第7話 喧嘩③
挨拶回りが終わり、私はお母さんと一緒に春人の家にお邪魔することになった。
「いらっしゃい、ささ、上がって上がって」
「「お邪魔します」」
案内されたリビングに幼い頃の春人がいた。
「こんにちは!」
その子はそういいながら、私とお母さんに近づいてきた。
「おれは、みずかたはるとです」
「初めまして、近くに引っ越してきた七条春香といいます。これからよろしくお願いします春人君」
「わ、わたしは…」
「え、おかあさんとおなじなまえ? もしかしてきょうだい?」
「こら、今話している途中でしょ。静かにしてなさい ごめんなさいね、ヤンチャで」
と言われ、コツンと拳骨を食らった春人は頭を抱えなら悶えていた。
「いえいえ、これくらいは子供らしくていいですよ」
「美保ちゃんもごめんね。春人がせわしなくて」
「おまえ、みほっていうのか」
「あっ」
「あぁぁ~、やっちゃった。美保ちゃんごめんね。おばさんが自己紹介の邪魔しちゃって」
「やっちゃったね、おかあさん」
「うるさい! 元を言えばあんたが人の話を聞かないからでしょ」
と、もう一回拳骨を食らった春人はまた頭を抱えなら悶えていた。
そんな様子にこらえきれず、私はつい笑ってしまった。
「あははは」
そしてすぐに人前で笑ってしまったことが恥ずかしくなって、お母さんの背中に隠れてしまった。
「ほんっっっと、ごめんね美保ちゃん。おやつにドーナッツもあるしそれで許して!」
「だ、だいじょうぶです。でもどーなっつはください」
そういうと、春人のお母さんはにっこりと笑って、
「許してくれてありがとう。いっぱいドーナッツあるから食べっていって」
「はい」
すると、拳骨を食らい痛がっていた春人がきた。
「おまえ、どーなっつすきなの?」
「う、うん」
「じゃあさ、おれのどーなっつあげるからさ。おまえおれといっしょにさ、まほうつかいになろうよ。でも1ばんはおれでおまえは2ばんな」
「え?」
「みーちゃん! みーちゃん!」
美保はいつの間にか自分が思い出にふけっていることに気が付き、ハッとして、
「ごめんごめん。ちょっとボーとしていた」
「そんなに落ち込む必要なんてないよ。全部水方が悪いんだから」
そういって私を励ます彼女は
ショートボブの髪を持ち、全体的に小さく小動物みたいな子で私の親友の一人だ。
「確かに水方の言い方は悪かったけどさ、それで手を出しちゃったら美保に問題があると思われちゃうよ」
夏鈴の美保をかばう言葉を一刀両断したのは、
インド人の母と日本人の父を持ち、褐色肌を持つハーフだ。運動神経が抜群で、スタイルも良く面倒見が良いクールな女子だ。そのおかげか、男女問わず多くのクラスメイトから慕われている。
「で、でも水方が悪口言わなかったならみーちゃんも怒ることなかったでしょ!」
「それはそうだけど、水方の言い分では美保にも悪いとこありそうだし……そこんところどうなの? 美保」
私はそう聞かれて春人にやるせ無い気持ちで、ついポロッと言ってしまった。
「どうもこうもないよ! 私が春人のために魔法の勉強したり励ましてあげているのにさ! なんなのあいつ!」
「「……」」
あわあわと震える夏鈴と少しにやけた海良に戸惑いながら、
「何? どうしたのさ?」
「みみみみ、みーちゃんって水方のこと、好きなの?」
「わ、私が? 春人じゃなくて?」
そう聞かれ一気に顔が熱くなるのを感じながらも、誤魔化そうと早口に捲し立てた。
「あれが励ましだったの? てか、やってることがさ。好きな子に素直になれなくて、つい嫌なことしちゃうやつだよw」
「ち、違うし! 春人が変に突かかってくるだけだし!」
「でも、こないだなんて水方君と魔法の勉強を一緒にできることになって嬉しそうにしてたじゃない?」
「そ、それは春人のお母さんが喜ぶのが嬉しくて」
「あと、みんなに猫かぶってるって水方は言っていたけど、逆だよね。何なら水方だけに猫被っているっていえるよね?」
「そ、それは春人は特別だ……って、悪い意味の特別だから!」
「わ、私のみーちゃんがぁぁ~」
「いつから美保はあんたのになったのさ? ま、いずれにせよ二人は話した方がいいと思うよ」
「でも話してくれるかは……」
「大丈夫だよ。美保の良さは私たちにも分かるんだから、水方も分かるはずだよ その魔法の練習の時にでも話してみれば?」
「ま、まあ春人が来るならね」
この会話で私は最後まで謝ってくるなら許すっていうスタンスをとった。
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