第1話
「……言い伝えなんて眉唾物が多いと改めて思い知らされたわ」
ルクレティアの案内を受け黒界の森に入ったレティシアは溜息ついてそう言った。
黒界の森に自分達のアジトがあると言われ、一瞬だけ戸惑いを見せたレティシアだったが、実際にルクレティアに案内され入った黒界の森は、ちゃんと草木が育っているどころか、誰も手入れしてない為生え放題。近くにあった川も特に汚染された様子もないし、魔物も外に出る魔物と大して違いはなかった。
「分かるぜぇ〜!その気持ち!私も最初来た時は驚いたもんだ。まぁ、よくよく考えたら草木も生えないって言われてんのに、森って言う矛盾を考えたらお察しだわなぁ〜」
ニヤニヤと笑いながらそう答えるルクレティア。だとすると、何故この地は禁止地域になったのかふと疑問に思うレティシア。そんなレティシアの考えを察したのかルクレティアが再び語り始める。
「ここは完全に黒の魔力に染まってるからな。他の魔力は流れていない。だから、普通の人はここで魔法を使う事は出来ないんだ。ここで魔法が使えるのは私ら黒の魔女だけさ」
この世界では、魔法は重要な力である。魔物が普通に徘徊してる為、自衛に必要なのはもちろん。生活をしていくのにもいくつか魔法を用いている。故に、魔法が使えない=死を意味していると言っても過言ではない。
「まぁ、とは言ってもお前さんは魔法使えてるところを見ると……やっぱり聖女ってのは世界にとって特別な存在なのかねぇ〜……」
歩いてる最中に、突如襲いかかってきた魔物にたいしてレティシアは魔法を行使した。これにより、黒の魔力で染まった地域では、黒の魔女と聖女のみが魔法を行使出来る事が確定した。
「さて……そうこう言ってる内に着いたぜ」
ルクレティアがそう言って立ち止まった先に、だいぶ痛んでいるが、大きな屋敷がそこにあった。
「……まさか黒界の森にこんな屋敷があるなんて……」
「初代のノワールナイツの団長が見つけてな。以来、ここはノワールナイツの拠点になってる。恐らく、何万年も前にここにあったとされる国の貴族が建てた屋敷じゃないかって話だが……真実は闇の中ってやつさ」
「ん?あれ?あぁ〜!?団長!!良かったぁ〜!無事だったんですねぇ〜!?」
ルクレティアがレティシアに説明をしていると、門の前にいた長い黒髪に黒い瞳の、ルクレティアと同じく黒の魔女と思われる少女が涙目でルクレティアの所に駆け寄って来た。
「おいおい。チェルシー。無事だったとか穏やかな言葉じゃないなぁ。まるで、私が死んでいてもおかしくないみたいな発言じゃないか」
ルクレティアの軽い口調の言葉に、先程まで涙目だったチェルシーと呼ばれた少女が目を釣り上げルクレティアに説教をし始めた。
「当たり前じゃないですか!?団長の私室の机の上に『ちょっとクロックダウンまで出かけてくる。留守番よろしく』って書いた書き置きだけ残していなくなってたら!おまけに!こんな新聞の記事まで出てたら余計に!!」
「まぁまぁ……そんな怒るなよチェルシー……これは今日の新聞か?どれどれ……」
チェルシーが怒った勢いで手渡してきた新聞の内容を読んだルクレティアは「はぁ〜ん……なるほどねぇ〜……」って呟いて、読んでいた新聞をレティシアに渡した。
「どうやら、世界はお前さんの生存を隠したいみたいだぜ」
ルクレティアにそう言われ、レティシアをざっと新聞に目を通した。そこには、『クロックダウン。魔力実験により崩壊!?』という見出しで始まった記事が書かれていた。記事の内容を簡単にまとめると、クロックダウンで行われた魔力実験の失敗が大事故を引き起こし、クロックダウンが消滅したとされていた。
「ん?あれ?そちらの方は……白銀の髪に黄金の瞳………………って!?まさか!?大聖女のアメリア!?何で団長と一緒にいるんですかぁ!!?」
そこで、ようやくルクレティアの隣にいたレティシアの存在に気づいたチェルシーが、レティシアの容姿を見て、大聖女と勘違いし猛スピードで離れた物陰に隠れたそう叫んだ。
「あぁ〜。違うぞ。こいつは大聖女アメリアじゃないぞ」
「そっ……そうですよねぇ〜……大聖女アメリアが団長と一緒にいる訳ないですもんねぇ〜……」
「こちらは、4年前に緑の国エルメシアをたった1人で滅ぼした元聖女……いや、大罪の聖女レティシアさんだ」
チェルシーは笑顔でルクレティアに近づいて来たが、ルクレティアのレティシアを紹介する言葉を聞いて笑顔のままその場しばし固まった。
「……………………って!?余計に危険人物じゃないですかぁ〜ーーーーーー!!!?」
チェルシーはそう叫んだ後、先程よりも離れた場所にある物陰に、これまた先程より早いスピードで隠れた。
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