答え合わせ⑥
そのあとの水城は普通に先輩たちとお喋りをした。
「家庭科の清水先生が七面体のダイス使ってるでしょ? あれ、生徒が事前に準備できないようにとかって説明してるけど、ホントはただ清水先生が珍しいダイスを使いたいだけって噂があるんだよ」
などの学校にまつわる噂話や先輩からのためになる話をひとしきり聴いたのち、水城は大旗の自宅をあとにした。
「じゃあまた、学校で会おうね」
「はい。楽しみにしています」
帰り際に大旗と約束を交わした。
日が長くなった四月下旬の空は、オレンジ色に染まりつつあった。
「矢永先輩。今日は一日付き合ってもらって、ありがとうございました」
「いいよ。久しぶりに努にも会えたからね」
「優しい方でしたね」
「ん? んー……」
矢永は低く唸ると、口を尖らせた。
「水城さんは賞品と一緒に入っていた紙、見たよね」
「え? はい。『謎解き制覇おめでとう』って書いてた紙ですよね」
「そう。……なにか気付くことはあった?」
矢永の質問の意図がよく分からなかったので、水城はそのまま答えた。
「鈴堂さんはなにか言ってた?」
「いえ……。あ……でも、賞品を見つけた時、鈴堂が珍しく笑ってたんですよね。普段はクールな表情を崩さないのに、入学のしおりを貸してほしいって言われて、何かを見てふっと笑ったんですよ」
「そっか。じゃあ鈴堂さんになんで笑ったのか、訊いてみたらいいかもね」
「はあ……」
「水城さん」
矢永は水城の名前を呼ぶと、一歩前に進み、小首を傾かせた。駅前の橋の上、強い風が吹いている。矢永のミディアムロングの黒髪がなびき、背景の夕陽が逆光になって矢永の顔が影になった。その顔は、心底楽しそうな笑みを浮かべていた。
「大旗努はね、ああ見えて一筋縄じゃあいかない子なんだよ?」
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