プロローグ2

  6カ国共通の領土島。最悪な犯罪を犯した者を収容する監獄島「クロックダウン」。その「クロックダウン」の最奥、史上最悪の罪人を収容するレベルXの収容所の扉の前、交代を告げる為に1人の兵士が見張りをしていた1人の兵士に敬礼する。


「ご苦労様です!交代の時間です!こちらにサインお願いします!」


「おっ?もうそんな時間か。はいよ。今書くぜ」


見張りをしていた兵士は、やって来た兵士に渡された書類にサインをする。この「クロックダウン」では、防犯対策の為、見張りの交代には必ず報告書類にサインするという決まりが出来ていた。


「しかし……こんな面倒な事本当に必要なんですかねぇ……」


「はは……まぁ、気持ちは分かるよ」


交代を告げにきた兵士のぼやきを拾った見張りの兵士は乾いた笑みを浮かべる。


「クロックダウンが最悪の監獄島として機能していたのは数10年前、黒の魔女達が徒党を組み作った組織『ノワールナイツ』。その『ノワールナイツ』も無くなり、それ以降この監獄島に収容される者は誰もいなかった。4年前のエメラルシアで起きた惨劇意外はなぁ……」


報告書を書きつつ、見張りについていた兵士はチラリとレベルXの扉を見て一つ溜息をつき、交代を告げにきた兵士の肩を軽く叩いた。


「まぁ、どんなに面倒でもこれが俺たちの仕事だ。しっかりと頼むぜ」


「はっ!了解です!」


「あぁ、それと……一応中の様子のチェックも忘れないようにな。どうせ何も変わってないだろが、逐一確かめるのも俺達の仕事だからな」


そう言って、見張りについていた兵士は手をヒラヒラとさせて去って行った。交代で見張りになった兵士は、その姿を敬礼したまま見送り去って行ったのを確認し、ニヤリと笑い


「了解。それじゃあ、言われたお仕事を早速やらせていただきますよっと……」


そう言って、先程まで着ていた鎧や兜を脱ぎ捨てる。そこには、長い黒髪をポニーテールにまとめた黒い瞳に褐色の肌の女性が立っていた。

  女性は早速先程の兵士から交代の手続きの際に渡されたレベルXの扉の鍵を使い、重厚感ある扉をゆっくりと開けた。


「ふぅ……錆びてるせいかかなり軋んでるなぁ……それで……目当ての人物は……いたいた……」


女性の眼前に、両手を拘束具で吊り上げれ、両足も似たような拘束具で拘束された白銀の髪色をした女性らしき人物がいた。ただ、首を下げている為に褐色肌の女性からはその顔を見れないが、褐色肌の女性はその女性をよく知っていた。


「レティシア・フォンティーヌ。緑の国エメラルシアの元聖女。紫の国の大聖女と呼ばれているアメリアと同じ白銀の髪色を抱いた史上最高峰の聖女になると言われながら、4年前、黒の魔女を勝手に逃し、更にその黒の魔女が処刑された時、魔力を暴走させて緑の聖樹を枯らせ消滅させ、エメラルシア国民全てを惨殺した。聖女でありながら歴代最悪の大罪人」


「……………今更私の罪の確認なんて、最近の兵士はよっぽど暇のようね」


褐色肌の女性の言葉に反応し、女性レティシアが言葉を返した事に驚愕の表情を浮かべる褐色肌の女性だったが、すぐにニヤリと笑う。


「噂通り本当に生きていたのか……これは好都合。なぁ、レティシア嬢。あんた、私達と一緒に世界をぶっ壊してみる気あるか?」


「はぁ?貴方何言って……」


そこで、初めてレティシアは顔を上げ、褐色肌の女性の顔を見る。褐色の肌の女性も、所々衰弱したような所があっても、どこか神秘的な美しさを感じるレティシアの顔に思わず息を飲んだ。


「……黒い髪に……黒い瞳……それに……黒の魔力も宿してる……まさか、こんな所に黒の魔女が現れるなんてね……」


「……ルクレティアだ。黒の魔女を救う組織『ノワールナイツ』の団長もやってるから、みんなからは団長とも呼ばれてるよ」


レティシアの姿に呆けていたルクレティアはすぐに首を横に振り、いつもの自分の調子でレティシアにそう返し、真っ直ぐレティシアのその黄金色の瞳を見つめ


「それで、私達に協力する気はあるか?大罪の聖女レティシア・フォンティーヌ」


ルクレティアはそう告げた。数秒間の静寂後、レティシアはルクレティアにハッキリと答えを返した。





「…………いいわ。この醜くて汚い世界を壊せるなら、魔女でも悪魔でも魔王でも……なんだって組んでやるわ……」

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