあ〜俺も魔法は好きだけど頭を使うのは苦手だから春人に任せるわ」
今の時間はすごいことに自由時間である。こんなところで学生が好きに移動していいのかと思うが、秋人パパのおかげだとこっそり秋人が言っていた。俺は班の山口と菊池と話し合って、俺が提案したところに決定した。
まず訪れたのは魔道具を開発する研究所だ。魔道具と言ってもその種類はたくさんあり、魔法使いの魔法をサポートするものだったり、魔法の強さなどを測定するものがある。
「「「こんにちは」」」
俺たちが研究所の部屋のドアをノックするが反応がないため、挨拶しながら勝手に開けた。
ドアを開け、俺たちの目の前に広がったのはとてつもない魔道具の数だった。中は広く綺麗ではなかったが、魔道具だけはとても丁寧に管理されていた。
俺たちが5分ぐらい勝手に魔道具を見ていたところに置くの部屋から細目の機嫌の悪そうな中年の男性職員らしき人が近づいてきた。俺たちはてっきり勝手に入ったことに怒られると思い、俺たちは部屋の中のドアの前に移動して背筋を伸ばして立った。
そんな俺たちに細めの男性職員が話しかけてきた。
「もしかして……今日見学に来ている中学生?」
質問されたので俺が代表として答えた。
「はい、東京の第3中学から来ました」
「あ〜東京支部の近くか」
「そうです」
思ったより怒っていない様子だったので、少し俺は緊張が解けた。
「俺は佐藤だ。すまないな、ちゃんと出迎えてやれなくて。研究が大詰めで寝不足だったんだ」
「こちらこそ、忙しい中わざわざありがとうございます」
「「ありがとうございます」」
佐藤さん謝罪に対してすぐに山口がお礼の言葉を言い、俺と菊池も後を追うようにお礼の言葉を言った。
「せっかく来てくれたんだ、俺が君たちを案内するよ」
「「「ありがとうございます」」」
「では早速質問いいですか?」
俺はこの部屋には言ってすぐに疑問になっていたことを佐藤さんに聞くことにした。
「いいぞ、でもあまり詳しいことまでは言えないかもしれない。ここはなんだって日本の技術の心臓と言ってもいいからなw」
「では質問なんですが、佐藤さん以外の職員はどこにいるんですか?」
「いきなり痛いところつくな〜」
佐藤さんは笑みを浮かべたまま喋っていたが、俺が質問すると少し苦笑いに変わった。
「もしかしてダメなやつですか? じゃあ別の……」
「いやダメなやつじゃないよ。俺以外にも職員はもちろんいるよ。ただ俺が今やってる研究に夢中になりすぎて、少し休め(!)ってことで部下に追い出されたところだw」
そう言って佐藤さんは手を上に伸ばして気持ちよさそうに言った。
「休まなくて大丈夫なんですか? 働きすぎは毒ですよ」
菊池が佐藤さんの話を聞いて、体を労わるように言った。
「大丈夫さ。さっきまで寝ていたし、何しろ俺は研究が好きなんだよ。君たちだって夢中になって夜更かししてしまうことはあるだろ?」
俺と山口はその言葉に納得して佐藤さんに理解できたが、菊池は思いの外、心身の健康に気遣っているらしく最後まで佐藤さんに体を休ませるべきだと言っていた。そんな佐藤さんは菊池に感謝しつつも少しめんどくさそうにしていた。
「じゃあ、早速だけど魔道具を使ってみるかい?」
そんな菊池の話を逸らすように佐藤さんはそう言った。
「え、いいんですか?」
意外にも1番に声を上げたのは菊池だった。
「お前って魔法好きなの?」
俺は菊池にシンパシーをちょっと抱きながら聞いた。
「いや、魔法が好きって言うよりかっこいいものが好きなんだよ。ビームとかロケットパンチとか、炎の槍的なもの全般がさ だからさ、俺はかっこいい人間になりたいし、かっこいいものを使いたいんだ!」
菊池の答えを聞き俺は中学入ってからずっと疑問に思っていたことがようやくわかった気がする。
中学生入学当初の俺は(今思うと恥ずかしいが)暗く、俺は周りとは違うんだ的な感じを
そんな中でも菊池は、小学校が同じでもないのに俺にずっと話しかけてくれた。今まではただ単に空気が読めなくやたら滅多に話していると思ったが、そうじゃないと俺は考える。
菊池は人一倍、他人に対して優しいのだと思う。つまり空気が読めないと思われるのは極端なおせっかいであり、そんな自分がかっこいいと思える行動をしているんだと思う。
「どうした? うんこでも漏れたか?」
でも、一切空気が読めないところは本当かもな。
「いや、大丈夫」
俺は抑揚のない声で答えた。
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