ゲリラ配信で現状報告(後編)

「ごほん。 まぁ、そんな感じであの三人が化け物級の強さを持ったが為に、普通の攻略者としての俺は劣等感を抱いたのがきっかけなんですよ」


 気を取り直して、話を進める俺。

 アリスちゃんというかの有名なライバーグループの【チーム飛鳥】の一人が俺の配信にコメントをした事で、同時接続数も一気に上昇している。

 流石に、あの兄や妹のようなバズりはないにしろ、今までの配信からしてこの数値は異常だ。


「あの三人の配信を見た人もいると思いますが、ドラゴンをソロでワンパンなんて、普通じゃありえないでしょ」


《あれはなぁ……》

《俺も流石にドン引きした》

《称賛してる奴らがかなり多かったから、すぐにブラバしたよ》

《しかも、堂々とこの程度の雑魚をワンパンで倒さないとって言ってやがったしな》

《現役攻略者の私でもアレは酷かったと思ってます。 ドラゴンは【超獣】なのに》


 さらなる俺の愚痴にコメントが寄せられていく。

 やはり何人かは、あの配信を見ていたようで、無理だったと言う視聴者も多かった。

 あと、現役攻略者の方からもコメントがあったが、ドラゴンは【超獣】という最高ランクの魔獣で、ソロでは倒せない程の強力なエネミーなのだ。

 それをあいつらは、『この程度の雑魚』呼ばわりしてるとか……。

 あいつらだけ、世界の違う何かにいるんじゃないのかと勘繰ってしまいそうだ。


「とはいえ、あの三人を称賛している視聴者がそれ以上に多いのもまた事実。 それでも、俺は周囲の声に負けずに自分のペースで攻略配信やお絵かき配信などをやっていこうと決意したんです。 そのための活動拠点の変更です」


 それでも、コメントにもあったようにあの三人を称賛している視聴者も多い。

 この事実は揺るがず、【ダンジョンライバー】としての役割が、あの三人とそれを称賛する大多数の視聴者によって壊された。

 それでも、俺はこの配信を見てくれている視聴者のために、活動拠点を京都の宮津に移して自分なりのペースでやっていくと再度表明したのだ。


《¥2000 応援してます!》

《そうだ! 周りの声なんかに負けるなよ!》

《政府も動いてくれてると思うから、きっとなんとかなる》


 この決意にいくつかのお布施とコメントが寄せられた。

 すべてが応援のコメントとなっており、なんだか嬉しく感じる。

 そこに……。


《¥25000 【RIN.Ch】 私もアレには思う所があってね。 君の活動を応援するよ》

《¥25000 【KENJI】 俺自身もあいつらが起こした流れには惑わされずにやろうと思う。 お互い頑張ろう》

《¥25000 【美波チャンネル】 うちらもゼロ君の攻略動画のおかげでスケルトンを倒せたからね。 支援するよー》


「ふぁっ!?」


《赤いお布施のジェットストリームアタックキタ━(゜∀゜)━!!」

《マジかよ!? チーム飛鳥がゼロちゃんねるに!?》

《アリスちゃんだけでなく、RINさん達もかよ!?》

《美波さん達、ゼロさんの攻略配信も見てたのか。 スケルトンを倒せたって言ってたし》


 まさかの赤いお布施三連発。

 しかも、この三人もアリスちゃんと同じ【チーム飛鳥】のメンバーだ。

 

 この三人もコメントしてきた事で、また同時接続数が急上昇していた。

 コメントからして、あの兄や妹に思う所があったようだし、過去の攻略配信のおかげでスケルトンを倒せたというお礼のコメントもあった。


「と、とにかく現状報告としての配信は、ここで終わります! これから、宮津へ向けて移動しますので」


 ひとまず気を落ち着かせて配信を終了させる。

 ただ、この配信をあの兄や妹が見てる可能性もあるだろう。

 そこが不安だが、今は見ていないことを信じるしかなさそうだ。


 さて、配信を切ろうとした所で、また爆弾がブッ込まれるのだった。


《【アリスちゃんねる】 お疲れ様なのです。 いつかコラボしてくれるのを楽しみにしてるのです♪》


「ぬわーーーーーっ!!」


《最後の最後で、アリスちゃんがブッ込んでて草》

《じゃけん、コラボしましょうねー》

《ぬわーーー(PPS絶命)》

《ああ、逃げられない(カルマ)》


 最後の最後で、アリスちゃんがコラボのお願いとかしてきちゃったよ。

 4倍の差のある登録者数を持つアリスちゃんとのコラボは胃が痛くなるんですがそれは……。

 なんか、視聴者も退路を塞ごうとしてくるし……。


《まぁ、とにかくおつー。 新天地で頑張れよー》

《あそこも結構ダンジョン多いから、きっとやれるよー》

《¥10000 お布施です。 ご査収下さい》


 その中で、ちゃんと応援してくれている視聴者もいるわけで。

 色々あったけど、ゲリラ配信は何とか無事に終わってよかったと思う。


 配信を切って、叔父さんの車に再度乗ってから宮津へ向かおう。

 なお、今の配信は無意識に設定でサポーター限定になっているようで、あいつらには見られないと言う。

 

 だが、そのサポーターの中にチーム飛鳥のメンバーも入っていた事を知るのは、もうすぐ宮津に着くころの時だった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る