第6話 喧嘩②
俺が美保に怒るような、あきれるような、自分でもうまく言えない感情になりながら、ティッシュをもらいに保健室にむかった。
その時に、保健室の先生にどうして鼻血が出たのか聞かれたが、何となく美保とはいえ女子にやられてケガしたなんて、恥ずかしいと思い適当なこと言ってはぐらかして教室にもどった。
教室に戻ると、すでに朝のホームルームが始まっていた。
「すみません。保健室に行ってて遅れました」
と言いながら、俺の席に向かう道中クラスのみんなからの視線に耐えながら席に着いた。
席に着いた後、すぐに終わりのチャイムが鳴りった。
「……ということで、しおりにも書いてるように林間学校ではスマホやゲームなどの電波の発するものはもってきてはいけません。
以上で朝のホームルームを終わります。あ、あとで水方君と七条さんは昼休みに職員室まで来てください。」
先生がそう言って教室を出ると、
「結構派手にやっちゃったな春人~ 浮気でもしたのかw な、太郎」
「二人は小さい頃は仲良かったのに。二人とも、どうしたのさ?」
といつものように空気が読めない菊池と、そんな菊池をガン無視して山口が美保と俺を思ってか聞いてきた。
「どうにもこうにも俺が、美保に叩かれてケガをした。
俺は被害者。美保は加害者。ただそれだけだ」
「確かに手を出すことはいけないと思うけど、春人も言い過ぎだと思うよ。それにみんなが注目しているところで自分の悪口を言われたら誰だってやだよ」
「でも、事実だ」
「事実って、春人はそういうとこ……」
「まあまあ二人とも喧嘩すんなって、春人も美保ちゃんも悪いとこがあったんだろ。二人とも自分の悪いとこを認めて相手に謝ればいいじゃねーの。 そんでもって仲直りってことよ。 つまり二人とも素直に自分の気持ちを喋れってことだな。素直……って、それが一番難しんだけどさw」
「「……」」
「なんだよ二人とも、ポカンとした顔して?」
「いや、今の君は、僕の見てきた菊池とは違くて……」
「なんでこんな考えができるのに、おまえはいつも空気が読めないんだ? それをもっと日常にも活かせよ! バカなのか?」
と、俺と山口は菊池の言葉、考えに驚いた。
「それはさておき、菊池の言う通りちゃんと話すべきだよ。美保ちゃんも素直になれないだけで、嫌ってはないはずだよ」
「あいつが素直に話すならな」
と、言うと山口は少し笑いながら
「そういうところが素直じゃないんだよ」
そんなことを言われて俺は黙ってしまい、菊池が“俺は、バカじゃない。勉強も魔法もそこそこできるって聞いてんのか!”という声を聴き流しながら、美保のことを考え始めた。
一方そのころ美保は、
「みーちゃんは悪くないよ。私だってあんなこと言われたら怒っちゃうよ。最低だよ」
「水方君、あんな感じなんだ~ちょっと意外。でも女の子を泣かすのはよくないな~」
「気にしないほうがいいよ。七条さん。幼なじみといってもただ人より長く一緒にいただけのことなんだから」
などと、美保の周りは美保をかばう声や、春人に驚くような声があった。
そんな声を聴きながら美保は、
「はあ~何がいけなかったんだろ。小さいときは良かったのに」
と心の中で吐露した。
春人と初めて出会ったのは、小学校の入学式が始まる前だ。
私は両親の仕事の都合でうちの近くに引っ越してきて、その挨拶回りの時に、初めて喋った。
「こんにちは、近くに引っ越してきた
「え、ありがとうございます。私も春香って名前なんですよ~
水方、水方春香と申します。今後ともよろしくお願いします」
「同じ名前なんて奇遇ですね。こちらこそよろしくお願いします。あと後ろにいるこの子は私の娘の美保といいます。ほら、美保も挨拶しなさい」
すると、後ろに隠れていた美保はもじもじしながらも前に出てきて口を開いた。
「し、しじょうみほです」
「美保ちゃんね、偉いわ。ちゃんと自己紹介ができるなんて。うちにも今年小学校に入る子いるけど、ヤンチャで困ちゃって」
「そうなんですか。うちの美保も今年から小学校に入るんですよ」
「そうなの、じゃあうちの子と仲良くなってくれないかな。美保ちゃん」
そういって、目線を私に合わせるためにかがんでくれた。
「いいかな、美保ちゃん」
「うぅ、うん。いいです」
「ありがとう。美保ちゃん」
「じゃあ今、うちの子連れてくるから~~って、七条さん! もしよければうちに来ませんか? 挨拶回り終わってからでもいいんで!」
「いいんですか?」
「全然いいですよ~」
「なら、あと2~3軒回るので30分後の15時頃にうかがってもよろしいですか?」
「じゃあその時間で!」
そういって私のお母さんと春人のお母さんはすぐに仲良くなった。
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