【詩No.1】眠れぬ夜に

くさかはる@五十音

とある船頭の詩

じっとりと暑い。

夜中の3時に目が覚めて、

布団もかけずに敷布団の上で足を投げ出し、

枕を抱え込んでうつ伏せになって文字を打つ。

どこへゆこうというのか、

裸足の足で。

どこへゆこうというのか、

金も無いのに。

夜のしじまに身を寄せて、

どんぶらこっこと船をこぐ。

無限の海を前にして、

どんぶらこっこと、

船を、

こぐ。

どこへゆこうというのか。

いや、

どこへゆこうとするのか。

船頭は我一人、

風の向くまま気の向くままに、

どこへいこうがかまやしない。

ただ、食って寝て、

それから文字が、

あればいい。

さう言って船頭はしばし手を止め、

煙草に火をつけ、

一人ふぅーっと煙を吐いた。

文字の海にただ一人、

「ありがとう」とひとこと添えて。

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