第4問 期待「仲良く、なれるかな?」①
四月十八日 火曜日。
いつもは騒々しい昼休みだが、今日は全員、欠けることなく自分の席に座っていた。張り詰めた異様な空気感の中、黙々と手だけ動かして昼食を取る。
水城は黒板の前に立っていた。前回に引き続き書記を任されたのだった。全員の前に立つので、緊張してしまうのではないかと緊張していたが、杞憂に終わった。みんなの注目は、教壇に立つ鈴堂に注がれていたからだ。
奇縁によって鈴堂とは一問目からずっと行動を共にしてきた。いや、共にと言うのはおこがましい。背中を追ってきた、が正しいだろう。その背中を水城は特等席で見ていたし、今も見ている。期待を一身に受けながら堂々と立つその姿は、もはや教師のような貫禄が醸し出されていた。
「初めにことわっておきます」
鈴堂の言葉に、みんなは口に中で咀嚼していた食べ物と息を呑む。
「私は、まだ問題を解いていません」
えっ、とどよめきが走る。これまで立ち所に問題を解いてきた鈴堂だったが、その鈴堂をもってしても頭を悩ませる難問だったのだろうか。一気に不安が支配する。しかしそうではなかった。
「昨日の放課後に四問目の問題を発見した際、私は目を通しませんでした。今しがた水城さんが黒板に問題を書き写して頂いている最中に、初めて読みました」
そういえば昨日、寺嶋が問題文の書かれた紙を発見した後、受け取った鈴堂はすぐにそばにいた廻立に手渡していた。てっきりみんなに共有するためだと思っていたが、あえて見ないようにしていたとは。
「どうやらこれが最終問題のようですので、最後はみなさんと一緒に協力しながら解きたいと思います」
常に先頭を走って牽引してきたエースのその言葉でより一層、団結力が高まった気がした。
「役に立てるかどうか分からないけどね」
どっと教室が沸く。寺嶋の自虐的な発言で張り詰めていた空気が和やかになった。
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