第16話 林間学校④

 俺が入ってすぐに思ったことは、思ったより地味だったってことだ。確かに普通に考えてみればそうなのだが俺は、施設内では物が常に飛び回り、研究員の人たちがそこらで爆発を起こしたり、あまり逃してはならないものを追いかけまわしているような騒がしい妄想をしていた。


 それでも俺は大きな魔力の流れ(?)のようなものや、魔素(?)みたいなものが時折感じられて、ここにいるだけで楽しいと思えた。


 しかし俺は罪悪感と好奇心が一杯で心臓がバクバクだった。好奇心はともかくなぜ罪悪感があるのかは施設に入る前の出来事のせいであった。







 谷さんの話を聞いた俺は少し嫌な予感がした。その予感はクラス全員にくばられたしおりを見て、見事に的中した。


「パスポート登録が魔力放出しないとだめなんて……」


 魔法使いじゃないといっても一般の人は、指先に火種にはなるくらいの火魔法は使える。だから人間は火を起こせる唯一の動物だといわれている。なので俺みたいな人間じゃなければこのパスに登録なんてできてしまう。

 

 でも俺は完全に出来ないわけではなく、漏れ出してしまうのですっごい微妙な魔力まで感知してくれることを願ってやってみることにした。

 

 結果は失敗だった。

 

 最初は普通にやってみて無理だったので、一回の魔力の量をギリギリ限界にいかないくらいでやろうとしたら、美保と谷さんに気付かれ怒られてしまった。

 

 なぜこんなことをしたのかを谷さんに言うと、俺の体質のことは知らなかったようで疑われてしまった。理由を説明するために、俺は先生と谷さん、それとなぜだか美保の前で、パスを登録しようとした。目の前で見せたおかげ三人は納得してくれた(美保は知ってるはずなのに……)


 そんな俺への対処に困った谷さんは一度各クラスの案内人全てを集めて話し合おうとするところに一人の男子生徒が近づいた。なにやらその生徒と谷さんたちは話していてた。5分もかからないで話が終わったらしく、話していた男子生徒が俺に話しかけた。


「春人、話聞いたよ。パスが登録できないんだよね?」


 話していたの男子生徒は、神木秋人であった。こいつとは美保との一件でとても仲良くなった。どうやら秋人は美保のことが好きらしいので、美保と仲の良い俺と仲良くなれそうにないと思っていたが、ものすごくいいやつでそんなことはなかった。


 秋人も魔法使いになりたいと思っているらしく、そういうところでもさらに仲を深めていた。ただ実際は、秋人はもうCランクの魔法使いなので、もうなっているといったほうが正しい。


 美保がBランクなのだが秋人が劣っているとは俺は思わず、むしろ多方面で優秀な秋人のほうがすごいと思っている。そんな秋人には、魔法や勉強など色んな事を教えてもらい、お返しに唯一の特技といってもいい魔力操作を教えて、俺たちはお互いを下の名前で呼び合うほどに仲良くなった。


 そして今回も助けてくれると期待しながら秋人に期待を抱きながら愚痴をこぼし始めた。


「そうなんだよ~もしかして……俺だけは入れない?」


「このパスポート……っていうより春人に適した魔道具自体ないから春人専用っていうのは厳しいかもしれない」


「その言い方なら、入れる方法があるってわけ?」


 そう言うと、秋人は俺の近くまで来て小声で、


「よくわかったね。本当はいけないんだけど、僕のパスをあげるよ。僕は元々普通のパスもっているから」


 対する俺も小声になり、


「それって不法侵入的な感じじゃない?」


「だから周りの人には秘密にしておいて、これを知ってるのは僕と春人と谷さんたちだけだから」


 こうして俺は秋人からパスを受け取り何食わぬ顔をしてクラスの集団のなかに紛れ込んだ。


「では私についてきてください」


 そういって谷さんは、俺たちが全員パスポートが登録し終えたと言うことにして、案内し始めた。

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