2

「わあぁあぁ!」


 自分の叫び声で、目が覚めた。


 はぁ はぁ はぁ はぁ


 荒い呼吸音が、暗い部屋の中に響く。


「夢……?」


 服が汗でびっしょりと濡れて、身体に張り付いている。動くと、冷たくて気持ちが悪い。


「うぅ……」


 布団から起き上がろうとして、僕は自分が震えていることに気が付いた。たった今、自分に短剣を突き刺したのだから当然だ。


 やっとの思いで身体を起こして、恐る恐る両手を見たが、血はついていない。それでも、手にまとわりつく、温かい液体の感触は残っている。


 ——本当に、夢なのかな……。


 夢のはずなのに、先ほどの凄惨せいさんな光景や、瑠衣の泣き声が、あまりにもはっきりと脳裏に浮かび、僕は戸惑った。


 ——もしかして、あれは夢じゃなくて、麗華れいかの記憶なんじゃないか……?


 本当にそうだとしたら、麗華と瑠衣は、なんて悲惨な死に方をしたのだろう。


 ずっと、瑛斗えいとを苦しめる化け物だ、としか思っていなかったのに……。僕は、麗華の苦しみを知ってしまった。


 こんな気持ちは要らなかったのに。


 ただ瑛斗の為に、麗華と瑠衣を消そうと思っていたのに。


 温かいのものが、頬を伝っては、手のひらや布団に落ちる。多分これは、汗じゃない。麗華の記憶に引きずられたのか、僕自身の気持ちなのか、どちらなのかは分からない。


 けれど、どんどん溢れてくる涙は、いつまで経っても、止まってはくれなかった——。

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