03 驚愕と自失
さて、お嬢様(仮)の謝罪特攻を無事切り抜けたところで、気を取り直して。
用事とは例によって火の魔石を作ることだ。
作り方自体はそう難しくないんだ。実際かなり分かりやすい方で。
ただなぁ……
火を起こしてその火から発生する魔素を圧縮するんだけど。
俺は我が家の脇に回って地面むき出しの空き地に、木の枝で大体の設計図を書く。これは
そう。これでくそでかキャンプファイヤーを作って、その炎で作るんだ。
……はぁ、もう嫌になってきたぞ。
毎日、食事の度に
火起こしの方がまだマシだ。乾いた木に木の枝突き立てて
だけど、これはな。次元が違う。
だって暑い。クソ暑い。それはもう汗だらだらだ。
サウナの比じゃないぞマジで。鼻先燃えそうになるもんよ。
だけどやるしかないんだ。むしろこれが終わったら楽になれるはずだ。
……ただ、溜め込んだせいで3回はしなくちゃならないのが辛いところだぜ。
くっ。
そんな
だいぶ安心できたところで、そこら辺の低木を切り倒して割っておいた薪という名の木の枝置き場から持ってきた薪でタワーを作る。
ちなみに、低木は村から身を守る武器として持ち出した手斧で切っている。
そこはまだ物理だ。いずれは魔素でもやってみたいもんだが。
薪は焚火用に溜め込んでるヤツを全放出……じゃなかった1/3放出だ。
最初は手積みで問題ないが上の方は手が届かないので、即席で堅実階段を作って3mぐらいの高さにした。
……足りるか?と思って組んでみたら足りそうだった。チッ。
足りなかったら後回しに出来てたのに。
薪は乾燥させないとよく燃えないし煙が酷いからな……。
村時代に知らなくて焚火した時は酷い目に
さてと、それじゃあ火起こしだ。
薪の一部を手に取り、擦ること3分。ついた。
どうだ?早いだろう。もう慣れたもんだね。
ポイントはブレないことと、煙が出てきたらおが
この時、焦って強く吹きすぎると消えてしまう。一番大事なところだな。
焚き付け、ってのは乾燥させた木の皮を割いたりしたもので、火起こしに一番大事なものだ。棒と木の板だけじゃ火はつかないということだな。別に木の板が燃えるとか、そういう事ではないのだ。
村時代に狩りで野営した時に覚えた。知らなかったらマジでヤバかったな。
さて、無事、薪タワーに火がついたら少し待つ。
炎はしばらくパチパチと下の方を
さて、ここからは時間との勝負だ。
なんせ、薪が全て燃え尽きる前に、魔石にしなければならないのだから。
なんてリアルタイムアタックだ。俺はもっと楽しいRTAがしたい。切実に。
これ、魔素で囲んでるだけだから、ちゃんと空気は通ってるんだ。
だから、
残念ながら俺にそんな余裕はない。
とにかく、圧縮!圧縮ッ!!圧縮ぅぅぅうううッ!!だ。
もうそれしか考えない。そうしないと折れる。俺の心が。
必死の
とにかく、火の魔石は完成だ。
……まだ1個というのが信じられないが。
こんもりと積もった灰の上に乗る小さな1cm大の赤い魔石を見て、俺は
色は青とか白とかの光が見えたはずなのに赤だ。そこはどうも固定らしい。
まぁ確かに、青だったら水の魔石と間違えて使っちゃいそうだもんな。
と、アッツアツに熱された体を冷ましながら、どうでもいいことを考えていたら、ふと、こっちを見る女の子が見えた。
なんか、マジかコイツ。みたいな顔して固まってらぁ。
「んふっ………んん」
ちょっと笑えたので、押し殺した笑いが漏れちゃったじゃないか。
咳払いで誤魔化したけど。
だけど、反応なし。と。
よぉし。もう2個も作っちゃうぞぉ。
とりあえず水をがぶ飲みした後でな!!
「っぶはぁっ!!」
くぅ、疲れました。
冗談じゃなく本当に過酷だった。
たぶんもう3年分ぐらいの汗を流したんじゃないかな、と思えるほど汗でびっちゃびちゃだ。デトックスですっきりー、とかなったらいいんだが、残念ながら疲労でそれどころではない。きょうはもうねたい。
ただ、そうはいかない事情がある。
彼女のこともあるし、このまま寝たらベッドが悲惨だ。
ベッドへの直接のダメージは無いが、臭いがな。うん。
臭いのは良くない。良くないんだ。それを今日は思い知った。
だけど、とりあえず。とりあえず風呂を完成させて入りたい。
石鹸はもう今日はいいや。油もまだ無いし。
話はその後が良い。そう思って彼女の方を見ると。
なんか真っ白になっていた。いや、燃え尽きたのは俺の方だっての。
そう思ったが、どうもそうじゃないらしい。
「なんて見たことも聞いたこともないわ。どうなっているのかしら。まぁ、屋敷が数日で出来た時点で色々とおかしかったけれど。数日であれができるなんてどうかしてるわ。私が普通なのよ。気をしっかり持ちなさい私。今見たことは誰に言っても信じてもらえなさそうな気がするわ。むしろ私が」
少し耳を傾けたらそんなことをブツブツと呟いていた。こ
とはいえ、用事は済んだので、とりあえずこれに声を掛けなきゃいけないわけなんだが。嫌だなぁ。と、そう思っていると。
彼女と目が合った。
私は、目の前の光景が信じられないでいた。
それは確かに、あのお屋敷をたった数日で建てたのだから、何かタネがあるのだろうと思ってはいたけれど。それにしても、だった。
最初は魔石だった。あり得ない変換効率の魔石だ。それから、無詠唱。これもあり得ないとされている。それから、見たことのない、階段を作るだけの魔法。更には、人の力で魔石を作ってしまった。
それも一度ならず三度も。
明らかに偶然ではなく、作り方を知っているようなやり方だった。
目の前で汗水垂らして焚火の前に立つ青年は、もはや人の形をした別の何かなのではないか、と思ってしまうほどだった。
………けれど。
だから、私はつい、言ってしまったのだ。
「あの、氷はご入用でしょうか」
と。
***
ヒロインの章のはずなのに半分ぐらい主人公主観な件。
これには頭を下げる他ありません。
章なんて枠組みは無かったのに無理に詰め込んだ結果です。反省してます。
さ、最後の方にはラッキースケベもあるから許してください。
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