第8話 幼馴染①
美保とのひと騒ぎがあり、人気のあるやつだからクラス中からの非難を覚悟していたが、思ったよりなかった。
それどころか早く仲直りすべきとやら、男なら自分から話すべきだとか、すすめられてしまい、美保のことが好きであろう神木君でさえ、俺たちの関係に心配していた。
昼休みに俺たちは先生に呼び出されたが、俺が(大人な!)対応を見せたことによって、大事にはならなかった。そんなこんなでその日は、朝の一件を除いて何もなかった。
そして放課後になり、魔法の練習の予定だったが、最初は行きたくないという気持ちが勝っていた。でも、あんなことがあったんだから来ないはずだし、折角やる気がみなぎっているのだからと仕方なく、本当に仕方なくと自分に言い聞かせて、行くことにした。
そうして俺はサボりもせずに自分の家の庭にちゃんときた。今日の練習で使う魔道具や的、そしてこないだもらった本を用意した。準備し終わったので始まるまで、こないだもらった本を読み返そうとしたとき、声が聞こえてきた。
「こんにちは~」
そういって美保は庭に入ってきた。実は「今日はこないんじゃ? なら俺から話しかけることもないなw」とか心の中で勝手に結論付けていたが、美保はちゃんと来た。その事実に驚きながらも、俺は勇気を振り絞って話かけた。
「お、おう」
「……」
こっちが勇気振り絞って声かけてやったのに、無視すんなよ。
だいたい俺はお前が訳も分からず嫌いとかいうからこうなってんだろ! だからこうして話を聞こうとしてんのに、無視するって何?
そう思ったが、口にすれば今朝のことの二の舞だと俺の(大人な!)考えがよぎり、口に出すことはなかった。会話にならないと悟った俺は、手に取った本に目を移し本の内容に没入した。
俺が本の内容を読んでから少したち、また本に打ちのめされそうになったとき、
「ね、ねえ」
そう言って、美保は俺に話しかけた。
一瞬俺はわざと無視してやろうと考えたが、山口や菊池、神木君などのクラスメイトからの言葉を徐々に思い出して、答えることにした。
「何?」
「あの……その……さ、今日の朝のことなんだけどさ」
「ああ、それで」
美保は言い詰まりながらも、
「その……謝りたくてさ…………ごめんね」
「…………俺も言い過ぎたと思うし、悪かったと思う。だからこそ、俺のほうこそ謝るべきだ。 美保、悪口言ってごめん」
そういって俺は美保にむかって頭を下げた。
「いいよ、私にも悪いことあったし。それに少し春人にきつく当たってたし」
「俺のほうこそ素直になれなかったし、冷静じゃなかった。ところで話し変わるけど、この本のここってどういう意味?魔素は血からできるってこと?」
「ええっと、そこはね。血からっていうより、魔素は液体にしか存在しないの。ほら、ポーションとかあるでしょ。だけど、今の研究では…」
俺たちはお互いに謝ることができて、普通の会話ができるようになった。思ったより簡単に美保と仲直りできたので少し驚いた。
そうして話していくうちに、俺たちの会話はいつの間にか小さい頃の話に移っていった。
「お前って、マジで魔法だけに関しては頭いいな」
「魔法だけって何よ!」
「いや、でも魔法の天才にしてはこないだの定期そんなにいい成績じゃなかったろ。むしろ悪かったような」
「なんで春人が知ってんよ! まさか覗いたの? 変態!」
「覗いたなんて人聞きの悪いこと言うなよ。お前たちが大きな声ではしゃいでいたから、耳に入ってきただけだ」
「え? じゃ、じゃあみんなにばれているってこと?」
わなわなと震えながら聞いてきたので、俺は鼻で笑うようにしながら答えた。
「おそらくな」
そういうと美保は絶望したかのような顔をして、
「嘘、私の知的なイメージがもう崩れているの?」
「いつかばれるんだから、いいんじゃねーの」
「良くないよ! せっかくBランクの天才魔法使いがあほの子なんて、良くないよ!!」
「自分で天才って…… そういえばさ、なんでお前って魔法使いになろうとしたの? ずっと頑張ってきたのは知ってるし、何度かくじけてたのも見てる。それでも頑張れたのって、やっぱり魔法が好きだから?」
「そうだね、確かに魔法は好きだよ。でも、そうなるより前に私が魔法を頑張ろうと思ったことがあったんだよ」
といい美保はなぜか微笑みながら言った。
「それって」
「えー覚えてないの? 春人が言ったのに?」
「俺が言った?」
まったく覚えがなく、過去の美保との出来事に必死に思い出そうとする俺を見て、美保はため息を吐きながら、
「春人がさ 「俺と一緒にさ、魔法使いになろうよ。でも1番は俺でお前は2番な」って言ったでしょ」
「そんなこと言ったっけ……」
「なんで覚えてないのさ! でも、私にとっては凄くうれしかったし、何よりその言葉のおかげで頑張れたこともあった」
「そうなのか……」
「別に、春人のせいとかじゃないからね」
「それぐらいはわかってるよ」
そう答えてしばらく沈黙が続いたが、30秒ほどたって美保がその沈黙を破った。
「なんでこんな質問したの? 怒ってるってわけじゃなくて、純粋な疑問」
そう言われて、俺は少し考えてあと空を見ながら口を開いた。
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