第10話 体外魔法①

 俺、水方春人は美保と仲直りできました。


 お互いに言葉足らずな所や素直になれなかった部分があり、すれ違っていたと思う。でも多くの人があるきっかけで一瞬で関係が悪くなってしまうことを良く聞くが、俺は幸運にもそういう事態に陥らなかった。

 

 でも、しかしまあ〜 美保が(幼い頃のだけど)俺に憧れていたなんて考えもできなかったな。

 

 お互いがお互いを意識していてそれをお互い知らないなんて、なんかこうアニメや漫画の世界ぐらいしかないって思っていたのに。

 

 なんか人知れず一人でテンションが上がったわ。その無駄なことを伝えようと学校で話しかけようとしたけど、なんか避けられていたから無駄ってことが分かってたのかな?

 

 そんなことしていたら、俺たちが仲直りしたって分からないと思うが、クラスのみんなは美保から伝わったのか、俺と美保の関係について心配してくることがなくなった。でも一部のクラスメイトは俺に殺気(?)みたいなものを飛ばしてくるようになった。







 放課後、母さんが昨日やるはずだった魔法の講義をしてくれる予定だ。


「えーっと、昨日は誰かさんのせいでできなかったけど、対外魔法について実践しながらも詳しく説明しようと思うわ」


「誰かさんって、自分のことじゃないのかよ」


……と、余計なことを言った俺は母さんからゲンコツをもらい悶絶した。


 その光景を見た美保が、コホンっと咳き込みながら


「本当に、学習しないのね。頭に浮かんだらすぐ口にしちゃうのは、春人の悪いところじゃない?」


「俺はそんな人間味のある俺が好きだよ」


「ま、まあそれが春人の魅力でもあるけどね」


「はいはい、仲が良いのはいいけど私の話も聞いてね」


「はい」


「は〜い」


「よろしい。では教科書を用意して庭に集合! では解散!」


 そう言って解散した俺たちだが、2分後には集合し終えていた。







「では私、水方春香による特別授業をしようと思いま〜す。みんな拍手〜」


 そう言われノリについていけないが、ちゃんと拍手した。


「ありがとう、ありがとう……って冗談はここまでにして、早速入るわよ。まずは二人がどれだけ体外魔法について知ってるか教えて欲しいわね」


「体外魔法については、魔力を放出するとか、前の系統とかぐらいしか知らない。あとは自分でできなからか、あまりよく分からなかった。 他はどんな感じ?」


「……」


 そう言って美保に答えてもらうと、視線でバトンタッチしたつもりだが今日の学校のように視線を外しながら、美保は答えなかった。


「ん? 美保どうした?」


「い、いや べ、別に大丈夫だよ。魔法は理論というか、どちらかというと、感覚的なものであって……って別に分からないってわけじゃなくてまだやってないって言うか……あ、あのちょっとお花摘みにいっていいですか!」


「美保ちゃん、もういいわ……この質問はどちらかというと春人に聞いたから。お花摘みに行ってらっしゃい」


 え? なんで俺に?


 そう考えていると、 美保が「私じゃなかったのか〜」と言いながら、庭には花壇がないのに花を摘みにいった。

 

 美保の言葉を借りるわけではないが、魔法の練習をやっていたとはいえ、対外魔法ができない俺はずっと魔力操作の練習をやっていた。座学っていうより、体で覚えるようなやり方をしてきた。だからこそ、俺は分からないので、美保に答えを聞こうと思っていた。


「美保ちゃんはね…… そのなんて言っていいのかわからないのだけど、おばかちゃんで天才なの」


「どういうこと?」


「美保ちゃんの魔法はね、その……本能的っていうか、理論がいらないっていうのか……」


 そう言い詰まっていた母さんだが、決心したように俺に話しかけた。


「つまり、美保ちゃんはね、魔法を完全に感覚的に使っているのよ」


「え、でも今までの母さんの感じから言うと、魔法は理論的に考えることが大事って……って歴史でも科学的な考えで発展したって言ってたじゃん!」


「普通はね。でも美保ちゃんはそれがない。いや、そう言うより美保ちゃんなりの理論があるって言った方がいいかも」


「じゃあ独自の解釈があるってわけか」


「う、うーんそう言う感じなのかな。でも実際見たほうがいいかも。美保ちゃん、体外魔法のコツを春人に教えてやってくれない?」


「仕方ないですね。まずね、魔力を体の中で作って、それでいい感じにギューっとしてそれを、腕とか杖など使って外にずわっと出す。それを使って魔法にするって感じかな」


「え、そのなんていうか言いたいことがなんとなく分かるけど、よく分からない感じなんだけど」


「でも、これが一番わかりやすいと思うんだけど」


「春人も分かったでしょうけど、美保ちゃんはこんな感じなの。その勉強でも教え方が下手など、普通の人では覚えられないような覚え方する人がいるじゃない。それの魔法版って感じかしらね」


「でもこないだ、魔法の聖書バイブルとか言うやつの分からないところを、詳しく教えてもらえたんだけど。ポーションとか!」


「それは私が、魔法使いにとっては重要なことだから念入りに教えたからね。 美保ちゃんは言葉や、説明を自分の感覚に変えるのが上手いけど、その逆ができないのよ。そもそも、教えてできるようになったっていうか、自分でやっているうちにできたと言ったほうが正しいわね」


「じゃあ、いつも美保が魔法の練習をずっとしていたのは、魔法ができなかったわけでなくて、理解しようとしていたわけ?」


「そうよ。むしろ魔法の方ができてから理解していたわ。見た魔法使ってみる〜とか言ってね」


 そんな美保の天才エピソードを聞き、俺は才能を羨んだが不思議と嫌な気分にはならなかった。


「そうだったんだ。ずっと近くにいたのに全然知らなかったよ」


「そうよ、春人はもっと周りを見なきゃ、ちょっとした日常のことが魔法に生きることもあるんだから。美保ちゃんが付き合ってくれるんだから春人も頑張りなさい」


「そうだね。頑張るとするよ」


 美保のことを知っていたつもりだったが、意外な一面と共にかっこいいと思った。俺は美保みたいにはなれないが、それでも、そんなかっこよさを目指して頑張ろうと思えた。

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