第12話 体外魔法③
俺はここまで魔法が苦手とか、才能がないとか言いながらも難なくこなしていたが、これからやる魔力放出という技術が問題となってくる。
こういうのも悪いが、俺が少しでも魔力放出ができれば、Dランクぐらいは楽勝だと考えている。まあ、それほどに俺は魔力操作に自信があって、魔力操作ができないってわけだ。
でも今なら出来るかもしれないし、大器晩成っていうのか本気出したらなんか覚醒するかもしれない。
そう自分に言い聞かせながら、俺は魔力放出?をするのだった。
「できない」
「なんで出来ないの!」
「お前の説明が悪いんじゃない?」
「そんなことないわ。確かに一見意味わかんないだろうけど、ちゃんと私が翻訳してるわ」
「なんであんな説明がわかるんだが(すごくありがたいが)」
「それは、何年美保ちゃんの先生してると思ってるの?美保ちゃんがBランクになれたのは半分ぐらいが私のおかげよ」
こんな感じでやり取りをしながら、俺は魔力放出をしようとするが、なんせ上手くいかない。一般的に魔力放出で詰まる人はいるが、そのほとんどが魔力操作の訓練することで、克服してしまう。
「これだけ魔力操作ができるのに、なんで魔力放出ができないのかしら」
「もう一回、母さんのイメージとか、考え聞かせてくれない?」
「私は?」
「いや、美保のは分かんないからいい」
そう言われ落ち込んだ美保だったが、本当にわからないのでどうフォローをしようもない。
「私の考えていうか一般的には、腕や脚などに魔力を集めるといいと言われていて、そして集めた魔力を体の外に出す。そこで魔力を一点に収束させるんだけど、その時の感覚としては、泥団子を作るようにするとか、おにぎりを作るようにまずは丸くしてそのあと形を形成するとかが、代表的ね」
「どっちも、そんな感じでやってみたよ。実際にも作ったし」
「実際に作らなくてもいいんだけど……じゃあ、春人が魔力放出をやっている時、どんな感じなの?」
「うーん? 母さんが言っていた魔力を腕や足に魔力を集める感覚が分からないんだよね。そもそもなんで腕とか足なの?」
「その理由は単純よ。魔力を放出しやすいから、ただそれだけよ」
「じゃあ母さんもそう感じんの?」
「私はそうよ。それに人によっては足より腕、腕より左手とか、結構個性があるわ。ちなみに私が一番放出しやすいのは左手ね」
「美保は?」
そう言うと、美保は待ってましたと言わんばかりに大声で言い始めた。
「私は、両手両足全てが得意だよ! だから一番とかはないよ! てか春人はどうなのよ! もしかしてお腹とかw」
「俺も美保と同じか分からないけど、全身どこでもその放出のしやすさが変わらないと思う」
「え、すごいじゃん! でもなんでできないの?」
「あくまで持論だけど、その魔力放出のしやすさによって俺は魔力放出が苦手なんだと思う」
「なんで? 普通は魔力放出しやすい方が、より高火力な魔法や繊細な魔法が使えるって話だけど?」
「俺が魔力放出しよとすると、腕や足に魔力を移動させる前に、魔力がほとんどなくなるみたいなんだ。 その耐えるとすれば、水やりのホースになるのかな? みんなは普通のホースで俺のホースは穴だらけみたいな感じ」
「う〜んと、つまり春人は目的の場所に魔力を持っていけないって感じ」
「そうそう、それそれ」
そうやって美保と話し合っている俺たちに感心したような顔をして母さんが話に入ってきた。
「美保ちゃんにしては上手に話を纏めらたようね」
「おばさん、私のことバカと思ってるの?」
「いいえ、バカとは思ってないけど上手に言語化ができない子だと思っているわ」
「確かに美保は頭が悪いってわけじゃないけど、説明下手くそだもんな」
そう言われ、美保は「それは理解力が足りないからだ」とか言っていたが、こないだの定期テストで国語の点数が17点だったのを母さんに言われて、項垂れていた。
そんな美保を見ながら、俺は今まで考えてこなかったこの体質的?的なものについて真剣に考えていた。
そもそも、魔力を作るのって魔力操作で魔素を集めてできるんだったはずだ……。
それならば直接、腕や足で魔力を作ればいいんじゃないのか!
それにしてもなぜ、魔素を集めるだけで魔力が作られるのか、魔素はどうやって血液、液体に溜まるのか? てか魔素ってなに?
そんなふうに考えていると母さんが話しかけてきた。
「春人、ちょっといい?」
「あ、全然いいけど」
「実はね、春人のその体質はずっと前からお父さんと母さんはしていたの」
「え、そうなの? いつくらいから?」
「春人が体内魔法がある程度できて、体外魔法の練習に移ってちょっとしたあと……ぐらいかしら」
「そんなに早くに? すごいね俺なんか今日まで考えもしなかったけど全然分からなかったよ」
「それは、春人が賢くなって、体が成長したからよ」
「でもなんで母さんたちは、すぐにわかったの?」
「正確には、母さんだけよ。 春人の魔力操作は何度か見たことあったから。 母さんの友達がねそういう体質だったからすぐにわかちゃったわよ」
「そうなんだ。で、一応聞いておくけどこの体質の治し方ってあるの?」
「ないわ」
母さんがそう答えるとさっきまで項垂れていた美保まで静かになり、この場の空気が重くなるのを感じた。
ま、もともと父さんが俺の体質に合わせた魔道具を開発するって話を聞いた時からわかっていた。だからこそ母さんの答えにはある程度予測が立っていた。
なので俺はそこまあでショックは受けていなかったのでこの空気を軽くしようと思う!
「二人とも、そんなに俺のために悲しまなくてもいいよ。もともとわかっていたことだし、それに俺の父さんが俺の魔道具を作ってくれるんだから」
「そうね、なんだって私の夫だもの。成功する未来しか見えないわね」
「で、そんな父さんの息子の俺なんだ。その魔道具で絶対に世界で一番強い魔法使い……いや魔道具使いになるわ」
そうやっておちゃらけた俺に母さんは、“あまり調子にのらないの!”と普段より優しく拳骨してきた。普通に痛かったが、少しだけ母さんの荷が降りたように見えた。
だけど一方で、美保はそんな俺を真剣に見つめて何か悲しそうだった。
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