第14話 林間学校②
俺は家を出て少し早足になりながら学校へと歩き出したところ、前に見覚えのある後ろ姿が見えたので話しかけた。
「おはよう」
「お、おはよう春人」
そうびっくりしたように振り返って挨拶を返してきたのは、幼馴染の美保だ。
「昨日は眠れたか? 俺は楽しみで少し眠たいよ」
「そ、そうなの。私はちゃんと眠れたよ」
「そうかー、なら昼間に寝ちゃうってことはないか」
「う、うん」
俺が話しかけるも美保との会話が続かない。こうなったのは俺が特殊な魔法体質で、体外魔法が使えない(いつかは使うつもり)と言うことを美保が知ってからだ。
仲直りする以前の時よりはいいが、俺と美保に変な溝が感じる。俺としては俺の魔法体質よりも、また美保との仲が悪くなることの方が気になっている。ここ二週間ほどさりげなく聞こうとしてみるが、俺がそのような事をするのが下手なせいで本題に入る前に途中で会話が終わってしまった。
こんなモヤモヤしたままでは、林間学校を200%楽しめない、よくて120%だ。
そんなことを考えて、俺は美保に話しかけた。
「なあ、美保ちょっといいか?」
「な、何?」
俺が話しかけると、美保は目線を外しながらもちゃんと答えてくれた。
「ずっと美保に思っていたことがあってさ、林間学校も始まる前にはっきり聞こうと思ってな。美保さ、俺の魔法体質のことを聞いてから、なんか距離が遠くなったっていうか、なんかよそよそしくないか?」
「そんなことないよ」
「本当に?」
「本当だよ……」
こんな問答があったが、これでも幼馴染だ。美保は何か隠している。そう確信すると俺は、また問い詰める。
「じゃあ、本当ならなんで俺との会話を避けようとするわけ? もしかしてウザいかな? それならやめるけど」
「うざくはないよ。でも……」
「でも、何? こないだ喧嘩した時もそうだったけど、俺たちはお互いに伝えきれてないって分かったでしょ? それじゃあ分からないよ!」
少し怒っているぽくなってしまった。
そのことに反省しつつ美保が喋り出すのを待っていると、美保が今度はちゃんと目を合わせて俺に喋り始めた。
「私ね、春人の話を聞いてからね。魔法使いをやめようかなと思っていたの。実際、今も悩んでるけどね」
美保は大きく体を伸ばしながら言った。
「前にも言ったけど、私の魔法の原点は春人なの。春人には悪いけど、その春人が魔法使いという夢が叶えられそうにないって知った時、なんか魔法に対する情熱っていうのが無くなちゃったみたい。でも魔法自体は好きなんだけど、以前のように魔法をバンバン使うぞ!っていう気持ちに慣れないんだよね」
そう言って、美保はため息を吐いた。
「じゃあ、今は魔法のスランプになっているってことか」
俺はそう言うと少し安心した。
なんだ、ただ単に魔法のスランプに陥っているだけじゃねーか。
俺関係ねーじゃん……いや、俺の話を聞いてそうなったってことは、俺に責任があるのか?
やば、どうしよ? Bランク魔法使いを魔法のスランプにさせたって、一見俺が魔法で容赦なくボコボコにしたって思われそうだけど、実際はただの……なんだ? 思いつかないけどあまりよくない気がする
思考を巡らせながらどうやって美保を復活させようと考えていると、
「ね、怒らないの?」
「ん? なんで俺が怒るの?」
本当にわからず心の中で思ったことそのまま口にした。
「だってさ私、本当に春人のこと知らなかったんだな〜って思ってさ。なんだか私って言う人間が嫌いになっちゃって……」
そう言われ、俺が考えていたことと違い美保は自分に自信を持てなくなってしまっていると思った。だからこそ言葉にしてもらいたいと思い、俺は会話を続けた。
「それはこないだ終わった話だろう? それとも、俺のせいなのか?」
「全然違うよ。ただ私が周りも見ずに勝手にやっていた自己中だっただけ」
「俺の勝手ながらの感想だけど、それらが美保の本当の気持ちとは思えない」
そう言うと美保は観念したのか、目に涙を溜めながら言葉を紡いだ。
「私の勝手な妄想だけど、このまま春人が魔法が使えなくないまま大人になってしまえば、私と春人の式がなくなると思えてきちゃって。
そしたらさ、すごくショックだったんだよね。春人が自力で魔法が使うことがほぼ不可能ってことが、勝手に期待してて何言ってんの!って感じだけど ああ、なんか情緒不安定になってきたかもw」
そう言って無理に笑っていた美保だが、明らかに空元気ですって言っている顔だった。
「美保の言いたいことはわかった。要するに俺が不甲斐ないから、将来について不安になっちゃったってことだな」
「いや、ちが……」
俺の言葉に否定する美保だったが、俺は言葉を被せて
「違くない! てかそもそも俺のこと舐めているだろう? 美保……いやお前なんかすぐに追い抜かしてやるよ! あとで泣いても知らないからw」
最初は美保を宥めようと思っていたけど、話しているうちにイライラしてきて怒ってしまった。
「俺の魔法体質は多分神様が俺に体外魔法まで使えたら、強くなりすぎると思ってこうなったんだ。だから体外魔法なんて使えなくても魔法使いのトップになってやるよ! そもそも魔法使えないって言われているけど、体内魔法はお前よりできるし!」
言っているうちに俺はヒートアップしてしまい、小学生みたいなことを言っているのに気付かず興奮していた。美保はそんな俺を見て、笑い始めた。
「ふふふ、言ってることが小学2年生だよw」
「別にいいだろう、自分の欠点をこうやって笑いに変えれるんだから」
「そうだね、そういうことにしておくよ」
「また、いらんことを。でもそう言うのを言うのが美保って感じだけどな」
そう言うとお互い黙り込み、また五分ぐらい経ってから美保が口を開いた。
「励ましてくれたの?」
「まあ、そうだけど……美保に腹がったのは少しある。てか、お前は考えすぎだ。対して頭良くないのに! 少しはこっちの頭を休ませろよ」
「そっか、私の考えすぎか〜」
「その通りだ。てか何回こんなことしてるんだよ」
「わからないよ、私と春人だから」
答えになっているのかわからないがなんとなく俺には理解できた。美保はつきものが落ちたかのように、清々しくなっていた。
そして、俺は今なら聞いても良いと判断しさっきの美保の言葉で分からない事を聞くことにした。
「そういえばさっきの美保の妄想で、なんで俺の死期がなくなるの? ゾンビにでもなるの?」
そう聞くとまた美保は、さっきのように喋れなくなってしまった。
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